健康を保つために腸内環境を整える「腸活」が注目されています。腸活の方法は食事や運動など生活習慣の見直しのほか、オリゴ糖の摂取もおすすめと言われています。なぜオリゴ糖が腸内環境の改善に役立つのか、ご存じでしょうか?
本記事では、オリゴ糖の種類や腸内環境などに対する働きについて解説します。併せて腸活におすすめのオリゴ糖の活用方法も紹介するので、腸内環境が気になる人はぜひ参考にしてください。

この記事の執筆者
管理栄養士
いしもと めぐみ
病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して独立。栄養・健康分野の記事執筆のほか、栄養指導、食が楽しくなるレシピの発信などを行う。
オリゴ糖とは?
オリゴ糖とは、炭水化物の一種です。炭水化物は糖と食物繊維に分類されます。糖のもっとも小さな構成単位を単糖と呼び、単糖が少数結び付くと少糖類、たくさん結び付くと多糖類となります。つながった単糖の数や種類により名前や働きが異なり、一般的に単糖が3〜9個つながったものがオリゴ糖と呼ばれています*1。
オリゴ糖の種類
オリゴ糖は大きく分けて「難消化性」と「消化性」の2種類があります。ここではそれぞれのオリゴ糖の特徴や、代表的なオリゴ糖の種類を紹介します。
難消化性オリゴ糖
難消化性オリゴ糖とは、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届くオリゴ糖です*2。腸内環境に好影響を与えることが注目されています。また、難消化性オリゴ糖には食後血糖値が上がりにくい、むし歯になりにくいなどの特徴もあります*3。
主な難消化性オリゴ糖は、フラクトオリゴ糖・ビートオリゴ糖(ラフィノース)・キシロオリゴ糖・ガラクトオリゴ糖・乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)・大豆オリゴ糖・ミルクオリゴ糖(ラクチュロース)などです*4。本記事では、これらの難消化性オリゴ糖について詳しく解説していきます。
消化性オリゴ糖
オリゴ糖の多くは難消化性ですが、小腸である程度消化される消化性オリゴ糖も存在します。その代表がイソマルトオリゴ糖です。
イソマルトオリゴ糖は小腸内である程度消化されますが、でん粉などと比較すると消化されにくい部類に入ります。難消化性オリゴ糖と同じように腸内環境をサポートする働きもありますが、その高い保湿性から、食品のしっとりとした食感を保つために使用されることがほとんどです*3。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*2 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022, p.36-37
*3 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*4 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
オリゴ糖の働き|オリゴ糖が腸活に良いって本当?
難消化性オリゴ糖にはいくつかの種類がありますが、共通する作用があります。ここからは、難消化性オリゴ糖の働きについてより詳しく解説します。
腸内環境を整える
難消化性オリゴ糖には、善玉菌を増やして腸内環境を整える働きが期待できます*4。
大腸には約1,000種類もの細菌が生息し、善玉菌・悪玉菌・それ以外の菌と3つのグループを形成しています。これらの菌はバランスをとって存在していますが、バランスが崩れて悪玉菌が増殖すると、腸内環境が乱れて不調につながることがあります*5。
善玉菌とは、ビフィズス菌や乳酸菌などの人に有益な働きをもたらす細菌です。善玉菌がつくり出した乳酸や酢酸などにより腸内を酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を抑えられます*5。難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌のエサとなって、増殖を促すことに役立ちます*4。善玉菌が増えて悪玉菌が減少すると腸内細菌のバランスが整い、腸内環境が改善すると考えられています。
したがって、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き善玉菌を増やす難消化性オリゴ糖は、腸活に役立つといえます。
血糖値を上げにくい
難消化性オリゴ糖の中には、構成成分に血糖値を上げるグルコースを含むものもあります。血糖値とは、血液中に含まれるグルコースの濃度のことです。食事をとると、食品に含まれる糖は分解されてグルコースに変わり、血液によって体中に運ばれます。グルコースは生命維持に欠かせない重要なエネルギー源ですが、とり過ぎると食後血糖値が急上昇してしまいます*6。
しかし、一部の難消化性オリゴ糖は血糖値を上昇させにくい性質があります*3*4。したがって、難消化性オリゴ糖は血糖値の管理に役立つ成分といえます。
むし歯になりにくい
難消化性オリゴ糖はむし歯の原因菌に利用されないため、むし歯になりにくいと考えられています*7。
むし歯の原因菌であるミュータンス菌は、砂糖を分解してグルカンという物質をつくります。ミュータンス菌はグルカンとともに歯に付着して歯垢となり、さらに砂糖を利用して酸をつくるため、歯が溶けてむし歯になるのです。したがって、砂糖を難消化性オリゴ糖に置き換えれば、むし歯のリスク低減が期待できます*8。

オリゴ糖とは?5つの効能を解説|ダイエットや糖質制限中でもとってOK!
近年注目されているオリゴ糖。実は身近な食品にも含まれ、腸内環境の改善やむし歯になりにくい、肌の調子を整える可能性などさまざまな健康・美容効果が期待されています。この記事では、オリゴ糖の種類と代表的な働き5つを解説し、日々の食生活に取り入れるヒントを紹介します。

