近年、砂糖の代わりにさまざまな甘味料が売られています。ダイエットや血糖値が気になる人の中には「オリゴ糖」に興味を持っている人もいるでしょう。しかし「危険」「デメリット」といったキーワードが目に入ってしまい、不安を感じている人もいるのではないでしょうか。
オリゴ糖は、正しい量を正しく使えば危険ではありません。毎日の食生活に少しずつ取り入れることで、摂取カロリーを抑えたり腸内環境を整えたりできる、おすすめの甘味料です。
この記事では、オリゴ糖の特徴とともに、デメリット・メリット・正しいとり方について解説します。

この記事の執筆者
薬剤師/腸育コンシェルジュ
松本 萌
薬剤師ライターとして、セルフケアに関する記事を執筆している。前職のドラッグストアで健康相談を受ける中で、正しい知識を知らない人が多くいることを痛感。セルフケアの正しい知識を誰にでも分かりやすい言葉で紹介することを心がけている。薬剤師以外にも化粧品成分検定1級、腸育コンシェルジュなどさまざまな健康・美容の資格を取得。

この記事の監修者
内科医・医学博士・桜の咲クリニック院長
岡庭 紀子
桜の咲クリニック院長。医学博士。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本内視鏡学会内視鏡専門医。愛知医学大学医学部卒業後、愛知医科大学消化管内科入局。愛知県内のクリニックに勤務後、 桜の咲クリニックを開院。クリニックでは腸活やメディカルファスティング(ダイエット)など生活習慣の指導も行う。
オリゴ糖は危険?デメリットを解説

オリゴ糖は炭水化物の一種で、ブドウ糖や果糖と呼ばれる単糖が3〜9個程結びついたものを指します*1。オリゴ糖には「難消化性オリゴ糖」と「消化性オリゴ糖」の2種類があります。難消化性オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸に届き、「砂糖よりも低カロリー」で「腸内環境を整える」という特徴をもち、健康面を考慮し砂糖の代わりとして使われることも多いです*2。
しかし「オリゴ糖は危険である」「オリゴ糖にはデメリットがある」といったマイナスの印象を持っている人もいるのではないでしょうか。原因の1つとしては、オリゴ糖の「砂糖よりも甘さが控えめ」という特徴によるものだと考えられます。
以下の表では、よく使われるオリゴ糖の甘味について、砂糖と比較しています*2。
オリゴ糖の種類 | 甘味(砂糖の甘味を1とした場合) |
---|---|
イソマルトオリゴ糖 | 0.4〜0.5 |
フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖 | 0.25~0.35 |
キシロオリゴ糖 | 0.25~0.4 |
乳果オリゴ糖(ラクトスクロース) | 0.5(乳果オリゴ糖の含有率が55%以上の場合) |
ラフィノース | 0.2 |
このように、オリゴ糖の多くは砂糖の半分以下の甘味しかありません。そのため、オリゴ糖の味に慣れていないうちは、たくさんの量をとってしまいがちです。
オリゴ糖を一度にたくさんとると、お腹の張りや痛み、下痢などを引き起こすことがあります*3*4。また、たとえ砂糖よりも低カロリーなオリゴ糖をとったとしても、たくさんとりすぎれば、カロリー過多になることもあります。
しかし、オリゴ糖自体は危険ではありません。特徴ととり方について正しく知っていれば、オリゴ糖のメリットをしっかりと感じられるでしょう。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*2 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*3 奥 恒行ほか.ヒトにおける難消化性オリゴ糖・ガラクトシルスクロースの一括摂取と分割摂取の一過性下痢誘発に及ぼす影響ならびにその許容量. 日本栄養・食糧学会誌. 1999, 52巻,4号, p.203
*4 森川尚美ほか. 乳果オリゴ糖含有クッキーが若年女性の排便および腸内菌叢に及ぼす影響. 日本食物繊維誌, 1998, 第2巻,第1号, p.43-44

