加齢や生活習慣による腸内環境の乱れは、便秘の原因の1つです。近年、その腸内環境に良い影響を与える甘味料として、オリゴ糖が注目されています。
今回は、オリゴ糖の特徴や働きと、便秘対策を中心としたオリゴ糖の腸内への影響について解説します。効果的なとり方もお伝えしているので、ぜひ参考にしてください。

この記事の執筆者
管理栄養士/ヴィーガン&グルテンフリー専門家
たちばな かやの
大豆食品・ヴィーガン・グルテンフリー情報に特化する栄養専門家として活動している。栄養を学び、給食委託会社に入社後、病院と保育園で調理・食材発注・事務対応などを経験。アレルギー除去食をつくるうちに大豆の可能性に魅了され、大豆関連の資格を多数取得。また、プラントベースにも興味をもち、ヴィーガンやグルテンフリーについて学ぶ。
現在はコラム執筆やレシピ開発、セミナー講演のほか、自身でグルテンフリーのケータリング弁当屋を主催するなど精力的に活動している。食物アレルギーやヴィーガン・ハラル等の食のマイノリティが抱える悩みを解消し、食の多様性がある日本・世界を目指す。

この記事の監修者
精神科医
今野 裕之
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法や米国で開発されたアルツハイマー病治療・リコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立、代表理事・所長就任。
著書に『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』と『最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術』がある。
オリゴ糖とは?
オリゴ糖とは炭水化物の一種です。皆さんは「グルコース」(ブドウ糖)をご存じですか?
グルコースは炭水化物の最小単位である単糖です。単糖にはグルコース以外にも種類がありますが、一般的にこの単糖が3~9個程結合したものをオリゴ糖と呼びます*1。
オリゴ糖の特徴

構成の違いによってオリゴ糖は大きく「難消化性」と「消化性」の2種類に分かれています。難消化性オリゴ糖として代表的なものに、フラクトオリゴ糖・ガラクトオリゴ糖があげられます。「難消化性」という名前の通り、胃や小腸で消化・吸収されず大腸まで届く点が特徴です。大腸まで届いた難消化性オリゴ糖は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌のエサとなり腸内環境を整えるサポートをします。一方、消化性オリゴ糖は、体内で消化されてエネルギー源となります。
一般的に「おなかの調子を整えるオリゴ糖」は、難消化性のオリゴ糖のことを指します。難消化性オリゴ糖は砂糖よりもエネルギー源になりにくく、摂取しても血糖値や中性脂肪値が上昇しにくいとされています*2。その上、腸内環境に良い影響を与えることが分かっており、ダイエットのみならず健康増進・美容対策にもつながります。
本記事では、オリゴ糖の中でも難消化性のオリゴ糖の特徴と働き、便秘対策としての効果について解説します。
砂糖・はちみつとの違い

オリゴ糖のように甘さを感じる食品といえば、砂糖やはちみつですよね。これらとの違いは何でしょうか。
砂糖はグルコースとフルクトースという単糖同士が結合してできる炭水化物が主成分です。炭水化物の種類では「二単糖」のグループに入ります。すっきりとした甘さでさまざまな料理やドリンク、お菓子に使われています。
一方、はちみつはミツバチが花の蜜を集めてつくる、天然の甘味料です。単糖のグルコース、フルクトースがほとんどを占めていますが、消化性オリゴ糖であるイソマルトオリゴ糖やアミノ酸、ミネラル、ビタミンなども含まれています。花の種類によって風味が変わり、濃厚な甘さが特徴です*3。
100g当たりのカロリーは上白糖が391kcal、はちみつが329kcalです*4。難消化性オリゴ糖は砂糖の約半分程のカロリーでありながら、砂糖に近い甘味であるため、幅広い料理に使えます。ダイエットでカロリーを抑えたい人には難消化性オリゴ糖がおすすめです。
また、砂糖やはちみつは小腸で消化・吸収されて即時エネルギー源になるので、摂取後は血糖値が上がりやすくなりますが、難消化性オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に届くため血糖値の急上昇を抑えます。
砂糖のような甘さをもちながら、ヘルシーで腸内環境にも良い影響を与えるため、近年難消化性オリゴ糖は注目されているのです。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*2 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」
*3 中村純. 古くて新しいミツバチ生産物「ハチミツ」. 2001, ミツバチ科学, 22 (4), p.145-158.
*4 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
便秘対策に役立つ!難消化性オリゴ糖の働き
前項であげたように、難消化性オリゴ糖には腸内環境を整える作用があります。次に、便秘にお悩みの人には嬉しい難消化性オリゴ糖の働きをさらに詳しく解説します。
ビフィズス菌や乳酸菌など善玉菌のエサになり腸内環境を整える

