糖質制限をすると便秘になる?予防法5選と今すぐできる対策2選を紹介

糖質制限をすると便秘になる?予防法5選と今すぐできる対策2選を紹介

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糖質制限は、糖質の摂取量を抑える食事法です。適度な糖質制限は健康へのメリットが期待できる一方で、糖質制限をすると「便秘になる」という声も聞かれます。糖質制限に取り組むと、本当に便秘になるのでしょうか?

結論から言うと、過度な糖質制限は便秘の原因になる可能性があります。

まずは糖質制限とは何かを知り、糖質制限と便秘の関係について理解しましょう。過度な糖質制限による便秘を予防する方法も紹介します。

この記事の執筆者
管理栄養士
いしもと めぐみ

病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して独立。栄養・健康分野の記事執筆のほか、栄養指導、食が楽しくなるレシピの発信などを行う。

目次
  1. 糖質制限とは?
  2. 糖質制限中に便秘になりやすいワケ
  3. 糖質制限による便秘の予防法5選
  4. 今すぐ対策したい!糖質制限中の便秘にお困りの人向け対策2選
  5. まとめ

糖質制限とは?

糖質制限とは、糖質の摂取量を抑える食事法であり、肥満を防ぐ作用があると考えられています。

そもそも糖質とは、体を動かすエネルギーのもとになる栄養素です。糖質が不足すると疲れやすくなったり、集中力が低下したりします。反対に、過剰摂取によりエネルギーとして使われなかった糖質は、体内で中性脂肪に変わって体に蓄積されるため、肥満の原因になります*1 。

糖質が中性脂肪に変わるのは、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の作用によるものです。食事から取り入れた糖質がブドウ糖に変わり、血糖値が上昇するとインスリンが分泌されます。インスリンの作用により、血液中のブドウ糖は細胞に取り込まれてエネルギーに利用されます。

一方、エネルギーとして使われなかった余分なブドウ糖は、やはりインスリンの作用によって、脂肪として蓄積されてしまいます*2 。そのため、糖質制限に取り組んで糖質の摂取量を抑えれば、肥満を予防できると考えられています。糖質を制限した食事法が肥満やメタボリックシンドロームの改善に有益であり、糖尿病発症・進行リスクを下げるという研究結果が発表されています(米オハイオ州立大学による研究成果。米国臨床実験ジャーナルに掲載)*3 。

*1 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「炭水化物 / 糖質」
*2 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「インスリン」
*3 Parker N. Hyde et al., Dietary carbohydrate restriction improves metabolic syndrome independent of weight loss. The Journal of Clinical Investigation Insight. 2019. 4(12)

糖質制限中に便秘になりやすいワケ

糖質制限に取り組むと便秘になりやすいのは、食物繊維と水分が不足することが原因の1つです。

糖質制限において摂取に制約がかかる食べ物は、糖質を多く含むご飯・パン・麺類などの主食、じゃがいもやさつまいもなどの芋類、かぼちゃやとうもろこしなどの野菜です。これらの食品には食物繊維も含まれているため、糖質制限に取り組むと食物繊維の摂取量も少なくなります。

たとえば、1膳150gのご飯を1日3回食べていた方がご飯の量を半分に減らした場合、食物繊維は約3g減少します*4。1日当たりの食物繊維の摂取目標量は、18〜64歳の男性で21g以上、女性で18g以上とされています*5。3gは1日当たりの食物繊維の摂取目標量の14〜17%に相当します。

また、糖質が多い食品は水分も多く含んでいます。ご飯の約60%、じゃがいもの約80%は水分です*4。そのため、糖質制限では水分も不足しやすくなります。

食物繊維と水分は、排便に関わる大切な成分です。食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。水溶性食物繊維には、水分を含んで便を柔らかくする作用があります。一方で、水分を吸収して膨張することで便の量を増やし、腸を刺激して排便を促すのが不溶性食物繊維の作用です*6 。

このように、糖質制限により食物繊維と水分が不足してスムーズに排便できなくなるため、便秘が引き起こされると考えられます。

*4 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 炭水化物成分表 編」
*5 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
*6 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「便秘と食習慣」

糖質制限による便秘の予防法5選

ここからは、糖質制限による便秘を防ぐ方法を紹介します。これから糖質制限に取り組む人は、ぜひ実践してみてください。

食物繊維を摂取する

食物繊維が豊富な食材をとることで便秘を防ぎましょう。

前述の通り、1日当たりの食物繊維の摂取目標量は、18〜64歳の男性で21g以上、女性で18g以上とされています*5 。しかし、現状の平均摂取量は20〜59歳の男性で約18g、女性で約15gと、目標量に届いていません*7 。糖質制限をするなら、意識的に食物繊維を摂取するよう心がけましょう。

