健康に良いというイメージのあるオリゴ糖。「糖尿病の自分も食べて大丈夫?」と疑問を持っている人もいるでしょう。
難消化性オリゴ糖は糖尿病の人が食べても問題ありません。「血糖値が上昇しにくい」「砂糖よりカロリーが低い」「腸内環境を整える」というメリットがあるため、糖尿病の人の食生活をサポートしてくれるでしょう。
ただし、むやみにオリゴ糖を食べても良いというわけではありません。この記事では、オリゴ糖のメリットと、糖尿病の人におすすめなオリゴ糖の選び方、活用方法を解説します。

この記事の執筆者
薬剤師/腸育コンシェルジュ
松本 萌
薬剤師ライターとして、セルフケアに関する記事を執筆している。前職のドラッグストアで健康相談を受ける中で、正しい知識を知らない人が多くいることを痛感。セルフケアの正しい知識を誰にでも分かりやすい言葉で紹介することを心がけている。薬剤師以外にも化粧品成分検定1級、腸育コンシェルジュなどさまざまな健康・美容の資格を取得。

この記事の監修者
内科医
やさしい内科クリニック院長
山村 聡
九州大学医学部卒。昭和大学糖尿病・代謝・内分泌内科助教、市中病院勤務を経て、銀座有楽町内科院長、メンズクララクリニック副院長などを歴任。2024年12月よりやさしい内科クリニックを開院し、診療のみならず、予防、美容、ウェルビーイングの観点から、ヘルスケア企業の顧問、商品監修、情報発信などをおこなう。ヘルスケア・美容・医療をつなぐ架け橋として活躍中。
糖尿病は血糖値が高い状態が続く慢性疾患

糖尿病とはインスリンの作用不足によって血糖値が高い状態が慢性的に続く疾患のことです。糖尿病には大きく分けて、1型と2型があります。
1型は、自己免疫疾患などが原因でインスリン分泌細胞が破壊されてインスリンを産生できなくなる(インスリン分泌低下)ことにより、血糖値が高くなります。1型糖尿病は子供や青年に多く発症します*1*2。
一方で、2型糖尿病は、遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が重なって発症する生活習慣病です。インスリンが出にくくなったり(インスリン分泌低下)、インスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性)することによって血糖値が高くなります。糖尿病の多くは2型糖尿病で、中高年に多い傾向にあります*1*2。
*1 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「糖尿病」
*2 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病とは」
糖尿病の人がオリゴ糖を食べても大丈夫なのか?

難消化性オリゴ糖は糖尿病の人が食べても大丈夫です。そもそも、オリゴ糖とは炭水化物の一種で玉ねぎやバナナなどにも含まれています。
糖尿病の人は普段の食生活に気をつかう必要はありますが、絶対に食べてはいけない食品というものはありません。正しい食習慣により過食を避け、偏食せずに規則正しい食事をすることが推奨されています*3。また、血糖値の急上昇を引き起こす可能性のある食品の食べ過ぎには注意が必要です。
ほとんどのオリゴ糖は消化されにくく、血糖値やカロリーが気になる人に嬉しいメリットをもたらします。
オリゴ糖のメリット

オリゴ糖のほとんどは難消化性オリゴ糖といって、食べても胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで運ばれます。その特性による「血糖値が上昇しにくい」「腸内環境を整える」というメリットがあります。さらに、砂糖よりカロリーが低い*4というのも嬉しいですね。
血糖値が上昇しにくい

特定保健用食品として使われるオリゴ糖のうち、イソマルトオリゴ糖以外のオリゴ糖は難消化性オリゴ糖と呼ばれています。胃や小腸で消化・吸収されにくく、食べても血糖値がほとんど上がりません*4*5。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖は私たちの体や脳を動かすためのエネルギー源となりますが、ブドウ糖があり過ぎて高血糖が長く続くと全身のさまざまな臓器が障害されます。とくに、神経と血管は傷つきやすく、神経障害や動脈硬化などを引き起こすリスクが高まります *6。
オリゴ糖とは主にブドウ糖や果糖が3〜9個程結びついた炭水化物です*7。イソマルトオリゴ糖は砂糖と同様に、消化されてブドウ糖となり血糖値を上昇させますが、それ以外の難消化性オリゴ糖はほとんど消化されず血糖値も上昇しにくく、インスリンの分泌にも影響しません*8。

