プロバイオティクスとは?効果と種類・おすすめの食品・とり方のコツを紹介

プロバイオティクスとは?効果と種類・おすすめの食品・とり方のコツを紹介

公開日:

更新日:

腸内環境を整えることは、健康維持には欠かせないと、近年注目が集まっています。テレビや雑誌などでも取り上げられる「腸内フローラ」というワードも周知されるようになりましたよね。さらに、腸内環境を整えることに関連する用語として「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」なども広がってきています。

今回は、乳酸菌やビフィズス菌は聞いたことがあるけど「プロバイオティクス」って何?という人に向けて、プロバイオティクスの効果と種類、プロバイオティクスを含むおすすめの食品、さらにプレバイオティクスとの違いやシンバイオティクスについても解説します。腸内環境を整えたい人は、ぜひ参考にしてください。

腸内環境改善のキーワードとして「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」という3つが注目されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

この記事の執筆者
パティシエ/食品ライター
栗原 ともこ

パティシエとして13年働いた後、現在はヨガインストラクターおよびライターとして活動している。製菓衛生師やヨガの資格を複数保有する。様々な職歴と経験を経て、健康、ヨガ、食、ダイエット、レシピ開発、旅行など、幅広いジャンルの執筆をしている。

この記事の監修者
精神科医
今野 裕之

順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法や米国で開発されたアルツハイマー病治療・リコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立、代表理事・所長就任。
著書に『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』と『最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術』がある。

目次
  1. プロバイオティクスとは?
  2. プレバイオティクスとは
  3. シンバイオティクスとは
  4. プロバイオティクスの種類
  5. プロバイオティクスの効果
  6. まとめ

プロバイオティクスとは?

プロバイオティクス(probiotics)とは、十分な量を摂取すると、健康に役立つ効果を発揮する生きた微生物のことです*1。主に乳酸菌やビフィズス菌など、ヨーグルトや発酵食品などに多く含まれています。プロバイオティクスを適切に摂取することで、腸内環境の改善などさまざまな健康効果が期待されています*2。

プロバイオティクスは、共生を意味するプロバイオシス(probiosis; pro 共に、~のために、biosis 生きる)からきています*2。

プロバイオティクスを含むおすすめの食品

プロバイオティクスは主に、ヨーグルト・納豆・キムチ・ぬか漬け・ザワークラウト・テンペなどの乳製品や発酵食品に含まれており、日々の食事に取り入れることが推奨されています。プロバイオティクスは、醤油・味噌・塩麹・酢などの調味料にも含まれています。調味料なら意識しなくても取り入れられるのが嬉しいですね。

腸活に良い食べ合わせとは?オリゴ糖×ヨーグルトの簡単腸活レシピを紹介

腸活の効果アップを期待するなら、善玉菌を摂取し、さらに腸内で増やすことが重要ですが、善玉菌をとるための食品と増やすための食品は別物です。この記事ではその仕組みを3つのキーワードで解説するとともに、腸活におすすめの簡単レシピも紹介しています。

キムチが腸活におすすめの理由|効果的な食べ方と腸活キムチレシピも紹介

発酵食品であるキムチは、植物性乳酸菌と食物繊維を含むため、腸活にはおすすめの食材です。この記事ではキムチが腸活に良い理由と効果的に摂取する方法を詳しく解説し、キムチと相性のいいもち麦を使った腸活レシピを紹介します。

プレバイオティクスとは

プレバイオティクス(prebiotics)とは、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維のことです*3。プレバイオティクスはプロバイオティクスと違い、菌そのものを摂取するわけではありません。プレバイオティクスの「プレ(pre)」は「前もって(before)」という意味があります。善玉菌を増やすために必要なエサであるプレバイオティクスを前もってとることで、腸内環境が整うと期待されます。

プレバイオティクスを含むおすすめの食品

プレバイオティクスであるオリゴ糖や食物繊維は、キャベツやゴボウなどの野菜類、豆類、いも類、海藻、きのこ類、果物などに多く含まれます。硬く噛み応えがある食材、繊維質で咀嚼が必要な食材はプレバイオティクスのことが多いので、意識して選んでみてください。

