オリゴ糖がなんとなく体に良いと知っていても、実際にはどんな働きがあるのかは分からない人もいるのではないでしょうか。
オリゴ糖の中でも難消化性オリゴ糖には、善玉菌のエサとなったり、血糖値が上昇しにくいといった、さまざまな特徴が知られています。健康的な毎日を目指している人は、ぜひ難消化性オリゴ糖を使ってみましょう!

この記事の執筆者
薬剤師/腸育コンシェルジュ
松本 萌
薬剤師ライターとして、セルフケアに関する記事を執筆している。前職のドラッグストアで健康相談を受ける中で、正しい知識を知らない人が多くいることを痛感。セルフケアの正しい知識を誰にでも分かりやすい言葉で紹介することを心がけている。薬剤師以外にも化粧品成分検定1級、腸育コンシェルジュなどさまざまな健康・美容の資格を取得。
オリゴ糖とは?
オリゴ糖とは炭水化物の一種で、炭水化物の最小単位である単糖が3~9個程結合したものです*1。オリゴ(oligo)はギリシャ語で”少ない”という意味のため「少糖」とも呼ばれています*2。オリゴ糖の中でも「難消化性オリゴ糖」と呼ばれるものには「低カロリー」「血糖値を上げにくい」「腸内環境を整える」など、さまざまなメリットが報告されています。
通常、食べ物は胃や小腸で消化・吸収されて栄養・エネルギー源となりますが、難消化性オリゴ糖はほとんど消化・吸収されません。そのため、同じ炭水化物である砂糖よりもカロリーが低く、血糖値にもほとんど影響しないという特徴があります*3。
また、大腸へ到達した難消化性オリゴ糖は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やして腸内環境を整える働きも持っています*4。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*2 坂田美和ほか, 栄養学で用いられる借用語について(その2), 帯広大谷短期大学紀要. 2012, 第49号, p.21-29
*3 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*4 内藤裕二「すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢 基礎知識から疾患研究、治療まで」羊土社, 2021, p.102-106,316-318
オリゴ糖の種類と特徴
オリゴ糖の種類はさまざまあり、主に「消化性オリゴ糖」「難消化性オリゴ糖」「環状オリゴ糖」の3種類に分けられます。種類によって原料や特徴も異なります*3。
分類 | 種類 | 原料・特徴 |
---|---|---|
消化性オリゴ糖 | イソマルトオリゴ糖 |
酒・みりん・醤油に微量含まれる 食品のしっとりとした食感を保ち、日持ちを向上させる 砂糖と同じように消化され血糖値も上昇させる |
難消化性オリゴ糖 | フラクトオリゴ糖 |
ショ糖が原料で甘味の質も砂糖に似ている 玉ねぎ・ごぼう・バナナにも含まれる |
ガラクトオリゴ糖*5 |
牛乳に含まれる「乳糖」が原料 熱や酸に強く、加工食品に適している |
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キシロオリゴ糖 |
とうもろこしの芯やコメのもみ殻などの食物繊維を分解してつくられる たけのこ・きのこにも含まれる |
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大豆オリゴ糖*6 |
大豆に含まれる天然のオリゴ糖を抽出したもの ラフィノースも含んでいる |
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ラクトスクロース (乳果オリゴ糖) |
原料は乳糖とショ糖 甘味の質がもっとも砂糖に近いオリゴ糖 |
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ビートオリゴ糖 (ラフィノース) |
てんさい糖を製造した後に残る糖蜜から分離精製されたオリゴ糖 | |
ミルクオリゴ糖 (ラクチュロース)*7 |
乳糖から製造される 便秘改善などを目的とする医薬品「ラクツロース」としても使われる |
|
環状オリゴ糖 | α-シクロデキストリン |
単糖のグルコース6個が輪の形で結合したオリゴ糖 輪の中にほかの物質を取り込む性質がある*8 難消化性オリゴ糖のように食後血糖値を抑える*9 |
*5 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 ガラクトオリゴ糖」
*6 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所【「健康食品」の素材情報データベース】
*7 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 ラクチュロース」
*8 中久喜輝夫. オリゴ糖研究の最前線その1 緒言―オリゴ糖開発研究の現状と将来―. 応用糖質科学第1巻第4号. 2011, p.284