オリゴ糖の種類と効果の違いを解説|効率的なとり方も紹介
オリゴ糖は数多くの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っている一方で、共通した働きや効果も期待できます。オリゴ糖の特徴や働きを知っていれば、効率的に食生活へ取り入れられますね。本記事では主なオリゴ糖の種類とともに、オリゴ糖の働きや効率的な摂取方法について解説します。
オリゴ糖をとるメリット
オリゴ糖の中でも難消化性オリゴ糖は適量をとることで砂糖にはないメリットを得ることができます。ここでは、特にダイエット中に嬉しい働きを2つ紹介します。
血糖値が上昇しづらい

難消化性オリゴ糖は、血糖値が上昇しづらいことが分かっています*6。
血糖値は血液中にブドウ糖が増えることで上昇しますが、一般的な炭水化物や砂糖は消化管の消化酵素によってブドウ糖にまで分解され、血糖値を上昇させます*5。一方、難消化性のオリゴ糖は、胃や小腸で分解(消化)・吸収されにくく、摂取した後も血糖値が上昇しにくいことが特徴です*6。
オリゴ糖のうち、フラクトオリゴ糖・ビートオリゴ糖(ラフィノース)・キシロオリゴ糖・ガラクトオリゴ糖・乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)・大豆オリゴ糖・ミルクオリゴ糖(ラクチュロース)が、難消化性のオリゴ糖に当てはまります*6。イソマルトオリゴ糖は消化性のオリゴ糖に分類され、ほかのオリゴ糖と比較すると消化されやすく、一定の血糖値上昇の可能性はあります*2。
腸内環境を整える

難消化性オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、腸内環境を整える働きがあります*7。
大腸に運ばれた難消化性オリゴ糖は、ビフィズス菌をはじめとした腸内細菌によって代謝されると、エネルギーや短鎖脂肪酸を産生します *7。短鎖脂肪酸は大腸のpHを酸性にし、腸内の悪玉菌の増加を抑えて腸の動きを活発にさせることで、腸内環境を整えていくのです*7。
また、近年の研究において、2型糖尿病患者の腸内では短鎖脂肪酸や酪酸菌が減少しているという報告もあり、肥満や糖尿病の予防・改善に腸内環境や短鎖脂肪酸が重要視されています *8。

オリゴ糖とは?5つの効能を解説|ダイエットや糖質制限中でもとってOK!
近年注目されているオリゴ糖。実は身近な食品にも含まれ、腸内環境の改善やむし歯になりにくい、肌の調子を整える可能性などさまざまな健康・美容効果が期待されています。この記事では、オリゴ糖の種類と代表的な働き5つを解説し、日々の食生活に取り入れるヒントを紹介します。
*5 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「血糖値」
*6 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*7 菅原正義. オリゴ糖の特性と生理効果.ビフィズス,1993,7巻,1号
*8 水島莉那ほか. 腸内細菌叢と生活習慣病 1.肥満・糖尿病の病態と腸内細菌叢3)短鎖脂肪酸を介した宿主のエネルギー・糖代謝調節. 日本糖尿病学会誌, 2020, 63巻,6号, p.373
糖尿病でもオリゴ糖を食べても大丈夫なのか?
砂糖に比べてカロリーが低く血糖値も上昇しにくいオリゴ糖は、普段の健康管理におすすめです。また、糖尿病のような生活習慣病の治療をしている人でも食べられます。ここでは、糖尿病の人向けのオリゴ糖の使用ポイントを解説します。
ポイント① 医師や管理栄養士に指示された食事習慣を優先する

糖尿病になってしまったからといって「絶対に食べてはいけない」食べ物はありません。ですが、血糖値のコントロールのためには、食事習慣と運動習慣の改善が必要です。特に肥満を指摘された糖尿病患者は、エネルギー摂取量の制限をメインとした食事習慣の改善が必要になるでしょう*9。
ただし、理想的な食事習慣は個人で異なり、基本的には医師や管理栄養士の指導のもとで行われます。「オリゴ糖ばかり食べる」「オリゴ糖が入っている食品をたくさん食べる」といったことはせず、食事習慣のサポートを行っている医師や管理栄養士と相談しながら取り入れていきましょう。
ポイント② 普段使っている砂糖を一部オリゴ糖に置き換える

