プレバイオティクスとは?健康効果や食品例、効果的なとり方を解説

プレバイオティクスとは?健康効果や食品例、効果的なとり方を解説

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近年、腸内環境を整える嬉しい食品成分として注目されている「プレバイオティクス」。プレバイオティクスを使ったさまざまな食品やサプリメントが販売されています。しかし、腸活に有効と名前はよく聞くけれど、どんなものなのか実はよく分からないという人も多いのではないでしょうか。

今回は、腸活に興味はあるけれどプレバイオティクスって一体何?という人に向けて、プレバイオティクスの種類や体内での働き、効果をはじめ、プレバイオティクスの魅力を詳しく紹介します。また同じ整腸成分のプロバイオティクスとの違いや、シンバイオティクスについても解説していきますので、毎日の腸活にぜひお役立てください。

この記事の執筆者
ナチュラルフード・発酵食品専門家
天野 月音

広告会社でマーケティングや編集の仕事を経験し、フリーライターとして独立。ナチュラルフードや発酵食品、ハーブの資格を活かしながら、食や健康関連の情報を中心に提供している。

この記事の監修者
精神科医
今野 裕之

順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法や米国で開発されたアルツハイマー病治療・リコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立、代表理事・所長就任。
著書に『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』と『最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術』がある。

目次
  1. プレバイオティクスとは?
  2. プレバイオティクスの効果|どうして体にいいの?
  3. プレバイオティクスをうまく取り入れよう
  4. まとめ

プレバイオティクスとは?

プレバイオティクスとは、善玉菌を増やしたり、悪玉菌の増殖を抑えたりするなど、健康に有益な働きがある難消化性の成分のことです*1。代表的なものには、オリゴ糖や難消化性デキストリンなどがあり、これらの成分は胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸に到達し、そこに生息する善玉菌のエサとなります。それにより、善玉菌などの有用な微生物を増やし、腸内細菌のバランスを整えることで、整腸作用をはじめ、ミネラル吸収促進や食後の血糖値や血中中性脂肪の上昇抑制、肥満対策といったさまざまな健康効果があるとされています*2。

プレバイオティクス(prebiotics)の「プレ(pre)」には「前もって(before)」という意味があります。その名の通り、プレバイオティクスとは、腸内細菌の増殖に前もって必要とされる栄養成分のことを指し、これを積極的に摂取することで、腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善が期待できます*2。

プロバイオティクスとの違い

プレバイオティクスとプロバイオティクスは似たような名前ですが、この2つの役割ははっきりと分かれます。

プレバイオティクスは体内に存在している善玉菌のエサとなる食品成分であるのに対し、プロバイオティクスは摂取することで人に有益な効果をもたらす微生物の総称です*3。この微生物を含む食品をダイレクトに摂取することで、腸内の善玉菌を増やすことができます。プロバイオティクスの代表的なものには、乳酸菌やビフィズス菌などの生菌製剤やヨーグルト、納豆などがあります。

プレバイオティクスとプロバイオティクスは、腸内環境の改善を通じて健康維持に重要な役割を果たします。また、この2つの成分を組み合わせて取り入れることをシンバイオティクスと言い、摂取した有益な微生物の増殖や活性化を促進し腸内環境の改善に役立てることができます*4。

プレバイオティクスの種類

プレバイオティクスは善玉菌を増やすことができ、人の健康に有益な効果をもたらします。では、実際にプレバイオティクスにはどんなものがあるのか詳しく見ていきましょう。

プレバイオティクスは、一般的には、食物繊維やオリゴ糖で知られるイヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など難消化性の多糖類があげられます。現在、プレバイオティクスとして認められている食品成分には以下のようなものがあります。

主なプレバイオティクスの種類(オリゴ糖、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維)*5*6*7
オリゴ糖 フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸など
食物繊維 ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、βグルカンなど

ポリデキストロースは、グルコース(ブドウ糖)、ソルビトール、クエン酸などの原料から人工的に合成された水溶性の食物繊維です。天然の食物繊維と同様の性質や働きをもち、便通改善や腸内環境の改善、コレステロールの吸収抑制、高血圧や糖尿病の予防などの効果が報告されています*5。

一方、イヌリンは、菊芋やごぼう、にんにく、玉ねぎ、チコリ、ニラなどの食物に多く含まれる水溶性の食物繊維の一種です。砂糖に果糖が1〜3個結合したものをフラクトオリゴ糖と呼びますが、このフラクトオリゴ糖とさらに果糖が結合したものがイヌリンと呼ばれています*7。

