ATHLETE INTERVIEW

アスリートインタビュー

VOL.01

ラグビー日本代表

姫野和樹

世界最高峰の舞台で
戦い抜くために

UPDATE

2019年秋に日本で開催された世界大会において史上初のベスト8進出を果たし、空前のラグビーフィーバーを巻き起こしたラグビー日本代表。その主軸として際立つパフォーマンスを発揮したのが、フランカー/ナンバー8の姫野和樹選手だ。187cm、108kgの屈強な肉体を武器に、相手と激しくぶつかり合う場面がもっとも多いポジションで海外の一流選手と互角以上に渡り合ったそのプレーぶりは、日本人アスリートの新たな可能性を感じさせるものだった。

現在25歳。すでに国際級の実力を有しているのに、プレーヤーとしてピークを迎えるのはこれからだ。ここでは、2017年の秋より日本代表と姫野選手を栄養面からサポートしてきた株式会社 明治の村野あずさ管理栄養士とともに、この2年間の歩みと、今後に向けての意気込みを語ってもらった。

「好きなものを食べるのが一番!」だった2年前

2019年の日本代表の活動が終わり、はや2か月が経ちました。その間はどのように過ごされたのでしょう。

姫野

10月20日に解散したあと、11月25日まで1ヶ月ちょっとお休みをいただきました。リフレッシュできて、今は1月12日に開幕するトップリーグに向けてカラダをつくっているところです。

株式会社 明治のプロテインブランド「ザバス」はラグビー日本代表チームのオフィシャルサプライヤーですが、明治の村野管理栄養士が代表チームに定期的に帯同し、栄養サポートに携わるようになったのが、2017年の秋から。
同じタイミングでこの時から姫野選手が代表メンバーに選出されました。今振り返って、当時の姫野選手のコンディショニングに対する意識はいかがでしたか。

姫野

正直、何も考えていませんでしたね(笑)。「好きなものを食べればいい」という感じで。

村野

代表チームの介入を始めた当初、S&Cコーチ(ストレングス&コンディショニングコーチ)から個別に栄養指導が必要な選手としてピックアップされたメンバーの中に姫野選手は入っていなかったので、サポート当初はそこまで意識をしていなかったのですが、合宿を重ねる中で色々課題が見えてきました。例えば、ハードトレーニングを課せられたキャンプ時、練習開始前のギリギリのタイミングで朝食会場に降りてきて、食べる内容もサラダとヨーグルトとスムージーのみ。1日の始まりの大事な朝食時に、エネルギー源となる炭水化物やカラダづくりの材料になるたんぱく質がほとんど摂れていなかった。

これだけ大きく強い選手なのに、栄養に関する意識は低かった。

村野

十分なエネルギー源やたんぱく質源が不足した状態で練習すれば身を削ることになるし、集中力も散漫になり、疲労やケガにつながりやすい。「あと30分早く起きて食堂に来てしっかり食べるように」と食の大切さを何度も説きましたが…私が何か言っても、笑ってかわされることが多かった。

姫野

その頃は、「違いますよ、好きなものを食べるのが一番の栄養源なんです!」とか、メチャクチャなことを言っていましたね(笑)。

村野

それでも姫野選手には、何度もタイミングを見ながら食事や栄養について考えるように促していきました。

姫野

今でも基本的には、好きなものを食べるのが一番だと思っています。ただ、その中でいかに必要な栄養を摂るか、ということを考えるようになりました。

姫野選手は高校時代からカラダの強さで知られる選手でしたが、大学時代はケガが多く、なかなか力を発揮できない時期もありました。

姫野

大学時代は、自分のカラダにあまり関心を持てていませんでした。栄養面もそうですし、痛い部分があっても隠してプレーしていた。今はリカバリーをすごく大事にしていますし、張っている部分を重点的にケアしたり、自分の弱いところを意識してトレーニングしたりするようになりました。そうやって自分のカラダに関心を持つようになってからは、ケガが減ったと感じます。