オリゴ糖は砂糖と比較すると低カロリーですが、カロリーゼロではありません。さらに、オリゴ糖の少ない甘味をカバーするために、砂糖や別の甘味料を添加している商品もあります。
また、オリゴ糖をたくさん食べることでお腹がゆるくなる場合もあります。オリゴ糖は食べ過ぎに注意し、普段使っている砂糖の代わりとして、少しずつ取り入れるようにしましょう。
ポイント③ 低血糖時にはオリゴ糖を食べない

糖尿病を治療中に低血糖を起こすことがありますが、このときの応急処置にオリゴ糖を食べても改善しにくいです。
低血糖時には、急激に血糖値を上げるためにブドウ糖10gもしくはブドウ糖を含む飲料水150〜200mlを摂取する必要があります。オリゴ糖は血糖値をほとんど上昇させないため、低血糖時にオリゴ糖を食べても意味がありません。
特に、糖の分解をゆっくりにする「α-グルコシダーゼ阻害薬」を服用中の人は、低血糖時には必ずブドウ糖を摂取するようにしてください *10。
*9 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」南江堂, 2024, p.39
*10 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター「低血糖」

オリゴ糖なら血糖値が上がらない理由|オリゴ糖の機能と摂取方法も紹介
血糖値が上がりにくい、オリゴ糖。この記事ではオリゴ糖を摂取してもなぜ血糖値が上がらないのか解説します。また、オリゴ糖の機能や手軽に摂取する方法も紹介しています。血糖値が気になる人、糖尿病の人、ダイエット中の人にもおすすめです。

糖尿病の人はオリゴ糖を食べても大丈夫?選び方と活用方法を解説!他の甘味料と比較
難消化性オリゴ糖は食べても血糖値が上昇しにくく、糖尿病の人が食べても問題ない食品です。また、砂糖よりも低カロリーで腸内環境を整えるメリットがあるため、糖尿病の人の食生活をサポートしてくれるでしょう。この記事では、オリゴ糖のメリットと糖尿病の人に効果的な選び方や活用方法を紹介します。
オリゴ糖はダイエットに効果的?太らないための注意点

砂糖に比べて低カロリーで腸内環境も整えてくれる難消化性オリゴ糖は、上手に取り入れることでダイエットのサポートにも役立ちます。
ダイエット中に難消化性オリゴ糖を取り入れる場合には、次の3点に注意しましょう。
- 1日の摂取目安量を守り、毎日継続してとる
- 難消化性オリゴ糖以外の甘味料が入っているかを確認する
- ビフィズス菌や乳酸菌と一緒にとる
まず、摂取量についてですが、市販されているオリゴ糖製品は1日当たり2〜10g(ティースプーンで1~3杯程度)の摂取が推奨されています。難消化性オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届くため、一度にたくさんとると下痢やお腹の張りを起こしやすいです。1日の摂取目安量を守りながら、コーヒーやたまご焼きなどの砂糖代わりとして複数回に分けてとることをおすすめします *11。
また、オリゴ糖は砂糖に比べて甘さが控えめというデメリットをカバーするために、砂糖やほかの甘味料を添加している場合があります。カロリーを抑えたい場合や甘さは必要ないという場合は、製品の原材料表示を見てほかの甘味料が入っていないか確認しましょう。
オリゴ糖や食物繊維などは、ビフィズス菌や乳酸菌と一緒にとることで、腸内環境をより整えやすくなります。たとえば、乳酸菌入りのヨーグルトにオリゴ糖を混ぜたものは、ダイエット中の間食としておすすめです *12。