出典:山田ら,Digestion&Absorption,13,88-91,1990 を参考に作成
砂糖と比べてカロリーが低い

オリゴ糖は炭水化物の一種ですが、砂糖と比べて低カロリーです。一般的に、砂糖をはじめとした炭水化物のカロリーは4kcal/gですが、難消化性オリゴ糖はその半分の2kcal/gです*9。
糖尿病の治療では、摂取エネルギーのコントロールが必要なことがあります*10。目標の摂取エネルギーを超えてしまいがちな人は、難消化性オリゴ糖を取り入れてみても良いでしょう。
腸内環境を整える

難消化性オリゴ糖は、腸内で善玉菌のエサになり、短鎖脂肪酸が産生されることで*11、悪玉菌の増加抑制につながります。その結果、腸内細菌のバランスが整います*12。
腸内環境が悪い状態だと、血糖値を下げるインスリンの効き目が悪くなることが分かっています*13。そのため、糖尿病の人は日頃から腸内環境を整える食生活が大切です。
難消化性オリゴ糖は血糖値の上昇やカロリーを抑えながら腸内環境も整えてくれるため、糖尿病の人でも取り入れやすい食品です。

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*3 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「糖尿病の食事」
*4 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*5 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*6 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「血糖値」
*7 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*8 中久喜輝夫. オリゴ糖研究の最前線 その1 緒言 ―オリゴ糖開発研究の現状と将来―. 応用糖質科学. 2011, 第1巻, 第4号, p.283
*9 消費者庁 食品表示法等(法令及び一元化情報)「別添 栄養成分等の分析方法等」p.165, p.175
*10 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024 3章 食事療法」2024, p.39
*11 菅原正義. オリゴ糖の特性と生理効果. ビフィズス. 1993, 7巻,1号, p.8
*12 安藤朗. 新たな臓器としての腸内細菌叢. 日本消化器病学会雑誌. 2015. 第112巻第11号, P.6
*13 田妻進. 生活習慣病と腸内細菌叢. 生物工学会誌. 2021, 第99巻, 第11号, 573–576
オリゴ糖には糖尿病を含む生活習慣病予防が期待できる

前述のとおり、オリゴ糖は腸内環境を整える作用があり、これが糖尿病を含む生活習慣病予防につながることが期待されています。
腸内環境の悪化は生活習慣病を誘発することが分かっています。高脂肪食によって腸内環境が悪化すると、脂肪蓄積を促進させ、肥満を引き起こす要因となることが報告されています。また肥満との関連性が強い2型糖尿病患者の腸内細菌は悪玉菌が優位であるとの報告もあり、腸内環境が悪化すると疾患発症にも影響をおよぼすことが示唆されています*13。
近年、自己免疫疾患と考えられている1型糖尿病についても、その発症に腸内細菌が関わることが明らかになってきました。1型糖尿病患者の腸内環境は2型糖尿病患者と同じく悪玉菌が優位の傾向にあり、また成長過程で多様化するはずの腸内細菌叢(腸内フローラ)においても、1型糖尿病患者の場合はその多様性が乏しいことも判明しています。このことから腸内環境の改善が1型糖尿病の発症予測や予防、症状のコントロールに寄与する可能性が示唆されています*13。
オリゴ糖と砂糖、はちみつ、人工甘味料との違い
オリゴ糖はほのかに甘味があり、砂糖の代わりとしても使われます。ここでは、砂糖やはちみつ、人工甘味料とオリゴ糖の違いを見てみましょう。
砂糖との違い

砂糖は別名スクロースやショ糖と呼ばれ、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類です。加工の仕方によって、ザラメやグラニュー糖、上白糖などに仕上がります*14。
難消化性オリゴ糖は血糖値をほとんど上昇させませんが、砂糖はスクラーゼという酵素でブドウ糖と果糖に分解されます。このブドウ糖が血糖値を上昇させ、体や脳の貴重なエネルギー源となるのです*15。
また、甘味は砂糖のほうが強いため、オリゴ糖を砂糖の代わりにする場合はとり過ぎに注意しましょう。
はちみつとの違い

