健康に良いイメージがあるたまねぎですが、具体的にどんな効果があるか知っていますか?たまねぎにはさまざまな成分が含まれ、健康効果が期待されています。
この記事では、たまねぎに含まれる成分と、それらを逃さずに効率良くとるための食生活の工夫を紹介します。たまねぎを日々の食事に上手に取り入れ、健康づくりに役立てましょう。

この記事の執筆者
管理栄養士
成松 由佳
大学院修士課程修了後、製薬メーカーでの勤務を経て栄養指導に従事。自身も食事改善によって長年悩んでいた便秘や肌荒れを克服。現在はWebライターとして、食事に悩む時間や精神的なストレスを減らせるよう情報提供している。
たまねぎの栄養
たまねぎには、主にビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれています。ビタミンの中で多く含まれるのは、ビタミンB6や葉酸、ビタミンCです。ミネラルの中では、カリウムが比較的多く含まれています*1。これらの栄養素はほかの野菜と比べて特別に多いわけではありませんが、日々の食事の中で栄養摂取の補助として役立ちます。
また、たまねぎからは特徴的な機能性成分も摂取できます。たとえば、ポリフェノールの一種であるケルセチンや、辛味成分でもあるイソアリシン*2、甘味をもたらすフラクトオリゴ糖*3があげられます。たまねぎの健康効果はこれらの成分によるものです。
*1 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・第2章(データ)」
*2 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022,p.80-83
*3 久保田紀久枝・森光康次郎編「食品学 食品成分と機能性 第2版」東京化学同人, 2008, p45
たまねぎに期待される健康効果
たまねぎに含まれる機能性成分は、健康に関わるさまざまな働きが知られています。ここでは、たまねぎに期待される健康効果を大きく2つに分けて紹介します。
生活習慣病の予防をサポート
たまねぎに含まれるケルセチンは、強い抗酸化作用や抗炎症作用がある成分です。体内の酸化ストレスや炎症を抑えることで、メタボリックシンドロームや生活習慣病を防ぐのに役立つとされています。ケルセチンの摂取によって、血液中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、血糖値、血圧が低下したという報告があります*4。
またイソアリシンや、イソアリシンが加熱されてできる含硫化合物にも、血中コレステロールや血圧を低下させる作用、血小板の凝集を抑えて血栓をつくりにくくする働きが期待されています*2。
おなかの調子を整える
たまねぎに含まれるフラクトオリゴ糖は、腸内環境を整えるのに役立つ成分です。フラクトオリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に届き、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌の栄養源になります。また、フラクトオリゴ糖は腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸が産生されます*5。大腸内のpHが酸性になることで、悪玉菌が増えにくい環境をつくります*6。腸内細菌のバランスが改善され、お通じの改善にもつながります。

オリゴ糖とは?5つの効能を解説|ダイエットや糖質制限中でもとってOK!
近年注目されているオリゴ糖。実は身近な食品にも含まれ、腸内環境の改善やむし歯になりにくい、肌の調子を整える可能性などさまざまな健康・美容効果が期待されています。この記事では、オリゴ糖の種類と代表的な働き5つを解説し、日々の食生活に取り入れるヒントを紹介します。

オリゴ糖の上手な使い方とレシピ3選|お悩み別おすすめのオリゴ糖の魅力と特徴を解説
オリゴ糖にはたくさんの種類があり、どれを選べばいいのか、どのように使えばいいのか迷うこともあるでしょう。本記事では、それぞれのオリゴ糖の特徴や適切な摂取量、日常生活での活用法を解説します。自分に合ったオリゴ糖の選び方や上手な使い方が分かります。

オリゴ糖は危険?太る?デメリットと糖尿病の人の活用方法を医師が解説
オリゴ糖はやさしい甘さが特徴で、甘味をつけようと使い過ぎると、カロリー過多やお腹の張りや痛み、下痢などのデメリットを感じてしまいます。適量であれば低カロリーで腸内環境を整える優秀な甘味料。正しい知識を学んでダイエット中の食生活に取り入れてみましょう。