オリゴ糖なら血糖値が上がらない理由|オリゴ糖の機能と摂取方法も紹介
血糖値が上がりにくい、オリゴ糖。この記事ではオリゴ糖を摂取してもなぜ血糖値が上がらないのか解説します。また、オリゴ糖の機能や手軽に摂取する方法も紹介しています。血糖値が気になる人、糖尿病の人、ダイエット中の人にもおすすめです。

糖尿病の人はオリゴ糖を食べても大丈夫?選び方と活用方法を解説!他の甘味料と比較
難消化性オリゴ糖は食べても血糖値が上昇しにくく、糖尿病の人が食べても問題ない食品です。また、砂糖よりも低カロリーで腸内環境を整えるメリットがあるため、糖尿病の人の食生活をサポートしてくれるでしょう。この記事では、オリゴ糖のメリットと糖尿病の人に効果的な選び方や活用方法を紹介します。
*5 地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所「善玉菌の力を取りいれて腸を健康に保ちましょう」
*6 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「血糖値」
*7 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022, p.37-38
*8 独立行政法人 農畜産業振興機構「子どものむし歯予防のために~お砂糖との上手な付き合い方~」
腸活におすすめ!オリゴ糖の活用方法
腸内環境を整えたい人のために、難消化性オリゴ糖の活用方法を紹介します。自身に合う方法を選び、難消化性オリゴ糖を食生活に取り入れてみましょう。
オリゴ糖を多く含む食材を取り入れる
難消化性オリゴ糖は私たちの身近な食材に含まれています。オリゴ糖で腸内環境を整えたいときは、難消化性オリゴ糖を含む食材を意識的に食事へ取り入れてみましょう。
腸内環境の改善に役立つ難消化性オリゴ糖を含む主な食材は、次のとおりです*3*9*10*11。
難消化性オリゴ糖の種類 | 主な食材 |
---|---|
フラクトオリゴ糖 | 玉ねぎ、ごぼう、バナナ |
ガラクトオリゴ糖 | 牛乳、発酵乳 |
キシロオリゴ糖 | たけのこ、きのこ |
大豆オリゴ糖 | 大豆 |
オリゴ糖製品を砂糖の代わりに使う
難消化性オリゴ糖は、顆粒やシロップの甘味料として市販されています。砂糖の代わりに料理に加えたり、コーヒーや紅茶などの飲み物に溶かしたりすることで、手軽に難消化性オリゴ糖を摂取できます。砂糖の代替として料理に使うときは顆粒タイプ、飲み物には溶けやすいシロップタイプなど、用途に合わせて選ぶと良いでしょう。
ただし、難消化性オリゴ糖を一度に摂取し過ぎると下痢を引き起こすことがあります*12。商品パッケージに記載されている量の目安を守って使用しましょう。
オリゴ糖製品を使用したお菓子を食べる
料理をつくる機会が少ない人、コーヒーや紅茶を何も加えずに飲む人は、難消化性オリゴ糖を配合したお菓子の利用がおすすめです。市販のチョコレートやクッキーには、難消化性オリゴ糖を使用した商品があります。そのような商品を利用すると、間食を楽しみながら手軽に難消化性オリゴ糖を摂取できます。コンビニなどで手軽に購入して食べられるものもあるため、習慣化しやすいこともメリットです。
*9 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集 フラクトオリゴ糖」
*10 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集 ガラクトオリゴ糖」
*11 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の素材情報データベース」
*12 木村雅行ほか. ガラクトオリゴ糖液糖の最大無作用量推定と安全性評価. 日本食品化学学会誌. 2004, 11, p.67−74
まとめ
今回は、オリゴ糖の種類と働き、腸活におすすめの難消化性オリゴ糖の活用方法を紹介しました。腸内環境を整える難消化性オリゴ糖は、お腹の調子が気になる人の味方になる成分です。野菜や果物などの身近な食材から取り入れる以外に、甘味料や市販のお菓子を活用することで手軽に摂取できます。腸活に取り組んでみたい人は、難消化性オリゴ糖の利用を検討してみましょう。
(参考文献閲覧日:2024年12月2日)
合わせて読みたいおすすめ記事

オリゴ糖の上手な使い方とレシピ3選|お悩み別おすすめのオリゴ糖の魅力と特徴を解説
オリゴ糖にはたくさんの種類があり、どれを選べばいいのか、どのように使えばいいのか迷うこともあるでしょう。本記事では、それぞれのオリゴ糖の特徴や適切な摂取量、日常生活での活用法を解説します。自分に合ったオリゴ糖の選び方や上手な使い方が分かります。

オリゴ糖は危険?太る?デメリットと糖尿病の人の活用方法を医師が解説
オリゴ糖はやさしい甘さが特徴で、甘味をつけようと使い過ぎると、カロリー過多やお腹の張りや痛み、下痢などのデメリットを感じてしまいます。適量であれば低カロリーで腸内環境を整える優秀な甘味料。正しい知識を学んでダイエット中の食生活に取り入れてみましょう。