近年、腸内環境を整える嬉しい食品成分として注目されている「プレバイオティクス」。プレバイオティクスを使ったさまざまな食品やサプリメントが販売されています。しかし、腸活に有効と名前はよく聞くけれど、どんなものなのか実はよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、腸活に興味はあるけれどプレバイオティクスって一体何?という人に向けて、プレバイオティクスの種類や体内での働き、効果をはじめ、プレバイオティクスの魅力を詳しく紹介します。また同じ整腸成分のプロバイオティクスとの違いや、シンバイオティクスについても解説していきますので、毎日の腸活にぜひお役立てください。

この記事の執筆者
ナチュラルフード・発酵食品専門家
天野 月音
広告会社でマーケティングや編集の仕事を経験し、フリーライターとして独立。ナチュラルフードや発酵食品、ハーブの資格を活かしながら、食や健康関連の情報を中心に提供している。
プレバイオティクスとは?
プレバイオティクスとは、腸内細菌のエサとなる難消化性の食物成分のことです。代表的なものには、オリゴ糖や難消化性デキストリンなどがあり、これらの成分は胃や小腸で分解されることなく大腸に到達し、そこに生息する善玉菌のエサとなります。それにより、善玉菌などの有用な微生物を増やし、腸内細菌のバランスを整えることで、整腸作用をはじめ、ミネラル吸収促進や食後の血糖値や血中中性脂肪の上昇抑制、肥満対策といったさまざまな健康効果があるとされています*1。
プレバイオティクス(prebiotics)の「プレ(pre)」には「前もって(before)」という意味があります。その名の通り、プレバイオティクスとは、腸内細菌の増殖に前もって必要とされる栄養成分のことを指し、これを積極的に摂取することで、腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善が期待できます*1。
プロバイオティクスとの違い
プレバイオティクスとプロバイオティクスは似たような名前ですが、この2つの役割ははっきりと分かれます。
プレバイオティクスは体内に存在している善玉菌のエサとなる食品成分であるのに対し、プロバイオティクスは摂取することで人に有益な効果をもたらす微生物の総称です*2。この微生物を含む食品をダイレクトに摂取することで、腸内の善玉菌を増やすことができます。プロバイオティクスの代表的なものには、乳酸菌やビフィズス菌などの生菌製剤やヨーグルト、納豆などがあります。
プレバイオティクスとプロバイオティクスは、腸内環境の改善を通じて健康維持に重要な役割を果たします。また、この2つの成分を組み合わせて取り入れることをシンバイオティクスと言い、摂取した有益な微生物の増殖や活性化を促進し腸内環境の改善に役立てることができます*3。
プレバイオティクスの種類
プレバイオティクスは善玉菌を増やすことができ、人の健康に有益な効果をもたらします。では、実際にプレバイオティクスにはどんなものがあるのか詳しく見ていきましょう。
プレバイオティクスは「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主の健康に有益に働く食品成分」と定義されています*1。一般的には、食物繊維やオリゴ糖で知られるイヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など難消化性の多糖類があげられます。現在、プレバイオティクスとして認められている食品成分には以下のようなものがあります。
主なプレバイオティクスの種類(オリゴ糖、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維)*4*5*6 | |
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オリゴ糖 | フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸など |
食物繊維 | ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、βグルカン等 |
ポリデキストロースは、グルコース(ブドウ糖)、ソルビトール、クエン酸などの原料から人工的に合成された水溶性の食物繊維です。天然の食物繊維と同様の性質や働きをもち、便通改善や腸内環境の改善、コレステロールの吸収抑制、高血圧や糖尿病の予防などの効果が報告されています*4。
一方、イヌリンは、菊芋やごぼう、にんにく、玉ねぎ、チコリ、ニラなどの食物に多く含まれる水溶性の食物繊維の一種です。砂糖に果糖が1〜3個結合したものをフラクトオリゴ糖と呼びますが、このフラクトオリゴ糖とさらに果糖が結合したものがイヌリンと呼ばれています*6。
*1 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集 プレバイオティクス」
*2 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集 プロバイオティクス」
*3 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
*4 浜野弘昭. ポリデキストロースの特性と応用. SEN-I Gakkaishi(繊維と工業). 1992, 48 巻4号 p.184-189
*5 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集_オリゴ糖」
*6 浅桐公男. イヌリン. 外科と代謝・栄養. 2020, 54巻3号, p.160
プレバイオティクスの効果|どうして体にいいの?