プロバイオティクスとは?効果と種類・おすすめの食品・とり方のコツを紹介

善玉菌を育てるのに有効なプロバイオティクス。腸内フローラを整えるのに役立つと言われていますが、プロバイオティクスとは何のことなのでしょうか?この記事ではプロバイオティクスの種類とその働き、プロバイオティクスを含むおすすめの食品、プレバイオティクスとの違いについて紹介します。

オリゴ糖の種類と効果の違いを解説|効率的なとり方も紹介

オリゴ糖は数多くの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っている一方で、共通した働きや効果も期待できます。オリゴ糖の特徴や働きを知っていれば、効率的に食生活へ取り入れられますね。本記事では主なオリゴ糖の種類とともに、オリゴ糖の働きや効率的な摂取方法について解説します。

*1 Glenn R. Gibson et al., Expert consensus document: The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2017, 14:491–502
*2 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プレバイオティクス」
*3 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プロバイオティクス」
*4 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」
*5 浜野弘昭. ポリデキストロースの特性と応用. SEN-I Gakkaishi(繊維と工業). 1992, 48 巻4号 p.184-189
*6 公益財団法人腸内細菌学会「用語集_オリゴ糖」
*7 浅桐公男. イヌリン. 外科と代謝・栄養. 2020, 54巻3号, p.160

プレバイオティクスの効果|どうして体にいいの?

プレバイオティクスにはいくつかの種類がありますが、共通する働きがあります。ここでは、プレバイオティクスの代表的な効果について説明します。

プレバイオティクスは以下の特徴を備えています。

  • 消化管上部で加水分解・吸収されない
  • 大腸に共生する有益な細菌(乳酸菌やビフィズス菌等)の栄養源となり、それらの増殖を促進し、活性化する
  • 大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持する

これらの要件を備えたものがプレバイオティクスで、主に大腸に共生する乳酸菌やビフィズス菌などの有益な細菌の増殖を促進したり、代謝を活性化したりする働きがあります*2。

プレバイオティクスは、このように大腸で有益に機能することによって、整腸作用、抗脂血作用、コレステロール低下作用、インスリン抵抗性の改善、ミネラル吸収促進作用、尿中窒素低減作用、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制作用、腸管免疫の増強などの健康に役立つ効果が報告されています。また、オリゴ糖類のプレバイオティクスは低カロリーであるため、ダイエットにも役立ちます*2*10。

*10 原博. プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果. 腸内細菌学雑誌. 2002, 16巻1号, p.35-42

プレバイオティクスをうまく取り入れよう

ここまでプレバイオティクスの働きや機能、種類、健康効果などを詳しく解説しました。続いて、プレバイオティクスを上手に取り入れるためのコツや食品の種類、効果的なとり方を紹介します。

プレバイオティクスの食品例

プレバイオティクスは、身近な食品にもたくさん含まれています。ここではその例を紹介しますので、日頃の腸活の参考にしてみてください。

〇オリゴ糖を含む食材

  • 野菜類:アスパラガス、ブロッコリー、キャベツ、玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにくなど
  • 豆類:きなこ、納豆、枝豆、大豆
  • 果物:バナナ、りんご、もも、スイカ、アボカド、キウイフルーツ、ぶどうなど

〇水溶性食物繊維を含む食材

  • 穀類:オートミール、押麦、大麦、発芽玄米など
  • いも類:しらたき、こんにゃく、さつまいも、里いもなど
  • 野菜類:ごぼう、にんじん、玉ねぎ、おくら、ブロッコリー、モロヘイヤなど
  • 豆類:大豆、納豆、おから、いんげん豆、えんどう豆、そら豆など
  • 海藻類:昆布、わかめ、もずく、寒天など
  • きのこ類:黒きくらげ、干ししいたけ
  • 果物&ナッツ:プルーン、アボカド、キウイフルーツ、アーモンド、クルミ

〇不溶性食物繊維を含む食材

  • 穀類:オートミール、押麦、大麦、キヌア、ライ麦など
  • いも類:さつまいも
  • 野菜類:ごぼう、切り干し大根、グリンピース、ブロッコリー、おくら、かぼちゃなど
  • 豆類:大豆、納豆、おから、枝豆、いんげん豆、えんどう豆、あずきなど
  • 果物&ナッツ:ラズベリー、ブルーベリー、プルーン、アボカド、キウイフルーツ、落花生、アーモンド、クルミなど

プレバイオティクスの効果的なとり方

食べるタイミング|朝がおすすめ

1日のどのタイミングに食べても腸活には効果的ですが、特におすすめのタイミングは朝食時です。朝にプレバイオティクスを摂取することで、腸内フローラの改善や腸の健康維持に役立ちます。