オリゴ糖の上手な使い方とレシピ3選|お悩み別おすすめのオリゴ糖の魅力と特徴を解説
オリゴ糖にはたくさんの種類があり、どれを選べばいいのか、どのように使えばいいのか迷うこともあるでしょう。本記事では、それぞれのオリゴ糖の特徴や適切な摂取量、日常生活での活用法を解説します。自分に合ったオリゴ糖の選び方や上手な使い方が分かります。

ヨーグルトが腸活におすすめのワケ|腸活効果を高めるレシピも紹介
腸活におすすめのヨーグルトは具体的にどのような効果があるのでしょうか。今回はヨーグルトに含まれる菌に注目して解説します。腸活効果を高める食材の組み合わせや、腸活におすすめのヨーグルトレシピも紹介しているので参考にしてください。
*11 消費者庁「特定保健用食品の表示許可等について 別添3 特定保健用食品(規格基準型)制度における規格基準」
*12 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
まとめ
難消化性オリゴ糖には砂糖に比べて低カロリー・血糖値が上昇しにくい・腸内環境を整えるというメリットがある一方で、一度にたくさんとることによってお腹の張りや痛み、下痢やカロリー過多のデメリットを感じることがあります。
ですが、オリゴ糖を正しくとれば、ほとんどの場合デメリットを感じることはありません。血糖値が気になる人やダイエット中の人は、今回解説したポイントを参考にしながら、普段の食生活にオリゴ糖を取り入れていきましょう。
(参考文献閲覧日:2024年12月23日)
合わせて読みたいおすすめ記事

オリゴ糖とは?5つの効能を解説|ダイエットや糖質制限中でもとってOK!
近年注目されているオリゴ糖。実は身近な食品にも含まれ、腸内環境の改善やむし歯になりにくい、肌の調子を整える可能性などさまざまな健康・美容効果が期待されています。この記事では、オリゴ糖の種類と代表的な働き5つを解説し、日々の食生活に取り入れるヒントを紹介します。

便秘にお悩みの人必見!オリゴ糖の特徴と働き、効果的なとり方を解説
便秘の原因の1つは、腸内環境の乱れ。近年注目されているオリゴ糖は腸内環境に良い影響を与えるため、便秘対策にも役立ちます。今回はオリゴ糖の特徴・働きをあげ、便秘対策を中心に腸内への影響を解説します。

腸活に良い食べ合わせとは?オリゴ糖×ヨーグルトの簡単腸活レシピを紹介
腸活の効果アップを期待するなら、善玉菌を摂取し、さらに腸内で増やすことが重要ですが、善玉菌をとるための食品と増やすための食品は別物です。この記事ではその仕組みを3つのキーワードで解説するとともに、腸活におすすめの簡単レシピも紹介しています。

オリゴ糖が腸活におすすめの理由と効果的なとり方をプロが解説
"腸内環境を整える「腸活」に興味を持っている人は少なくないでしょう。腸活にはオリゴ糖の摂取がおすすめと言われますが、その理由をご存じでしょうか。本記事では、オリゴ糖の種類と働きを解説し、腸活におすすめのオリゴ糖の活用方法を紹介します。

オリゴ糖を含む食べ物と上手に取り入れる方法
腸内環境を整え、健康をサポートするオリゴ糖が注目されています。オリゴ糖は腸内の善玉菌を増やす働きだけでなく、血糖値の上昇抑制やむし歯予防にも役立つと言われています。この記事では、オリゴ糖を含む食べ物と、日常生活に無理なく取り入れる方法を紹介します。

オリゴ糖とは?特徴と働き、メリットを解説
オリゴ糖とは炭水化物の一種で、中でも難消化性オリゴ糖は「低カロリー」「血糖値を上げにくい」「腸内環境を整える」「むし歯になりにくい」などの働きが報告されています。この記事ではオリゴ糖について詳しく解説しています。難消化性オリゴ糖は野菜・果物・発酵食品などに含まれていますが、メリットをしっかり感じたいなら積極的に取り入れてみましょう。