オリゴ糖なら血糖値が上がらない理由|オリゴ糖の機能と摂取方法も紹介
血糖値が上がりにくい、オリゴ糖。この記事ではオリゴ糖を摂取してもなぜ血糖値が上がらないのか解説します。また、オリゴ糖の機能や手軽に摂取する方法も紹介しています。血糖値が気になる人、糖尿病の人、ダイエット中の人にもおすすめです。
*4 小堀真珠子. ポリフェノール含有野菜の高機能化とその応用戦略―ケルセチン高含有タマネギの健康機能―. オレオサイエンス, 2017, 第17巻第10号, p.475-481
*5 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 フラクトオリゴ糖」
*6 髙木智久ほか. 脳腸相関UPDATE-疾患の予防と健康長寿のための食・栄養・腸環境, Part 3 脳腸相関と食・栄養, 2.食物繊維. 臨床栄養, 2023, 142巻,6号, p.917-923
たまねぎの栄養を効率的にとれる食べ方
たまねぎに含まれるケルセチンやイソアリシンなどの機能性成分を逃さずに摂取するには、食べ方の工夫が大切です。ここでは、これらの成分を効率よくとるためのたまねぎの活用方法を3つ紹介します。
すりおろして使う
イソアリシンは、丸のままのたまねぎには存在しない成分です。たまねぎ中ではイソアリシンのもとの「イソアリイン」という形で存在しており、切ることで細胞が壊れ、酵素と混ざり合うことでイソアリシンに変化します*2。そのため、イソアリシンを多く摂取するには、できるだけ細胞が壊れるように、すりおろしやみじん切りにするのが効果的です。
ハンバーグやつくねに混ぜ込むほか、肉や魚を漬け込むのにも使えます。また手づくりのソースやドレッシングに加えるのも良いでしょう。
油と一緒にとる
ケルセチンを脂質と一緒にとることで、体内でのケルセチンの代謝物が多くなったという研究結果があります。この効果は脂質の種類を問わず、大豆油、魚油、牛脂で同様の結果が認められました*7。この結果から、たまねぎを油で炒めたり、肉や魚、乳製品と一緒に食べたりすることで、体内でのケルセチンが利用されやすくなる可能性があります。
肉の炒め物や魚のソテー、グラタンなど、油を使ったさまざまな料理にたまねぎを取り入れてみましょう。たまねぎを使ったグラタンもおすすめです。
皮を煮出してお茶にする
ケルセチンは、たまねぎの皮に特に多く含まれます。皮をそのまま食べることは難しいですが、水でよく洗って乾燥させた後、お湯で煮出すとお茶として楽しむことができます。さらに甘味としてオリゴ糖を加えれば、腸内環境の改善にも役立ちます。
たまねぎを食べる時の注意点
健康に嬉しい働きが期待できるたまねぎですが、食べ過ぎには注意が必要です。また、たまねぎさえ食べていれば病気が防げるというわけではありません。ここでは、たまねぎを活用しながら健康的な生活を送るための注意点を紹介します。
1日に半玉程度を目安にする
たまねぎの摂取量には明確な基準があるわけではありませんが、1日に半玉(100g)程度を目安にすると良いでしょう。
たまねぎの食べ過ぎには注意が必要です。イソアリシンには胃の壁を刺激する性質があり、胃痛を引き起こす恐れがあります。また、腸内細菌にも影響を与える可能性があります*2。これらの症状が出る量には個人差がありますが、毎食山盛り食べるなどの過剰な摂取は避けた方が良いでしょう。
また先に説明したとおり、野菜の中ではたまねぎは栄養価がそこまで高くありません。たまねぎだけでなく、ほかの野菜も取り入れることが大切です。腸内環境を整えたい場合は、腸内環境を整えるのに役立つ食物繊維*6が多く含まれる野菜を積極的にとると良いでしょう。食物繊維がとれる野菜として、ごぼう、ブロッコリー、オクラ、かぼちゃ、切り干し大根、枝豆などがおすすめです*1。
食事全体のバランスを考える
生活習慣病予防の基本は、バランスの良い食事です。ご飯・パン・麺などの主食、魚・肉・たまご・大豆を使ったおかずである主菜、野菜・海藻・きのこ類を使った副菜を組み合わせた食事を心がけましょう。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が気になる場合は、主菜は肉よりも魚や大豆製品を選ぶのがおすすめです。肉類に含まれる脂質である飽和脂肪酸をとり過ぎると、LDLコレステロール値が高くなることが知られています*8。肉を食べる時は脂身の少ない鶏肉や、豚や牛ではもも肉を選ぶのがおすすめです。また、バラ肉やベーコン・ソーセージは特に脂質が多いため、食べる量や頻度を控えると良いでしょう。
野菜の摂取目標は、1日当たり350gです。小鉢で5~6皿の摂取を目指しましょう*9。野菜に含まれる食物繊維は腸内環境を整えるだけでなく、血液中のコレステロールや血糖値を下げるためにも大切な栄養素です*10*11。また、野菜に含まれるカリウムには血圧を下げる働きもあります*12。カリウムは、ほうれん草、にんじん、小松菜、水菜、ブロッコリー、そらまめ、切り干し大根などに含まれています*1。これらの食品を組み合わせて、バランスの良い食事を心がけましょう。
*8 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)脂質」 p.109
*9 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「野菜、食べていますか?」
*10 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)脂質異常症」p.425
*11 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)糖尿病」p.438-439
*12 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)高血圧」 p.409
まとめ
今回は、たまねぎに含まれる成分と期待される健康効果について紹介しました。ケルセチンやイソアリシン、フラクトオリゴ糖といった機能性成分が、生活習慣病の予防や腸内環境の改善に役立ちます。すりおろしたり、油と一緒に取り入れたりすることで、効果をより期待できるでしょう。
ただし、イソアリシンをとり過ぎると胃を痛める原因になるため、食べ過ぎには注意が必要です。バランスの良い食事の中にたまねぎを適度に取り入れ、健康づくりに活用してみてくださいね。
(参考文献閲覧日:2025年1月5日)
合わせて読みたいおすすめ記事

オリゴ糖の種類と効果の違いを解説|効率的なとり方も紹介
オリゴ糖は数多くの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っている一方で、共通した働きや効果も期待できます。オリゴ糖の特徴や働きを知っていれば、効率的に食生活へ取り入れられますね。本記事では主なオリゴ糖の種類とともに、オリゴ糖の働きや効率的な摂取方法について解説します。

オリゴ糖を含む食べ物と上手に取り入れる方法
腸内環境を整え、健康をサポートするオリゴ糖が注目されています。オリゴ糖は腸内の善玉菌を増やす働きだけでなく、血糖値の上昇抑制やむし歯予防にも役立つと言われています。この記事では、オリゴ糖を含む食べ物と、日常生活に無理なく取り入れる方法を紹介します。

オリゴ糖とは?特徴と働き、メリットを解説
オリゴ糖とは炭水化物の一種で、中でも難消化性オリゴ糖は「低カロリー」「血糖値を上げにくい」「腸内環境を整える」「むし歯になりにくい」などの働きが報告されています。この記事ではオリゴ糖について詳しく解説しています。難消化性オリゴ糖は野菜・果物・発酵食品などに含まれていますが、メリットをしっかり感じたいなら積極的に取り入れてみましょう。