腸内細菌の状態は1日中一定ではなく、体内時計に応じて変化していることが最近の研究で明らかになってきました*11。朝食時に食物繊維を摂取することで、腸内フローラ(腸内細菌叢)の多様性が上がり、悪玉菌の繁殖が抑制され、便通が改善された人が増えたという報告があります*12。朝は夜に比べて活動が盛んになるため、腸内細菌も活動性が上がり食物繊維を利用しやすくなると考えられます*11。また、朝の方が前回の食事から時間がたっていることが多く絶食時間が長いため、腸の蠕動運動が盛んになっていることも理由の1つと考えられています*11。

朝がおすすめではありますが、ご自身のライフスタイルに合わせて習慣化しやすいタイミングでプレバイオティクスを取り入れてください。

*11 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会「食生活と健康情報 朝の食物繊維摂取と腸内細菌叢のバランス」
*12 HK Kim et al., Ingestion of Helianthus tuberosus at Breakfast Rather Than at Dinner Is More Effective for Suppressing Glucose Levels and Improving the Intestinal Microbiota in Older Adults. Nutrients. 2020, 12(10)

組み合わせ|シンバイオティクスを意識する

食材の組み合わせを考える際には、プレバイオティクスとプロバイオティクスを同時に摂取する「シンバイオティクス」を意識してみましょう。シンバイオティクスはより効果的に腸活を行うための重要な考え方で、プレバイオティクスとプロバイオティクスをどちらか単体でとるよりも効果が高まると期待されています*4。

難消化性オリゴ糖や食物繊維など、善玉菌の増殖を促進するプレバイオティクスと一緒に、ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に有益な生菌、プロバイオティクスを上手に組み合わせながら普段の食生活の中で両方を取り入れていくことを心がけましょう。

プロバイオティクスが含まれるのは、ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け、ザワークラウト、テンペなどの発酵食品や醤油、みそ、みりん、甘酒など麹類の食品等です。

手軽にできるシンバイオティクスの組み合わせを5つ紹介します。

・ヨーグルト × フルーツ × きな粉 × ナッツ

ヨーグルトにバナナやベリーなどのフルーツをトッピングし、さらにきな粉やクラッシュアーモンドなどのナッツをふりかけるだけの、簡単デザートです。

・オーバーナイトオートミール

前日の夜にオートミールをヨーグルトや豆乳と混ぜ、冷蔵庫で一晩寝かせたものです。朝にそのまま食べられるので、忙しい朝にもぴったりです。好みでフルーツやオリゴ糖を加えても◎。

・雑穀米・玄米 × 味噌汁

ご飯を炊く際に玄米や雑穀を混ぜることで食物繊維を手軽に補給できます。また忙しいときは、フリーズドライの味噌汁を活用すれば、忙しい朝でも腸活を続けられます。

・甘酒 × フルーツ × ナッツ

温めた甘酒にドライフルーツや砕いたナッツをトッピングしておやつがわりにしてみてはいかがでしょうか。

・豆乳キムチ鍋

豆乳をベースにした鍋に好きな具材とキムチを入れるだけで、寒い季節に体を温めながら実践できる腸活メニューになります。

どれも手軽に取り入れられる組み合わせになっています。ぜひ試してみてください。

ちょい足しのコツ

毎日の食事にちょい足しをして手軽に腸活したい方におすすめしたいのが、「枝豆」と「クルミ」です。常温保管が可能なクルミと冷凍で売っているむき枝豆を買い置きすることで、いつでも手軽に腸活メニューにアレンジできます。

枝豆もクルミもサラダやスープ、パスタのトッピング、混ぜご飯にと幅広く使用することができます。クルミをご飯に混ぜることに抵抗があるかもしれませんが、ちりめんじゃこや塩昆布と一緒に混ぜると食感と香ばしさが足されてとてもおいしく食べられますので、ぜひ試してみてください。

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まとめ

今回はプレバイオティクスの種類とその働き、加えてプロバイオティクスについて解説しました。より効率的に腸内環境を整えるためには、「シンバイオティクス」の概念に則り、善玉菌のエサとなるプレバイオティクスのオリゴ糖や食物繊維と合わせて、プロバイオティクスに分類される乳酸菌やビフィズス菌などを一緒に摂取することが大切です。より多く善玉菌を増やして腸内フローラを整えるために、これらの食材をバランス良く取り入れ、毎日の健康づくりにぜひ役立ててみてください。

(参考文献閲覧日:2024年12月10日)

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