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二宮清純の「ザバス取材記」

10キロの減量を乗り越えて ボクシング 井上尚弥・拓真選手、真吾トレーナー

リング上の相手の他にも敵がいた。それは自らの体重だった。

2014年9月5日、ボクシングのWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ。王者の井上尚弥選手はタイの挑戦者を11R1分8秒TKOで下し、初防衛に成功した。挑戦者を終始、圧倒した21歳の怪物にとって、むしろ厳しかったのは試合前の減量だったかもしれない。落とさなくてはならない体重は約10キロ。過酷な減量を克服し、勝利をつかんだ背景には明治ザバスの栄養指導があった。担当した管理栄養士・村野あずささんとともに大橋ボクシングジムを訪ね、井上尚弥選手、弟の拓真選手、父の真吾トレーナーに試合までの取り組みを明かしてもらった。

減量苦が起こしたアクシデント

初防衛戦から遡ること5カ月前、尚弥選手はメキシコの王者を6RTKOで倒し、わずかプロ6戦目にして世界のベルトを腰に巻いた。これは日本人ボクサーでの最速記録だった。だが、快挙の裏で、そのカラダには異変が生じていた。

「足が死にそう……」
3Rを終え、尚弥選手はコーナーに戻るとセコンドの真吾トレーナーにそう漏らした。左太もも裏がつるアクシデントが発生していたのだ。

これは大幅な減量が影響していた。普段、尚弥選手の体重は58キロ。ライトフライ級のリミットは48.9キロで、約10キロも体重減を余儀なくされた。体脂肪率は通常時から10%程度で、絞れる部分はほとんどない。極度の食事制限、水分カットを強いられたあげく、試合の3週間前にはインフルエンザにかかり、調整にも遅れが生じた。計量3日前からは、ほぼ飲まず食わず。所属ジムの大橋秀行会長が「今までいろんなボクサーの減量を見てきたが、一番苦しそうだった」と心配するほどだった。

ザバスが井上選手の栄養サポートを開始したのは、初防衛戦を2カ月前に控えた7月。ザバスはこれまで柔道の日本代表選手や、ボクシングの長谷川穂積選手など減量が必要な競技のアスリートをサポートした実績がある。長谷川選手もWBC世界バンタム級王座を10度にわたって防衛していた時期は10キロ以上に及ぶ減量を行っていた。長谷川選手の担当でもある村野さんは、その経験も踏まえ、尚弥選手、拓真選手、真吾トレーナーからヒアリングをし、食事と栄養面のリサーチを実施した。

その結果、尚弥選手はミネラル、ビタミンなどが不足し、栄養バランスに偏りがあることがわかった。また食生活も、朝昼は兼用で1度に済ませることが多く、夕食にはご飯などの炭水化物を摂っていないといった改善点が判明した。「親子丼とか鰻丼とか、一品もので済ませることが多かった」と本人も振り返る。

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