キムチの栄養と効能|効果的な食べ方と保存方法をプロが解説

キムチの栄養と効能|効果的な食べ方と保存方法をプロが解説

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韓国の伝統的な漬物であるキムチは、日本でも人気が高い食べ物です。「健康に良い」と言われることが多いキムチですが、その栄養成分や効能を正しく理解している人は少ないかもしれません。また、キムチの栄養成分を効率良く摂取する方法や、1日の適量について疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。

この記事では、キムチに含まれる栄養成分と効能、さらにその栄養成分を無駄なく摂取する方法や、1日に食べる量の目安などについて詳しく解説します。

この記事の執筆者
管理栄養士
いしもと めぐみ

病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して独立。栄養・健康分野の記事執筆のほか、栄養指導、食が楽しくなるレシピの発信などを行う。

目次
  1. キムチに含まれる栄養素と期待される効能
  2. キムチの栄養を効果的にとる食べ方
  3. キムチの食べ過ぎはNG!1日小皿1杯程度がおすすめ
  4. キムチの保存方法
  5. まとめ

キムチに含まれる栄養素と期待される効能

キムチにはさまざまな栄養成分が含まれており、健康への作用も期待できます。ここでは、キムチの主な栄養成分とその効能について解説します。

乳酸菌

キムチは、乳酸菌の働きによってつくられる発酵食品です。そのため、キムチには乳酸菌が多く含まれています。

乳酸菌とは、糖を分解して乳酸をつくる微生物の総称です。乳酸菌は人の腸内にも存在し、善玉菌として大腸菌など悪玉菌の繁殖を抑え、腸内細菌のバランスをとる役割を果たしています*1。食品から乳酸菌を摂取することで腸内環境が整い、便秘や下痢の症状が改善することが期待できます*2。

さらに、乳酸菌と食物繊維を同時に摂取できることも、キムチの魅力の1つです。キムチの材料である野菜の食物繊維には、便の量を増やすとともに、腸内細菌に利用されることで乳酸菌などの善玉菌の割合を増やし、腸内環境を良好に整える作用があります*3。つまり、乳酸菌と食物繊維の両方を含むキムチは、おなかの調子を効率良く整えるのに役立つ食品といえます。

カプサイシン

カプサイシンとは、唐辛子に含まれる辛味成分です。カプサイシンの摂取により、エネルギー消費量の増加が期待できます。

キムチを食べてカプサイシンによる辛味を感じると、感覚神経から中枢神経に信号が伝わり、アドレナリンの分泌が促されます。アドレナリンとは、運動器官への血液の供給量を増やしたり、呼吸を速くしたりする働きをもつホルモンです。そのため、アドレナリンの分泌量が増えることで、エネルギー代謝が促進すると考えられています*4。

また、褐色脂肪に作用し、エネルギー消費量を増やすこともカプサイシンの働きの1つです。脂肪には、白色脂肪と褐色脂肪の2種類があります。白色脂肪の役割は、中性脂肪を蓄積し、必要に応じてエネルギーとして供給することです。一方で、褐色脂肪は中性脂肪を利用して、エネルギーを消費しながら熱をつくり出します。カプサイシンには、この褐色脂肪を活性化させて、エネルギー消費量を増やす作用があることが分かっています*5。

したがって、キムチを摂取すると、カプサイシンの作用によってエネルギー消費が促進されるでしょう。

ビタミンB1、ビタミンB2

キムチの発酵の過程において、ビタミンB1やビタミンB2がつくられます*6。ビタミンB1やビタミンB2には、糖質や脂質の代謝をサポートする作用があります。

ビタミンB1は、炭水化物の最小単位である単糖の1つであるグルコースの代謝に重要な役割を果たす栄養素です*7。また、ビタミンB2は脂質の代謝に関わります*7。グルコースや脂質が代謝されるとエネルギーが生み出されることから、ビタミンB1とビタミンB2はエネルギーを効率的につくり出すために欠かせない栄養素といえます。

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*1 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「乳酸菌」
*2 公益財団法人腸内細菌学会「用語集 プロバイオティクス」
*3 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「食物繊維の必要性と健康」
*4 中村宜督「食品でひく 機能性成分の事典」女子栄養大学出版部, 2022, p.329
*5 斉藤昌之. 褐色脂肪組織でのエネルギー消費と食品成分による活性化. 化学と生物. 2012, Vol.50, No.1, p.23-29
*6 全鎮植, 鄭大聲「朝鮮料理全集3 キムチと保存食」柴田書店, 1985, p.12
*7 厚生労働省「『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書」