プレバイオティクスにはいくつかの種類がありますが、共通する働きがあります。ここでは、プレバイオティクスの代表的な効果について説明します。
プレバイオティクスは以下の特徴を備えています。
- 消化管上部で加水分解・吸収されない
- 大腸に共生する有益な細菌(乳酸菌やビフィズス菌等)の栄養源となり、それらの増殖を促進し、活性化する
- 大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持する
これらの要件を備えたものがプレバイオティクスで、主に大腸に共生する乳酸菌やビフィズス菌などの有益な細菌の増殖を促進したり、代謝を活性化したりする働きがあります*1。
プレバイオティクスは、このように大腸で有益に機能することによって、整腸作用、抗脂血作用、コレステロール低下作用、インスリン抵抗性の改善、ミネラル吸収促進作用、尿中窒素低減作用、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制作用、腸管免疫の増強などの嬉しい効果が期待できます。また、オリゴ糖類のプレバイオティクスは低カロリーであるため、ダイエットにも役立ちます*1*9。
*9 原博. プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果. 腸内細菌学雑誌. 2002, 16巻1号, p.35-42
プレバイオティクスをうまく取り入れよう
ここまでプレバイオティクスの働きや機能、種類、健康効果などを詳しく解説しました。続いて、プレバイオティクスを上手に取り入れるためのコツや食品の種類、効果的なとり方を紹介します。
プレバイオティクスの食品例
プレバイオティクスは、身近な食品にもたくさん含まれています。ここではその例を紹介しますので、日頃の腸活の参考にしてみてください。
〇オリゴ糖を含む食材
- 野菜類:アスパラガス、ブロッコリー、キャベツ、玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにくなど
- 豆類:きなこ、納豆、枝豆、大豆
- 果物:バナナ、りんご、もも、スイカ、アボカド、キウイフルーツ、ぶどうなど
〇水溶性食物繊維を含む食材
- 穀類:オートミール、押麦、大麦、発芽玄米など
- いも類:しらたき、こんにゃく、さつまいも、里いもなど
- 野菜類:ごぼう、にんじん、玉ねぎ、おくら、ブロッコリー、モロヘイヤなど
- 豆類:大豆、納豆、おから、いんげん豆、えんどう豆、そら豆など
- 海藻類:昆布、わかめ、もずく、寒天など
- きのこ類:黒きくらげ、干ししいたけ
- 果物&ナッツ:プルーン、アボカド、キウイフルーツ、アーモンド、クルミ
〇不溶性食物繊維を含む食材
- 穀類:オートミール、押麦、大麦、キヌア、ライ麦など
- いも類:さつまいも
- 野菜類:ごぼう、切り干し大根、グリーンピース、ブロッコリー、おくら、かぼちゃなど
- 豆類:大豆、納豆、おから、枝豆、いんげん豆、えんどう豆、あずきなど
- 果物&ナッツ:ラズベリー、ブルーベリー、プルーン、アボカド、キウイフルーツ、落花生、アーモンド、クルミなど
プレバイオティクスの効果的なとり方
プレバイオティクスは身近なさまざまな食品に含まれていることが分かりました。では、プレバイオティクスをより効果的に摂取するにはどうしたら良いでしょうか。
プレバイオティクスの摂取方法には大きく2つの方法があります。1つめは「食品からの摂取」、そしてもう1つは「サプリメントの利用」です。前述の食品例を参考に、できるだけ普段の食事から自然に摂取することが望ましいですが、食事から十分な量を摂取するのが難しい場合にはサプリメントを取り入れることも1つの方法です。
また、プレバイオティクスとプロバイオティクスを同時に摂取する「シンバイオティクス」を意識するのも効果的です。シンバイオティクスはより効果的に腸活を行うための重要な考え方で、プレバイオティクスとプロバイオティクスをどちらか単体でとるよりも効果が高まると期待されています*3。難消化性オリゴ糖や食物繊維など、善玉菌の増殖を促進するプレバイオティクスと一緒に、ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に有益な生菌、プロバイオティクスを上手に組み合わせながら普段の食生活の中で両方を取り入れていくことを心がけましょう。
プロバイオティクスが含まれるのは、ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け、ザワークラウト、テンペなどの発酵食品や醤油、みそ、みりん、甘酒など麹類の食品等です。
紹介したプレバイオティクスやプロバイオティクスの食品例を参考に、これらをうまく組み合わせて主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を取ることが、シンバイオティクスにつながります。
まとめ
今回はプレバイオティクスの種類とその働き、加えてプロバイオティクスについて解説しました。より効率的に腸内環境を整えるためには、「シンバイオティクス」の概念に則り、善玉菌のエサとなるプレバイオティクスのオリゴ糖や食物繊維と合わせて、プロバイオティクスに分類される乳酸菌やビフィズス菌などを一緒に摂取することが大切です。より多く善玉菌を増やして腸内フローラを整えるために、これらの食材をバランス良く取り入れ、毎日の健康づくりにぜひ役立ててみてください。