きのこは腸活に効果的?おすすめの食べ方と腸活きのこレシピを紹介

腸活をするうえで注目されている食材の1つである「きのこ」。みなさんはなぜきのこが腸活におすすめな食材であるのかをご存じでしょうか?本記事では、きのこが腸活におすすめの理由やレシピを紹介します。

シンバイオティクスとは

「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を組み合わせた「シンバイオティクス(synbiotics)」という考え方も提唱されています*4。シンバイオティクスの「シン(syn)」は「一緒に」という意味があります。善玉菌とエサを一緒に摂取することで、より腸内環境の改善にアプローチができると注目されているのです。

シンバイオティクスの簡単な実践方法

善玉菌であるプロバイオティクスと善玉菌のエサとなるプレバイオティクスを一緒にとると言うと、少しハードルが高く聞こえるかもしれません。食生活を急に変えるのは大変ですよね。シンバイオティクスを意識した食事にするには、今の食事に1品足すことからはじめてみてはいかがでしょうか。

たとえば、親子丼やカレーライスなど1品料理の場合は、豆腐やわかめ、しいたけを入れたみそ汁を1品足して定食にしてみましょう。または、食後のデザートとしてヨーグルトにバナナを入れたり、オリゴ糖をかけて食べたりすることで、シンバイオティクスを簡単に実践できます。

プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を含むおすすめの飲み物が、甘酒です。甘酒は「飲む点滴」と言われるほど栄養豊富で、麹菌や乳酸菌などを含むプロバイオティクスであり、オリゴ糖を含むプレバイオティクスでもあります。甘くて飲みやすいので間食にぴったりです。甘酒には米麹甘酒と酒粕甘酒があり、酒粕甘酒にはアルコールが含まれるため、お子さんや妊婦には米麹甘酒がおすすめです。

*1 Colin Hill et al., The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics consensus statement on the scope and appropriate use of the term probiotic. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2014, 11:506–514
*2 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プロバイオティクス」
*3 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プレバイオティクス」
*4 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 シンバイオティクス」

プロバイオティクスの種類

特に注目したいプロバイオティクスとして、腸内を整える菌としても有名な乳酸菌と、近年話題の酪酸菌があげられます。詳しく見ていきましょう。

乳酸菌

乳酸菌は乳酸を産生する通性嫌気性菌です*5。善玉菌としてよく耳にするビフィズス菌も、大きく分けると乳酸菌の仲間です。古くからヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品の製造に利用されており、特になじみの深いプロバイオティクスです。

乳酸菌から産生される乳酸は、腸内を酸性化し悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を改善する働きがあります。また腸内細菌のバランスを保つことによる便秘の改善、コレステロール値や中性脂肪値の低下、血圧降下作用、免疫の維持に役立つことが報告されています*6。乳酸菌飲料や発酵食品など乳酸菌を含む食事をとることで健康の維持に役立つとされています。

酪酸菌

酪酸菌は、酪酸を産生する嫌気性細菌の総称です。ヒトや動物の腸管内などに存在します*7。

酪酸には乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌がすみやすい環境をつくり、腸内フローラを健康に保つ作用が期待できます*8。また、大腸の機能を正常に保ち、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進する働きがあります*9。

酪酸をつくれるのは酪酸菌だけであるため、腸内で酪酸をつくりだすためには酪酸菌を増やす必要があるのです。しかし酪酸菌を含む食品は、ぬか漬けなど種類が少ないため食品として摂取するのが難しいとされています。酪酸菌は食物繊維をエサに酪酸をつくるので、菌の活動を活発化させるために、食物繊維を多く含む食品をとることが推奨されています*10。