キムチの栄養を効果的にとる食べ方

せっかくキムチを食べるのであれば、含まれる栄養成分を無駄なくとりたいものです。そこで、キムチの栄養成分を十分にいかす食べ方を紹介します。

加熱せずに食べる

キムチを加熱せずにそのまま食べると、乳酸菌を生きた状態で摂取できるため、整腸作用がより期待できます。漬物に含まれる乳酸菌は、76.5℃で死滅すると考えられています*8。そのため、乳酸菌を生きた状態で体に取り入れるなら、加熱せずに食べるのがおすすめです。

ただし、死滅した乳酸菌にも、免疫機能を活発にしたり、コレステロール値を低下させたりする作用があることが分かっています*9。製造されてから時間がたち、酸味が強くなったキムチは、炒めると美味しく食べられます。加熱調理すると乳酸菌は死滅しますが、健康への作用は期待できるため、酸っぱいキムチも最大限に活用しましょう。

キムチの汁も一緒にとる

キムチは汁も一緒に食べることで、栄養成分を余す所なく摂取できます。キムチの発酵過程でつくられるビタミンB1やビタミンB2は、水に溶けやすい性質をもつ栄養素です*10。また、キムチの乳酸菌は汁にも多く含まれていると考えられます。そのため、キムチの汁もとることで、汁に溶け出た栄養成分まで無駄なく取り込めます。

漬物には、洗ったり水気を絞ったりしてから食べるものもありますが、キムチはできるだけ汁ごと摂取しましょう。

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発酵食品であるキムチは、植物性乳酸菌と食物繊維を含むため、腸活にはおすすめの食材です。この記事ではキムチが腸活に良い理由と効果的に摂取する方法を詳しく解説し、キムチと相性のいいもち麦を使った腸活レシピを紹介します。

*8 新潟県 農林水産部 経営普及課「【農業技術・経営情報】6次産業化(加工):漬物の保存性向上に向けた微生物制御について」
*9 上西寛司ほか. 乳酸菌の生理機能とその要因. 日本調理科学会誌. 2013, 第46巻 第2号, p.129-133
*10 一般社団法人 日本健康倶楽部「健康用語辞典 水溶性ビタミン」

キムチの食べ過ぎはNG!1日小皿1杯程度がおすすめ

キムチは健康への作用が期待できる食品ですが、食べ過ぎはかえって健康を損なうおそれがあります。そのため、1日に食べる量は小皿1杯程度までにしましょう。

キムチを食べ過ぎると、塩分による影響が懸念されます。通常、必要以上に摂取した塩分は排泄されるため、すぐに体調をくずすことはありません。しかし、過剰な状態が続くと、排泄しきれなかった塩分が体内に蓄積され、むくみや高血圧を引き起こしやすくなります。さらに、胃がんや脳卒中のリスクが高まることも分かっています*11。

また、カプサイシンにも注意が必要です。カプサイシンを過剰摂取すると、排尿障害や胃食道逆流症が起こる可能性があります。加えて、カプサイシンに対する感受性には個人差があり、人によっては粘膜の炎症や嘔吐、高血圧の症状が現れる場合があります*12。

このようなリスクを避けるため、キムチは適量の摂取を心がけてください。

*11 上西一弘「栄養素の通になる 第5版」女子栄養大学出版部, 2022, p.164-165
*12 農林水産省「カプサイシンに関する詳細情報」

キムチの保存方法

キムチは冷蔵庫で保存し、酸味が強いキムチが苦手な人は早めに食べ切りましょう。

キムチは製造から時間がたつと、酢酸をつくり出す酢酸菌が活発になり、酸味が強くなります。さらに時間が経過すれば、かびや雑菌が増殖して腐敗します*13。これらの細菌の活性を抑えるためには、キムチを低温で保存することが大切です。

なお、キムチの塩分濃度が1〜2%の場合、キムチを5℃前後で保存すると、酢酸菌が活発になる前の美味しい時期を長く保てると考えられています*13。キムチは冷蔵保存して、美味しさをキープしましょう。

*13 鄭大聲. キムチの調理科学. 調理科学. 1994, 27巻4号, p.56-61

まとめ

キムチは、乳酸菌やカプサイシン、ビタミンB1、ビタミンB2などの栄養成分を含む発酵食品です。これらの成分により、整腸作用やエネルギー消費の促進、代謝の向上などの健康に嬉しい作用が期待できます。さらに、食べ方を工夫すると、キムチの栄養成分をより効率良く摂取できます。キムチを毎日の食事へ上手に取り入れて、健康管理に役立ててください。

(参考文献閲覧日:2025年4月5日)

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