季節の変わり目や体調をくずしやすい時期に、「免疫力を高めたい」と考える人も多いのではないでしょうか。免疫とは、細菌やウイルスなどの異物から体を守るための仕組みです。免疫力は、加齢などによって低下しやすくなりますが、生活習慣や食事によってケアすることもできます。本記事では、免疫力を高める方法について解説しますので、ぜひ生活に取り入れてみてください。
この記事の執筆者
管理栄養士
堀川 衣梨
医療栄養学を専攻し、医療機関での栄養カウンセリング、小学校や保育園での調理・栄養士業務を経てフリーの管理栄養士として独立。一般的な栄養や食に関する知識だけでなく、子供向けの調理やメニュー作成の経験から、アレルギーや離乳食、子どもの食の悩みにも精通。日本化粧品検定1級、家庭料理技能検定2級、フードスペシャリストなどの資格を保有。
免疫とは?
免疫とは、外部から侵入する細菌やウイルスなどの異物から、体を守るための仕組みです*1。免疫の働きが低下すると、さまざまな病気にかかりやすくなります。
免疫のシステムは、大きく分けて2つあります。1つは、生まれつき体に備わっている「自然免疫」。もう1つは、過去の異物を記憶し、次に侵入した時に効率的に排除する「獲得免疫」です。これらの免疫システムが連携して働くことで、私たちの健康が保たれています*1。
しかし、免疫は体温の低下や加齢などが原因となり、その働きが低下してしまいます。免疫が低下すると感染症や病気にかかりやすくなる恐れがあることから、免疫維持のために、生活習慣や食事に気を配ることが大切です*2。
*1 北海道科学大学「免疫とは?仕組みや種類、高める方法を分かりやすく解説!」
*2 東邦大学「『免疫』は私たちの体を病気から守る大切な防御機能~冬に向かう季節は、特に体を冷やさないことが大切~」
免疫力を高める生活習慣
免疫力を高めるために大事なのが、規則正しい生活です。ここでは、規則正しい生活で免疫力を高めるための生活習慣を3つ紹介します。
質の良い睡眠を取る
睡眠は、心身の疲労を取ることはもちろん、免疫機能にとっても重要な役割を担っています。厚生労働省によると、睡眠が免疫の維持に重要とされ、睡眠不足は免疫力の低下に影響すると考えられています*3。
また、睡眠時間が短いと免疫細胞の活性化が妨げられ、風邪や感染症にかかりやすい傾向もあります*4。適切な睡眠は、朝目が覚めたときにしっかりと休まった感覚(休養感)があるかどうかで判断します。睡眠を妨げる要因、睡眠に関わる生活習慣や行動、環境を見直し、質の良い睡眠を取るために、以下の工夫を取り入れてみましょう*3*5。
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就寝前のカフェインやアルコールを控える
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寝る前にスマホやパソコンの画面を見ないようにする
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規則正しい時間に起きて朝の光を浴びる
適度な運動を継続的に行う
適度な運動は体のめぐりを促し、体温が上がることで、免疫力の維持につながります。激しい運動はバリア機能を一時的に低下させ、病原体の侵入を許してしまう可能性が考えられます。ウォーキングやストレッチ、軽いジョギングなど、無理のない範囲で継続的に行ってみてください*6。
ストレスを溜め込まない
ストレスを溜め過ぎると、免疫力の低下につながる可能性があります*7。ストレスを受けると「コルチゾール」と呼ばれるホルモンが過剰分泌されます。多過ぎるコルチゾールによって体の各器官での働きが調整できなくなるため、抵抗力が弱まると考えられています*7*8。
ストレスを軽減するためには、趣味を楽しむ時間やお風呂にゆっくりつかるなど、自分なりのリラックス方法を見つけて、心を休める時間をつくりましょう*9。
*3 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「知っているようで知らない睡眠のこと」
*4 全国健康保険協会「睡眠不足が及ぼす影響は?」
*5 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「快眠と生活習慣」
*6 医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター「Vol.49:免疫力アップのための生活習慣 これが間違い!免疫力を高めたいヒトへ」
*7 厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト 専門家コラム 「ストレスとは」
*8 公益社団法人 日本産婦人科医会「 2.ストレスホルモン」
*9 厚生労働省 「こころの健康 気づきのヒント集」p.8
免疫力を高める食事
腸内環境を整えることも免疫力を高める重要なポイントです。それは免疫細胞の約6〜7割は腸に存在すると言われているからです*6。ここでは、腸内環境を整え、免疫力を高める食事について3つのポイントを紹介します。
たんぱく質をしっかり取る
たんぱく質は、免疫細胞や抗体をつくる大切な栄養素です。たんぱく質が不足すると、免疫機能の維持が難しくなる可能性があります。肉や魚、たまご、大豆製品、乳製品をバランス良くとるようにしましょう*6。
腸内環境を整える食品を取り入れる
腸内環境を整えるためには、腸内の善玉菌を優勢にして、腸内細菌のより良いバランスを保つことが大切です*10。善玉菌を増やす食品として、以下のものがあげられます。