大腸には1,000種類を超えるさまざまな細菌が活動しており、これらは善玉菌・悪玉菌・それ以外の細菌と大きく3つのグループに分かれます。
善玉菌はビフィズス菌や乳酸菌などの細菌です。腸内で乳酸やビタミンなどを生成するほか、善玉菌の体を構成する物質が、免疫力を高めたり、血清コレステロールを下げたりと健康増進のサポートをしてくれます*5。悪玉菌はウェルシュ菌やサルモネラ菌など、増え過ぎると体に良くない影響を与える細菌です。腸内環境と健康には密接な関係があることが分かっており、特に善玉菌と悪玉菌のバランスが重要です。
健康な人の腸内を調べると善玉菌の数が多く見られます。一方、糖尿病や大腸がん、動脈硬化症などの患者の腸内を調べると、善玉菌が劣勢となっている傾向があります。悪玉菌は食生活やストレスなどの環境によって増えます。善玉菌よりも悪玉菌の方が多くなる状態を「腸内環境が乱れる」と言い、体に不調を生じやすくなるのです。
胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に運ばれた難消化性オリゴ糖は、善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌のエサとなるので、善玉菌が増えていきます。腸内環境のバランスを整え、健康な体の維持・増進をサポートする難消化性オリゴ糖は、積極的にとっていきたい炭水化物と言えるでしょう*5*6。
便秘対策に役立つ

便秘とは、腸内に便が溜まって排便しにくい状態を指します。原因はさまざまあげられますが、腸内環境が乱れて悪玉菌が増えることも1つの原因です。
肉や揚げ物などが中心の食生活や、不規則な生活リズム…こうした生活は悪玉菌が増えやすくなります。
便秘が続くと、便がエサとなってさらに悪玉菌が増えてしまいます。肌荒れ、食欲不振にもつながるため、もしも便秘が起こった場合は、毎日の生活環境を見直してみましょう。
難消化性オリゴ糖は便秘の改善や対策としても役立ちます。前項で触れたように、難消化性オリゴ糖は善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌のエサとなり、善玉菌の数を増やすため、腸内環境を良いバランスに保ちます。加えて、難消化性オリゴ糖が増やした善玉菌によってつくられた酸によって悪玉菌の増殖を抑える働きもあり、善玉菌が増えて腸の動きが活発になれば、便秘をはじめ体全体の健康のケアにもつながります*6*7。

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近年注目されているオリゴ糖。実は身近な食品にも含まれ、腸内環境の改善やむし歯になりにくい、肌の調子を整える可能性などさまざまな健康・美容効果が期待されています。この記事では、オリゴ糖の種類と代表的な働き5つを解説し、日々の食生活に取り入れるヒントを紹介します。
*5 一般財団法人日本予防医学協会「腸も大掃除?! すっきり「快腸」で新年を!」
*6 公益財団法人 腸内細菌学会「オリゴ糖」
*7 独立行政法人 農畜産業振興機構「オリゴ糖について (2)」
効果的な難消化性オリゴ糖のとり方
ここまで難消化性オリゴ糖のさまざまな特徴や働きをあげていきました。次に、難消化性オリゴ糖の摂取方法を紹介します。
1日の摂取量の目安ととり方

