にんにくの栄養と効能|おすすめの食べ方をプロが解説

にんにくの栄養と効能|おすすめの食べ方をプロが解説

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にんにくは健康に対する効果も注目されていますが、にんにくのパワーをしっかりと引き出すには、食べ方や調理法がポイントとなります。

本記事では、にんにくの主な栄養素とその効能、調理方法による栄養価の違い、適量やおすすめの食べ方について詳しく解説します。にんにくを食べて健康に役立てたい人は、ぜひ参考にしてください。

この記事の執筆者
管理栄養士
津端 奈緒美

大学の食物栄養学科を卒業後、管理栄養士として給食委託会社に勤務。その後病院に勤務しながら大学院に通い家政学を専攻。現在は大学で医学博士課程に在学中。栄養改善学会や公衆衛生学会などで発表、論文執筆も経験。栄養指導は1,000件以上で、ライターとして執筆するなど幅広く活動している。

目次
  1. にんにくの栄養素と期待される効能
  2. にんにくは生・加熱・冷凍では栄養素に違いが出る?
  3. にんにくの食べ過ぎはNG!1日1~3粒を目安に
  4. にんにくのおすすめの食べ方
  5. まとめ

にんにくの栄養素と期待される効能

にんにくには、健康に嬉しい栄養素がたくさん含まれています。ここではにんにくの栄養素と期待できる効能を紹介します。

オリゴ糖

オリゴ糖のうち難消化性オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌を増やすことで腸内環境を整えて便通をサポートし、腸活に役立ちます*1。さらに、ラットでの実験結果から、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化予防に役立つことも期待されています*2。

ビタミンB1

にんにくには、体内で糖の代謝をサポートするビタミンB1が含まれています*3。偏った食事やアルコールを良く飲む人では、ビタミンB1が不足する可能性があります*4*5。

ビタミンB6

ビタミンB6は体内で多くの酵素の働きをサポートし、特にたんぱく質の代謝に欠かせない栄養素です*6。さらに、神経伝達物質の合成を助けるほか、免疫機能のサポート、血液中のヘモグロビンの生成にも関与し、成長や健康維持に欠かせない栄養素です*6。

アリシン

アリシンは、にんにくを切ったりつぶしたりした時に特有のにおいや味のもととなる成分です*7。アリシンには抗酸化作用があり、抗菌やがん細胞の増殖を阻害、悪玉コレステロール低下、血圧低下作用など健康増進に役立つことが期待されています*8。

葉酸

葉酸は赤血球の形成やDNAの合成、アミノ酸の代謝に関わっており、性別や年齢を問わず健康維持のために必要な栄養素です。特に妊娠中の人は葉酸を十分に摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを減らすことができます*9。

*1 光岡知足. プレバイオティクスと腸内フローラ. 腸内細菌学雑誌. 2002, 16巻1号, p.1-10
*2 栗島秀行ほか. 果糖誘導性ラット高脂血症に対する発酵オリゴ酢の影響. 昭医会誌. 1994, 第54巻第4・5号, p.255-261
*3 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・ 第2章(データ)にんにく りん茎 生」
*4 水谷雅臣ほか. ビタミンB1. 日本静脈経腸栄養学会. 2019, 1(2), p.104-107
*5 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「ビタミンB1」
*6 厚生労働省 『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 eJIM「ビタミンB6」
*7 Ellmore GS et al., Alliin Lyase Localization in Bundle Sheaths of the Garlic Clove (Allium sativum). American Journal of Botany. 1994, 81, p.89-94.
*8 Jan Borlinghaus et al., Allicin: Chemistry and Biological Properties. Molecules. 2014, 19(8), p.12591-12618.
*9 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」

にんにくは生・加熱・冷凍では栄養素に違いが出る?

にんにくは、調理方法や食べ方によって栄養素や期待できる効果も変化します。ここでは、どのように変化するのかを生・加熱・冷凍に分けて解説します。

生で食べる場合

にんにくに含まれるアリインという成分は、切ったりつぶしたりすることで酵素(アリナーゼ)の働きによりアリシンに変化します。アリシンは強い抗菌作用や抗酸化作用があることが知られており、生で食べることで免疫力のサポートや健康効果が期待されます*8。

加熱して食べる場合

にんにくを加熱すると、アリシンが分解されてジアリルジスルフィドなどのスルフィド類に変化し、さまざまな作用をもたらすとされています*10。

また、ホイル焼きなどにんにくを傷つけず丸ごと加熱する場合、加熱により酵素であるアリナーゼの働きがなくなり、アリインがアリシンに変化せずにんにく特有の香りが和らぐため食べやすくなります*11。