オリゴ糖とはちみつは、成分の内容が大きな違いと言えるでしょう。ミツバチがつくり出す「はちみつ」は、炭水化物だけでなくアミノ酸やミネラル、ビタミンなども含まれた甘味料です*16 *17。はちみつに含まれている炭水化物は、ブドウ糖やショ糖、果糖、オリゴ糖などさまざまで、はちみつの種類により異なります*18。
他の人工甘味料との違い

アスパルテームやアセスルファムカリウムなどの人工甘味料は、人間の体内では消化や吸収、代謝がされにくい「非糖質系甘味料」とも呼ばれています*19。とった後にブドウ糖に分解されないため血糖値は上がらず、加えてむし歯の原因になりにくい傾向があります*20。また、甘味は砂糖の数百倍以上あり、砂糖と比べて少量で甘味を実現できるため、摂取カロリーを抑えられることも特徴です*19*20。
このように、人工甘味料はオリゴ糖と似たような特徴があり、糖質制限を目的とした食品に使われることが多いです。
*14 藤田孝輝. 甘味料としての糖類. 日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.). 2020, Vol.53 No.2,147~152, p.148
*15 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「ブドウ糖」
*16 中村純. 古くて新しいミツバチ生産物「ハチミツ」. ミツバチ科学. 2001, 22 (4), p.145-158
*17 文部科学省 食品成分データベース「はちみつ 可食部100g-利用可能炭水化物及び糖アルコール」
*18 榎本俊樹. ハチミツの成分特性. 化学と教育. 2019, 67巻,3号, p.134-135
*19 櫻井勝. 摂取栄養素と高血糖. 5. 人工甘味料と糖代謝. 日本糖尿病学会誌. 2016, 第59巻,第1号, p.33-35
*20 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「う蝕の原因とならない代用甘味料の利用法」
糖尿病の人向け!オリゴ糖の選び方と活用方法
糖尿病の人の中には、主治医や管理栄養士から食生活の指導を受けている人もいるでしょう。指導された食生活をベースに、オリゴ糖を取り入れてみてはいかがでしょうか?
オリゴ糖を取り入れてみたい人向けに、選び方と活用方法を解説します。
オリゴ糖の純度が高いものを選ぶ

実は、オリゴ糖とうたっている商品にはオリゴ糖以外の甘味料が入っている場合があります。オリゴ糖だけでは甘味が少ないため、砂糖や人工甘味料を添加していることが多いのです。
そのため、血糖値の上昇をなるべく抑えたい場合には、オリゴ糖の純度が高い商品を選びましょう。イソマルトオリゴ糖以外の難消化性オリゴ糖が入っている商品を選ぶと、より血糖値の上昇を防げます。
決められた量を複数回に分けて食べる

オリゴ糖を食べる量は、1日当たり2〜10g(ティースプーンで1〜3杯程度)が推奨されています。難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸に届くため、一度にたくさん食べると下痢やおなかのハリを起こしやすいです。食べ過ぎには注意しましょう*21。
おすすめの使い方としては、料理や飲み物に使う砂糖の代わりにオリゴ糖を取り入れる方法があります。商品によって甘味度や推奨量が異なるため、甘味や使用量を確認しながら使ってみましょう。
乳酸菌入り食品と一緒に食べる

糖尿病の人は、腸内環境を整えていくことも非常に大切です。オリゴ糖と一緒に善玉菌を取り入れるとより効果的に腸内環境を整えられます。
善玉菌を含む食品の例
- ヨーグルト
- 漬け物
- 納豆
手軽でおすすめなのは、ヨーグルトにオリゴ糖を混ぜて食べる方法です。ぜひ毎日の習慣として取り入れてみましょう。

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*21 消費者庁「特定保健用食品の表示許可等について 別添3 特定保健用食品(規格基準型)制度における規格基準」
まとめ
難消化性オリゴ糖は、食べても胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで運ばれるため「血糖値が上昇しづらい」「腸内環境を整える」という糖尿病の人に嬉しいメリットがあります。
オリゴ糖の中でも、難消化性オリゴ糖は糖尿病の人が食べても問題ありません。主治医や栄養士と相談しながら毎日の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
この記事で紹介した活用方法も参考にして、健康的な食生活を心がけましょう。
(参考文献閲覧日:2024年12月23日)
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