まず難消化性オリゴ糖の1日の摂取量はどれくらいでしょうか。便秘対策など腸内環境に有効な摂取量は1日2~10g*8。難消化性オリゴ糖の種類によって異なりますが、ティースプーンで1~3杯程度が目安です。
難消化性オリゴ糖は、バナナや玉ねぎなど野菜や果物に含まれています*9。しかし、これらの食品に含まれる難消化性オリゴ糖の量はごくわずかで、1日の摂取量を満たすにはバナナだと10本、玉ねぎだと6個以上食べなければなりません*10。現実的には難しいですよね。
ほかのとり方では、製品として販売されているオリゴ糖を使う方法があります。毎日効率的かつ手軽に難消化性オリゴ糖をとりたい場合は、オリゴ糖製品を使ってみましょう。

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難消化性オリゴ糖の使い方

オリゴ糖製品はシロップタイプとパウダータイプがあります。使い方は簡単で、普段、使っている砂糖やはちみつをお好みの難消化性オリゴ糖に変えるだけ。甘さを我慢せずに美味しく摂取できます。砂糖と比べて低カロリーな所も嬉しいです。
煮物や炒め物、お菓子づくりに使う砂糖の代わりに、また、コーヒーや紅茶にティースプーン1杯入れてみるなど普段の食生活に難消化性オリゴ糖を取り入れてみましょう。腸内環境に働きかけるには、習慣化することが大切です。

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難消化性オリゴ糖をとる時の注意点

オリゴ糖製品を使う際に注意したいことは、摂取量です。1度に大量の難消化性オリゴ糖を摂取すると下痢をしやすくなります。そのため、オリゴ糖製品に記載の目安量を守り、1日数回に分けて摂取したり、初めて難消化性オリゴ糖製品を使う場合は少量から始めるなど心がけましょう*8。
難消化性オリゴ糖の選び方

前述のとおり、市販のオリゴ糖製品はシロップタイプとパウダータイプが一般的です。粉末タイプのものは純度が高い反面、湿気を含むと固まりやすいので、注意が必要です。
オリゴ糖製品の中には砂糖や人工甘味料、調達しやすい消化性オリゴ糖が添加されているものもあるため、難消化性オリゴ糖のメリットを重視する人は難消化性オリゴ糖かどうか原材料をチェックしましょう。フラクトオリゴ糖・ビートオリゴ糖(ラフィノース)・キシロオリゴ糖・ガラクトオリゴ糖・ラクトスクロース(乳糖果糖オリゴ糖)・大豆オリゴ糖・ミルクオリゴ糖(ラクチュロース)が、難消化性オリゴ糖に当てはまります*11。
また、さまざまな種類のあるオリゴ糖のなかでも、トクホ(特定保健用食品)として許可を得ている商品もあるので、トクホ表示があるかもチェックしてみるとよいでしょう。トクホ(特定保健用食品)とは、保健効能成分を含み、特定の保健の目的で摂取するとその目的が期待できる旨の表示ができる食品です。食品ごとに有効性や安全性について国の審査を受けた上で許可を得ています*12。
*8 消費者庁「特定保健用食品の表示許可等について 別添3 特定保健用食品(規格基準型)制度における規格基準」
*9 公益財団法人 腸内細菌学会「フラクトオリゴ糖」
*10 Judith et al., Food Technology, A PUBLICATION OF THE INSTITUTE OF FOOD TECHNOLOGIST. 1994, p.85-89
*11 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*12 消費者庁「特定保健用食品について」
まとめ
今回の記事では難消化性オリゴ糖の特徴をあげながら、腸内環境への影響について、便秘対策を中心に紹介しました。便秘の原因の1つは腸内環境の乱れです。胃や小腸で消化・吸収されにくい難消化性オリゴ糖は大腸まで届いて善玉菌の数を増やすサポートをします。腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが整うようになり、便秘対策につながります。食事では十分な量を取りにくい難消化性オリゴ糖ですが、いつもの砂糖をオリゴ糖製品に代えるだけで簡単に摂取できます。毎日の食事に難消化性オリゴ糖を取り入れ、便秘に困らない腸内環境をつくっていきましょう。
(参考文献閲覧日:2024年12月10日)
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