くしゃみや鼻水、肌のかゆみなど、つらいアレルギー症状に悩む人は少なくありません。アレルギーの原因と聞くと「花粉」や「食べ物」などを思い浮かべるかもしれませんが、実はアレルギーが起こる背景には、免疫の働きや腸内環境が深く関係しています。
現時点では、アレルギーそのものを治したり、発症を防いだりする方法はまだ確立されていません*1。だからこそ、「食事や生活の工夫で、少しでもアレルギー症状を軽くしたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。
今回は、アレルギーが起こる仕組みや原因を分かりやすく解説し、アレルギー対策につながる腸活の方法を紹介します。
この記事の執筆者
管理栄養士
いしもと めぐみ
病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して独立。栄養・健康分野の記事執筆のほか、栄養指導、食が楽しくなるレシピの発信などを行う。
アレルギーの仕組み
そもそもアレルギーとは、「免疫」という体の働きが異常を起こし、くしゃみや発疹、呼吸困難などの症状が現れる状態を指します*2。
アレルギーには主にⅠ型からⅣ型まで4つのタイプがありますが、私たちに身近な食物アレルギーや花粉症は「Ⅰ型アレルギー」に分類されます*3。このⅠ型アレルギーに関わるのが、私たちの体を異物から守る「免疫」という働きです。
免疫は本来、体外から侵入する細菌やウイルス、寄生虫などから身を守るために機能します*2。しかし、この免疫がうまく機能しなくなると、無害であるはずの食べ物や花粉に対して体が過剰に反応することがあるのです。
アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン」と呼びます*2。アレルゲンが体内に入ると、体はそれを異物と認識し、アレルゲンを排除するために「IgE抗体」をつくります*2。IgE抗体は、血液や皮膚、腸などに存在する「マスト細胞」に結合し、再びアレルゲンが体内に入り込むと、IgE抗体がアレルゲンに結びつきます。その結果、マスト細胞から化学物質が放出され、アレルギー症状が起こります*3。
*1 令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 アレルギー疾患対策に必要とされる大規模疫学調査に関する研究による「日本のアレルギー疾患はどう変わりつつあるのか」
*2 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「アレルギーについて」
*3 一般社団法人日本アレルギー学会・厚生労働省 アレルギーポータル「アレルギーとは」
アレルギーの原因
アレルゲンとなる可能性がある物質は多岐にわたります。食べ物では、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生などが代表的で、これらはとくに症例数が多く、症状が重くなりやすい食品とされています*4。
花粉症もアレルギーの一種です。スギやヒノキ、シラカンバ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉がアレルゲンとなり、くしゃみや鼻水などの症状を引き起こします*5。そのほか、ハウスダスト、ダニ、カビ、薬剤、動物の毛や垢、昆虫などがアレルゲンとなる可能性があります*6。
アレルゲンは本来、体に害を及ぼすものではありません。それにも関わらず、これらの物質がアレルギーを引き起こすようになった原因の1つとして、近年は免疫と腸内環境の関係に注目が集まっています。
腸は、口から侵入した病原菌やウイルスなどの危険に常にさらされている器官です。そのため、腸には「腸管免疫」と呼ばれる独自の免疫システムが発達しています*7。さらに、腸管免疫は腸内細菌の影響を受けることが明らかになっており、免疫の仕組みが関わるアレルギーと腸内環境も関連していると考えられています*7。
*4 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
*5 一般社団法人日本アレルギー学会・厚生労働省 アレルギーポータル「花粉症」
*6 厚生労働省「リウマチ・アレルギー情報 アレルギー総論」
*7 上野川修一. 腸管免疫とプレバイオティクス. 腸内細菌学雑誌, 2002, 16巻1号, p.65-70
アレルギー対策につながる腸活のやり方
アレルギーと腸内環境の関係については研究が進められており、腸内に善玉菌が多い人はアレルギーを発症しにくい傾向があることも報告されています*7。善玉菌を増やし、腸内環境を整えるためには「腸活」がおすすめです。ここからは、毎日の生活の中で実践できる腸活の方法を紹介します。