アリシンは加熱により一部分解されてしまいますが、すべてが失われるわけではなく、むしろ油と一緒に調理すれば油の膜がアリシンの酸化を防いでくれます*12。加熱してもアリシンをしっかり取り入れたい人は、油と一緒に調理するのが良いでしょう。

冷凍保存の場合

冷凍で風味が落ちる可能性があります。例として、玉ねぎを凍結解凍すると、細胞膜が水を通しやすくなり、食感の悪さにつながることが示唆されています*13。また、栄養価はほとんど変わりませんが、ビタミンなどの栄養素が減少してしまう可能性があります*13。

冷凍方法については、にんにくを皮付きのまま冷凍すると中身の乾燥を防げます。一方で、切ったりすりおろしたりなど、下処理してから冷凍保存すると調理の際に手間が少なくなり便利です。冷凍する場合は長くても3週間が目安となるので、保存期間には注意しましょう*14。

にんにくは生・加熱・冷凍によって栄養価が多少変化するため、保存や調理法を選ぶ際の参考にしてください。

*10 日本薬学会「環境・衛生薬学トピックス ニンニクと健康」
*11 細野崇ほか. スルフィド類の多彩な生理機能とその分子メカニズム. 化学と生物. 2022, vol. 60, No. 7, p.317-318
*12 久保田紀久枝. "におい"で知る食品の機能性. 日本栄養・食糧学会誌. 2000, 第53巻第4号, p.163-167
*13 農林水産省 令和6年度 「野菜の日」Web シンポジウム「冷凍野菜のサイエンス」
*14 農林水産省「簡単な「冷凍ワザ」で、野菜を新鮮に!おいしく! 」

にんにくの食べ過ぎはNG!1日1~3粒を目安に

にんにくは胃腸への刺激が強いため、食べ過ぎると胃が焼けるような灼熱感や痛み、下痢、体臭を引き起こす可能性があり注意が必要です*15。

にんにくの1日の適量は明確には決まっていませんが、生なら5~7g(1片程度)、加熱なら10~15g(2片程度)が1日の目安となります*16。個人の消化機能にもよるため、多くても3粒程度に留めておきましょう*17。

また、お腹が空いている時に生のにんにくを食べるのは、胃粘膜への刺激が強過ぎるため控えた方が良いでしょう。胃腸への刺激が気になるという人は、生よりも加熱したものを少しずつ食べるのがおすすめです*16。

*15 Harunobu Amagase. Clarifying the real bioactive constituents of garlic. The Journal of Nutrition. 2006, Volume 136, Issue 3, p.716S-725S
*16 神戸保. ニンニク. 生活衛生. 1984, 28巻1号, p.51
*17 農林水産省 東北農政局「にんにく」

にんにくのおすすめの食べ方

にんにくの栄養をしっかりとれるおすすめの食べ方や、日常に取り入れやすい食べ方を紹介します。

にんにくの効果を期待するなら生で

抗酸化作用など健康効果の期待できるにんにくのアリシンは熱に弱いため、アリシンをしっかりとりたい場合は、すりおろしたり刻んだりした生にんにくがおすすめです。すりおろすことや刻むことでアリインがアリシンに変化しますが、アリシンは分解しやすいため直前に調理すると良いでしょう*7。

おろしや刻みにんにくは、ディップやドレッシングに混ぜる、カルパッチョやお刺身につけるなど、食事にも手軽に取り入れることができます。

疲労回復にはビタミンB1を含む食品と組み合わせる

ビタミンB1は豚肉や玄米などに含まれ、疲労回復に役立つ栄養素です*4*5。にんにくに含まれるアリシンはビタミンB1の吸収を助ける働きがあり*16、疲れが気になる時や、スタミナをつけたい時にぴったりな組み合わせです。

豚肉のにんにく炒めや玄米チャーハンなど、普段の食事ににんにくを取り入れてみてはいかがでしょうか。

においが気になるなら乳製品と組み合わせる

にんにくを食べると口臭が気になるという人におすすめなのが、乳製品と一緒に食べることです。乳製品に含まれるカゼインがにんにくのにおい成分と結びつき、気になるにんにく臭を抑えることが示唆されています*18。

牛乳を使ったクリームパスタやクリーム煮、チーズ焼きなど、手軽につくることができるレシピもたくさんあります。

*18 山下純隆. 豆乳と牛乳のジスルフィドに対する消臭効果. 福岡県農業総合試験場研究報告29. 2010, p.10-12

まとめ

この記事ではにんにくの栄養素や期待できる効能、おすすめの食べ方について紹介しました。にんにくには腸活や免疫力のサポートなどさまざまな効果が期待でき、調理法によって栄養素も多少変化します。にんにくを日々の食事に上手に取り入れる際の参考にしてください。

(参考文献閲覧日:2025年3月3日)

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