| 体内での働き | 含まれる食品 | |
|---|---|---|
| オリゴ糖 | 難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に届き、腸内細菌のエサとなって善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きが期待されています*11。 |
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| 発酵食品 | 乳酸菌や納豆菌といった善玉菌を多く含んでいます。腸内環境を整える重要な役割を担います*12。 | ヨーグルト、納豆、みそ、漬物など*13 |
| 食物繊維 | ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やし、腸内環境を良好に整える働きがあります*14。 | ごぼうやきのこ類、海藻類など*14*15 |
オリゴ糖は、炭水化物の最小単位である「単糖」が3~9個つながった構造の炭水化物です*16。特に、難消化性オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に届き、腸内細菌のエサとなって善玉菌を増やすことで、腸内環境を整える働きが期待されています*11。
難消化性オリゴ糖の一種であるフラクトオリゴ糖は、バナナや玉ねぎ、ごぼう、はちみつ、トマトなどの食品に含まれています。オリゴ糖を効率的に摂取するには、オリゴ糖製品の利用もおすすめです*11。
発酵食品は、乳酸菌や納豆菌に代表される善玉菌を含み、腸内環境を整えるサポートが期待できます。代表的なものにはヨーグルトや納豆、みそ、漬物などがあります*12*13。
食物繊維は、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を良好に整える役割を持っています。食物繊維が含まれるごぼうや海藻類、きのこ類などの積極的な摂取がおすすめです*14。
ビタミンをとる
ビタミンは、免疫細胞の働きをサポートする上で欠かせない栄養素です。特に、ビタミンAやC、D、Eは、免疫と深く関係するビタミンだと言われています*17。
| 体内での働き | 含まれる食品 | |
|---|---|---|
| ビタミンA | 抗酸化作用、粘膜の機能維持*18 | うなぎ、にんじん、ほうれん草、レバー、牛乳、たまごなど*15*18 |
| ビタミンC | 抗酸化作用*19、免疫細胞の産生・能力向上*20 | 赤ピーマン、キウイフルーツ、ブロッコリー、いちご、菜の花など*15*19 |
| ビタミンD | 大腸の炎症抑制に関与*21 | きのこ類、脂肪分の多い魚(マス、サケ、マグロ、サバ)、たまごなど*15*22 |
| ビタミンE | 抗酸化作用、細胞の保護、免疫細胞の機能維持*23 | 植物油、ナッツ類(アーモンド)、ほうれん草、ブロッコリーなど*15*23 |
免疫を正常に保つためには、それぞれの栄養素をバランス良くとることが重要です。これらの食材を組み合わせて、免疫力を高める食事を目指してみてください。
*10 公益財団法人腸内細菌学会「よくある質問 ヒトの腸内にはどのような微生物が棲んでいるのですか?」
*11 独立行政法人 農畜産業振興機構「プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで」
*12 農林水産省 和食育 栄養士が伝える・子育て世代向け「和食育」のすすめ
*13 農林水産省 にっぽんの発酵食品
*14 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「食物繊維の必要性と健康」
*15 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)」
*16 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.152
*17 阿部皓一. ビタミン類による感染防御免疫システム制御. 2021, 95巻4号, p.146-147
*18 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「ビタミンA」
*19 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「ビタミンC」
*20 曽根保子ほか. 免疫応答におけるビタミンCの生理学的役割. ビタミン. 2013, 87巻9号, p.527-529.
*21 岡田只士. 炎症性腸疾患に対するビタミンD摂取の意義. 日本ビタミン学会. 2024, 98巻1号. p.18-20.
*22 厚生労働省 eJIM 「ビタミンD」
*23 厚生労働省 eJIM 「ビタミンE」
まとめ
今回は、免疫力を高める生活習慣や食事のポイントについて紹介しました。質の良い睡眠や運動、食事に気を配ることで、免疫力の維持をサポートできる可能性があります。
特に、免疫力と腸内環境には深い関係があるとされています。腸内細菌のエサとなるオリゴ糖や、善玉菌を多く含む発酵食品、免疫細胞の働きを助けるたんぱく質、ビタミンを積極的に取り入れ、腸内環境を整えるようにしましょう。
免疫力を維持するための第一歩を、無理のない範囲で始めてみてください。
(参考文献閲覧日:2025年9月1日)
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