*9 Buckley JD et al., Dose-dependent inhibition of the post-prandial glycaemic response to a standard carbohydrate meal following incorporation of alpha-cyclodextrin. Ann Nutr Metab. 2006;50(2):108-114

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オリゴ糖の働きとメリット
難消化性オリゴ糖は「善玉菌のエサになる」「血糖値を上げにくい」「砂糖と比べて低カロリー」「むし歯になりにくい」という働きから、砂糖代わりの甘味料として使われることも多いです。ここからは、オリゴ糖の中でも難消化性オリゴ糖の働きとメリットについて見ていきましょう。
善玉菌のエサになる
難消化性オリゴ糖は、大腸に到達すると善玉菌のエサになり短鎖脂肪酸という物質を産生します*10。短鎖脂肪酸は大腸を酸性にし、悪玉菌の増殖を抑えるのと同時に、酸性の状態に耐えられる乳酸菌などの善玉菌が生き残りやすい状態に導きます。その結果、悪玉菌より善玉菌の数が多い状態となり、腸内環境が整うのです*11。
難消化性オリゴ糖であるフラクトオリゴ糖は、ビフィズス菌を増殖させて便秘や下痢の改善が確認されたことから、「おなかの調子を整える」という整腸機能をもつ特定保健用食品(トクホ)としても認可されています*12。
血糖値が上がりにくい
炭水化物と言えば、血糖値が上がりやすいイメージですが、難消化性オリゴ糖のみでは血糖値はほとんど上がりません。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。血糖値が高い「高血糖」状態が続くと、全身のさまざまな臓器が障害されます。特に、神経と血管に影響があり、神経障害や動脈硬化などを引き起こすリスクが高まります*13。
難消化性オリゴ糖は胃や小腸でほとんど消化・吸収されないため、ブドウ糖まで分解されず血糖値も上がりにくいのです*3*8。
ただし、オリゴ糖は砂糖と比べて甘味が少ないため、オリゴ糖商品の中には別の甘味料も加えて味を調整しているものもあります*3。血糖値を気にしている人は、オリゴ糖商品を選ぶ際に原材料もしっかり確認すると良いでしょう。
砂糖と比べて低カロリー
難消化性オリゴ糖の多くは砂糖と比べて低カロリーです。砂糖は1g当たり4kcalですが、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖、シクロデキストリンなどは2kcalです*14。
難消化性オリゴ糖は胃や小腸ではほとんど消化・吸収されませんが、大腸に到達すると腸内細菌によって消化(発酵)され、その結果、酪酸・酢酸・プロピオン酸などの短鎖脂肪酸が産生されます。この短鎖脂肪酸が大腸から吸収されるため、エネルギー源になると考えられています*15。
むし歯になりにくい
難消化性オリゴ糖には、食べてもむし歯になりにくい「低う蝕性」という特徴があります。
むし歯の原因菌であるミュータンス菌は砂糖と反応して「グルカン」と呼ばれる物質をつくり出します。グルカンとミュータンス菌が一緒になったものが歯垢です。歯垢中のミュータンス菌が砂糖を利用して酸をつくって歯の表面を溶かしていき、むし歯になっていきます*16。
甘味はあるけれどむし歯になりにくい代用糖としてキシリトールが有名ですが、オリゴ糖も代用糖の1つです*16。ミュータンス菌はオリゴ糖を利用できないため、食べてもむし歯になりにくいとされています*17。
*10 菅原正義. オリゴ糖の特性と生理効果. ビフィズス. 1993, 7巻,1号, p.8
*11 安藤朗. 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能. 日本内科学会雑誌. 2015, 第104巻, 第1号, p.29-34
*12 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで~」
*13 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「血糖値」
*14 消費者庁「難消化性糖質及び食物繊維の エネルギー換算係数の見直し等に関する 調査・検証事業 報告書」
*15 奥恒行, 難消化吸収性糖質の有効エネルギー量について, 栄養学雑誌. 1996, 54巻3号, p.143-150
*16 独立行政法人農畜産業振興機構「子どものむし歯予防のために~お砂糖との上手な付き合い方~」
*17 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022, p.37-39

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オリゴ糖ははちみつや砂糖とどう違う?