*5 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「乳酸菌」
*6 上西寛司ほか. 乳酸菌の生理機能とその要因. 日本調理科学会誌. 2013, 第46巻 第2号, p.129~133
*7 公益財団法人 腸内細菌学会「用語集 酪酸産生菌」
*8 梶野リエほか. 腸内細菌が作り出す大腸の生理的低酸素環境とがん組織における低酸素シグナル.ファルマシア. 2017, 53巻 3号 p.238-240
*9 坂田隆ほか. 短鎖脂肪酸の生理活性. 日本油化学会誌. 1997, 第46巻 第10号, p.1205-1212
*10 安藤朗. 新たな臓器としての腸内細菌叢. 日本消化器病学会雑誌. 2015. 第112巻第11号, P.5

プロバイオティクスの効果

プロバイオティクスには、以下のような健康への効果が報告されています。

アレルギー抑制

プロバイオティクスは、腸内環境の改善や免疫調節機能へのアプローチにより、アレルギー反応を軽減する作用が期待できると注目を集めています*11。

腸内には、過剰な免疫反応を抑制する制御性T(Treg)細胞と呼ばれるものがあります。酪酸菌が生成する酪酸は、Treg細胞の増殖などに関わり、Treg細胞が増えることで、アレルギー反応を抑える作用があると発表されています*12。

感染防御

プロバイオティクスは、ウイルスの感染予防や軽減などの免疫機能の改善も期待され、研究が行われています。インフルエンザやロタウイルス下痢症についての動物実験やヒト試験の結果が報告されています*13。

糖尿病の改善

プロバイオティクスは、糖尿病の改善も期待されています。血糖値低下、耐糖能改善作用に加えて、高インスリン血症、高脂血症改善作用および抗酸化作用が報告されているほか、治療薬との併用療法なども研究が進められています*14。

*11 辨野義己. プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌の分類と効能. モダンメディア. 2011, 57巻10号, p.281
*12 香山尚子. 腸内細菌と制御性T細胞. 腸内細菌学雑誌. 2022, 36巻4号, p.184
*13 保井久子. 発酵乳プロバイオティクスの免疫調節機能およびウイルス感染症予防作用. Milk Science. 2010, Vol 59 No3. p.261
*14 大野裕史. 糖尿病に対するプロバイオティクスの効果. 腸内細菌学雑誌 24. 2010, p.277

オリゴ糖とは?5つの効能を解説|ダイエットや糖質制限中でもとってOK!

近年注目されているオリゴ糖。実は身近な食品にも含まれ、腸内環境の改善やむし歯になりにくい、肌の調子を整える可能性などさまざまな健康・美容効果が期待されています。この記事では、オリゴ糖の種類と代表的な働き5つを解説し、日々の食生活に取り入れるヒントを紹介します。

糖尿病の人はオリゴ糖を食べても大丈夫?選び方と活用方法を解説!他の甘味料と比較

難消化性オリゴ糖は食べても血糖値が上昇しにくく、糖尿病の人が食べても問題ない食品です。また、砂糖よりも低カロリーで腸内環境を整えるメリットがあるため、糖尿病の人の食生活をサポートしてくれるでしょう。この記事では、オリゴ糖のメリットと糖尿病の人に効果的な選び方や活用方法を紹介します。

まとめ

この記事ではプロバイオティクスの種類とその働き、加えてプレバイオティクスやシンバイオティクスについても解説しました。腸内環境を整えるためには、プロバイオティクスに分類される乳酸菌や酪酸菌だけではなく、善玉菌を増やすプレバイオティクスとなるオリゴ糖や食物繊維も一緒に摂取(シンバイオティクス)することが推奨されています。

腸の環境を整えることは、便秘や下痢の予防・改善はもちろん、さまざまな病気の予防にも役立ちます。日々の食生活を見直し、健康的に過ごすために役立ててみてください。

(参考文献閲覧日:2024年12月10日)

合わせて読みたいおすすめ記事

プレバイオティクスとは?健康効果や食品例、効果的なとり方を解説

善玉菌を増やし、腸内環境を整えながら健康をサポートするプレバイオティクス。善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えるのに有効と考えられています。今回はプレバイオティクスの効果や食品例、効果的なとり方について解説します。