発酵食品を食べる
発酵食品の中には、腸で善玉菌として働く微生物を含むものがあります。たとえば、ヨーグルトやチーズ、漬物、納豆、みそなどの発酵食品には、善玉菌の一種である乳酸菌が含まれています*8*9。これらの発酵食品を食事に取り入れると、腸内の善玉菌を増やす効果が期待できるでしょう。
また、ある研究では、スギによる花粉症やアトピー性皮膚炎の患者に乳酸菌やビフィズス菌を摂取させたところ、症状が軽減したと報告されています*10。発酵食品から善玉菌として働く微生物を取り入れることは、アレルギー症状を和らげる助けになる可能性があります。
オリゴ糖や食物繊維を取り入れる
難消化性オリゴ糖や水溶性食物繊維には、腸内で善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす作用が期待できます。
難消化性オリゴ糖は炭水化物の一種で、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌のエサとなって腸内環境をサポートします*11。難消化性オリゴ糖の1つであるフラクトオリゴ糖は、アスパラガスやごぼう、玉ねぎ、にんにく、はちみつなどに含まれています*12。
食物繊維は水への溶けやすさで2つに分類されますが、腸活におすすめなのは水に溶けやすい水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維も善玉菌のエサとなることで、その増殖を助けます。水溶性食物繊維の一種であるペクチンはオクラに、アルギン酸はわかめやひじきなどの海藻類に含まれています*12。
適度な運動に取り組む
体を動かすと、腸の動きが活発になることが分かっています。腸活として運動に取り組む場合は、できる限り毎日続けることが理想的です*13。
また、運動により腸内細菌のバランスが変化し、体にとって有益な物質をつくり出す腸内細菌が増える傾向があることも報告されています*14。定期的な運動は、腸内環境を健やかに保つサポートになるでしょう。
ストレス軽減の面からも、運動は腸活に役立つ可能性があります。ストレスを受けた人は善玉菌が減少し、悪玉菌が増加する傾向があることが示唆されています*15。体を動かしてストレスを発散すると、腸内環境が整いやすくなるかもしれません。
睡眠をしっかり取る
腸内環境を良い状態で維持するためには、十分な睡眠を取ると良いでしょう。睡眠や体温、血圧、心拍などは約24時間の周期で変動しており、これを「概日リズム」と呼びます*16。この概日リズムは腸内細菌にも影響を与え、睡眠時間が短くなることで概日リズムが乱れると、腸内細菌のバランスも変わると考えられています*17。
*8 公益財団法人腸内細菌学会「よくある質問 乳酸菌について教えてください」
*9 瀬川修一. プロバイオティクスが産生するさまざまな生理活性物質. 生物工学会誌. 2012, 第90巻, p.736
*10 上西寛司ほか. 乳酸菌の生理機能とその要因. 日本調理科学会誌. 2013, Vol.46, No.2, p.129-133
*11 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プレバイオティクス」
*12 竹並恵里「炭水化物の摂り方・選び方パーフェクト事典」ナツメ社, 2022, p.66, 71, 72, 75
*13 細田誠弥. 生活習慣と排便異常. 順天堂医学. 2004, 50巻, 4号, p.330-337
*14 森田英利. 運動と腸内細菌. 腸内細菌学雑誌. 2020, 34巻1号, p.13-18
*15 須藤信行. ストレスと腸内フローラ. 腸内細菌学雑誌. 2005, 19巻1号, p.25-29
*16 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「概日リズム睡眠・覚醒障害」
*17 入江潤一郎ほか. 睡眠と腸内細菌叢. 腸内細菌学雑誌. 2017, 31巻3号, p.143-150
まとめ
今回は、アレルギーが起こる仕組みと原因、アレルギー対策につながる腸活の方法について紹介しました。アレルギーは、免疫の働きに異常が生じて起こる体の反応です。腸は免疫と深く関わっており、腸内環境を整えることがアレルギー対策に役立つと考えられています。
腸内環境を整える方法としては、発酵食品や難消化性オリゴ糖、水溶性食物繊維をとること、適度な運動や十分な睡眠を心がけることがおすすめです。日々の食事や生活習慣を少しずつ見直して、アレルギーに負けない体づくりに取り組んでいきましょう。
(参考文献閲覧日:2025年11月8日)
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