難消化性オリゴ糖と、はちみつや砂糖などの一般的な甘味料との大きな違いは「消化されにくくエネルギー源になりにくい」「甘味が少ない」ことです。
はちみつはブドウ糖やショ糖、オリゴ糖などの炭水化物のほかにもアミノ酸やミネラルなどの栄養素も含まれています*18。砂糖の成分はショ糖で、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類の一種です。砂糖は小腸の酵素によってすばやく消化され、脳や体を動かすエネルギー源のブドウ糖をつくりだします*19。また、はちみつも体へすばやく吸収されるため、早くエネルギー源となります*18。
一方、難消化性オリゴ糖は消化・吸収されにくいため、はちみつや砂糖と比較してエネルギー源になりにくい糖です。
はちみつや砂糖が甘くて美味しいのはご存じかと思いますが、難消化性オリゴ糖はこれらよりも甘さが控えめです。種類にもよりますが、砂糖の甘さを1とすると、難消化性オリゴ糖は砂糖の半分以下の甘さしかありません*3。
*18 越後多嘉志, ハチミツの科学, 調理科学. 1993, 26巻1号, p.47-53
*19 独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖の栄養」
オリゴ糖についてよくある質問
最後に、オリゴ糖に関するよくある質問を集めてみました。生活に取り入れる際の参考にしてみてください。
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オリゴ糖は危険ですか?
オリゴ糖を生活の中に取り入れること自体は危険ではありません。しかし、とり過ぎることで腹痛や下痢を起こすことがあるため、摂取目安量を知っておく必要があります。
オリゴ糖の種類にもよりますが、フラクトオリゴ糖の場合は1日1g以上の摂取で腸内フローラ(腸内細菌の集まり)の改善が見られ、1日3~5gを摂取すると便通が改善することが報告されています*20。
このように目安量を守ればメリットのあるオリゴ糖ですが、一度にたくさんとるとおなかがゆるくなってしまうのがデメリットです。1日の中で数回に分けて、少しずつとるのが良いでしょう。
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おすすめの使い方はありますか?
オリゴ糖で腸活にチャレンジしたい場合には、ヨーグルトにオリゴ糖を混ぜる方法がおすすめです。オリゴ糖は善玉菌のエサとなるため、善玉菌が含まれているヨーグルトと一緒に食べると、効率良く腸内環境を整えられます*21。
また、砂糖よりもカロリーを抑えながら料理や飲み物に少し甘味を足したい時にもおすすめです。手軽に取り入れたい人はコーヒーやココアなどの苦味がある飲み物に混ぜると、風味を損なわずに飲むことができます*22。
*20 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 フラクトオリゴ糖」
*21 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
*22 工藤貴子ほか. 臨床調理のためのオリゴ糖を利用したレシピの提案. 十文字学園女子大学紀要論文. 2015, 第46巻, p.149-159

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まとめ
難消化性オリゴ糖は、善玉菌のエサになったり、血糖値が上がりにくかったり、また砂糖を使用したときよりもカロリーが控えめになるというメリットがあります。普段の砂糖の代わりに使ったり、ヨーグルトに混ぜたりすると簡単に摂取できます。ただしオリゴ糖をとり過ぎると、おなかがゆるくなることもあるので、摂取量に注意しましょう。1日の摂取量の目安量は、オリゴ糖商品によって異なるため、一度確認してから食事に入れてみてください。腸内環境や体調を整えたい人は、ぜひオリゴ糖を試してみましょう。
(参考文献閲覧日:2024年12月15日)
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