食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類されます。水溶性食物繊維を多く含むのは、わかめや昆布などの海藻類や野菜などです。大麦やオーツ麦などにも含まれるため、糖質の摂取量に注意しながら麦ご飯やオートミールを取り入れても良いでしょう。不溶性食物繊維は根菜、きのこ、豆類などに豊富です*6 。2種類の食物繊維をバランス良く摂取して、便秘を防ぎましょう。

水分補給を心がける

糖質が多い食材から水分を摂取できないため、多めに水分をとりましょう。一般的に、人は1日に食事から約1L、飲み水から約1.2Lの水分を摂取することが推奨されています*8 。1食のご飯を150gから75gに抑えるなら、水分は約45ml不足します*4 。1日3食分であれば約135mlの水分が不足するため、その分、飲み水を増やして、1.3〜1.4Lの水分を摂取することで不足分が補えます。

また、起床後に冷水を飲むと、目覚めとともに活動を始めた腸に刺激を与えられます*10 。目覚めの水分補給を習慣にして、排便を促しましょう。

植物性油脂を取り入れる

便秘予防のためには、適度な油脂の摂取を心がけましょう。食事から摂取した脂質は分解されて脂肪酸になり、腸を刺激して排便を促します*9 。さらに脂質には、腸内で便の滑りを良くして排便しやすくする作用もあります。

ただし、脂質はとり過ぎに注意が必要です。特に、肉の脂身やバターなどに多く含まれる飽和脂肪酸のとりすぎは、コレステロール値を上昇させて循環器疾患のリスクを高めます。食事へ取り入れるなら、不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルなどの植物性油脂がおすすめです*11 。

朝食をとる

朝食は、排便の促進におすすめです。脳や体が眠りについている夜間は腸も休息していますが、脳や体が目覚めると腸も活動を開始します。この時に朝食を食べて腸を大きく刺激すると、排便が促されます。

その際、腸を十分に休息させてから大きな刺激を与えることが大切です。したがって、前日の夕食はあまり夜遅い時間にとらないようにして、夜遅くに食べる必要がある場合は消化しやすいものを選ぶことをおすすめします。

さらに、規則的な生活は排便を習慣化する*9ため、毎日朝食を食べると便秘が解消される効果が期待できます 。生活リズムを整えて朝食を習慣にし、便秘を予防しましょう。

軽い運動に取り組む

体を動かすと、腸の活動が促されます*9 。激しい運動である必要はなく、ウォーキングやジョギングのような軽い有酸素運動でかまいません*12 。毎日継続するとより効果的なので、軽い運動を生活に取り入れてみましょう。

*7 厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要」
*8 環境省「健康のために水を飲もう講座」
*9 細田誠弥.生活習慣と排便異常.順天堂医学.2004, 50巻, 4号, p.330-337
*10 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「便秘」
*11 農林水産省「脂質による健康影響」
*12 高野正太.慢性便秘症に対する食事療法,運動療法,理学療法.日本大腸肛門病会誌.2019, 72, p.621-627

今すぐ対策したい!糖質制限中の便秘にお困りの人向け対策2選

糖質制限中で、すでに便秘に悩んでいる人には、お腹のマッサージがおすすめです。ここでは、2つのマッサージを紹介します。

お腹マッサージ

1つ目は「のの字」のマッサージです。両手を重ね、お腹の右下から「の」を書くように左下へ向かってマッサージします。大腸内の便を肛門へ向かって送り出すイメージで、優しく刺激しましょう。2つ目は「腸もみ」のマッサージです。大腸の4つの角を刺激するように、左右の肋骨の下と骨盤の上部をそれぞれもみほぐしましょう*12 。

どちらも腸を刺激できるので、今すぐ解消したい便秘に効果が期待できます。

排便時の姿勢

排便時の姿勢もポイントです。実は、大腸から肛門へと続く直腸は真っ直ぐではなく、角度がついています。そのため、便秘の人は直腸の曲がっている箇所で便の排出が滞っている可能性があります。

スムーズに排便するなら、前傾姿勢がおすすめです。上体を前に傾けると直腸の角度が開くため、排便しやすくなるでしょう。洋式トイレの場合は足の下に踏み台を置くと、前傾姿勢を取りやすくなります*12 。

まとめ

今回は、糖質制限と便秘の関係について解説しました。糖質制限により便秘になる原因の1つには、糖質が多い食べ物を制限することで食物繊維や水分が不足するためです。便秘の予防には、食物繊維と水分を十分に摂取するとともに排便を促す脂質をとり、朝食や運動を習慣化することがおすすめです。糖質制限に取り組む際は、今回紹介した方法で便秘を予防しましょう。