栄養面の取り組みで、
明らかに数値が向上した

サポートするにあたり、村野さんはどこから改善していったのでしょうか。

村野

基本的なところですが最初は朝ごはんをバランス良くしっかり食べる、からですね。

姫野

最初は「僕、太りやすいから(ご飯を食べるのが)イヤなんです」とか言っていました(笑)。

村野

プロテインもはじめは「太りやすいんで」と言って飲もうとしなかったり。でも、日本代表チームのハードトレーニングをこなすには、日々のコンディション維持やケガの予防も含め練習直後のリカバリーが何よりも大切になる。さらには世界の強豪相手に当たり負けしないカラダづくりを目指し、パワーだけでなくキレとスピードも追及していきたいという姫野選手にとって、食事での栄養改善とあわせてプロテイン摂取などで栄養強化していくことはマストでした。そこでプロテインについても、課題や目的、味の好みなど随時ヒアリングしながらより良いものを提案し、継続的な摂取をしていけるように促していきました。

姫野

プロテイン、おいしいやつしか飲んでいませんでしたから。

村野

おそらく、当初は私に対する信頼もなかったのだと思います。でも姫野選手は日本代表の中でもフル出場することが多いですし、日本代表の主力として代表を背負っていく存在なので、コンディションを崩したりケガをされたらチームにとって大きな痛手になる。ですから、ちゃんとエネルギー補給やリカバリーができていない様子を見るとすごく不安でした。栄養指導が必要な選手に対して個別のフォローをする際に、選手に食事の写真を撮って送ってもらいやり取りすることが多いのですが、姫野選手は「僕はそうやって管理されるのが好きじゃないんです!」と最初は言っていましたね(笑)。別に管理するつもりはないから、聞きたいことがあればなんでも聞いて、という感じで少しずつコミュニケーションをとっていきました。今では写真も抵抗なく送ってくれます。

信頼関係ができてきたのは、いつごろだったのでしょう。

村野

大事な位置づけだった2018年9月の和歌山合宿に、姫野選手はケガで参加できなかったんです。その時、「今こそ栄養強化が大事な時だから食事をがんばろう」とメッセージを送ったのですが、その後の10月の合宿から、少しずつ気にするようになってきたかな…と感じていました。食べ方や栄養の話をするだけでなく、世界で活躍するトップアスリートの意識の高さや取り組みを伝えるなど、色々な角度からアプローチしていきました。

姫野

あの時期は、ひとつのきっかけだったかもしれません。

栄養面の取り組みを変えることで、何かが変わったと実感することはありましたか。

姫野

やっぱり数値として結果が出るのが、一番説得力がありました。体重は増えたのにスキンフォールド(皮下脂肪を示す数値)が落ちていたり、ベンチプレスやスクワットの数字がメッチャ上がったり。

※参考:2018年8月=ベンチプレス150kg、スクワット180kg→2019年7月=ベンチプレス170kg、スクワット220kg。また同期間で体重が110.2kgから111kgに増えた一方、スキンフォールドは114から96に減少。

村野

「すごく走れるようになった」という話もしていましたね。

姫野

yo-yoテスト(持久力を測定する評価方法)の数値もかなり伸びました。たくさん食べているのにカラダの調子がメッチャいいな、という感覚があって、トレーニングと栄養の攻めと守りがうまくできているな、と。2019年に入ってから、特にそう感じていました。

村野

2019年は2月から代表合宿が始まったのですが、私が参加できなかった時に姫野選手から、「真剣にカラダづくりしたいので、食事を見てください」と連絡があったんです。

プロテインについても、「一番いいのを使いたいのでアドバイスをください」と本人から言ってきてくれて、すごくうれしかったですね。

姫野

どれが一番おいしいですか、って(笑)。2月のキャンプ開始の頃は少しカラダを絞りたい時期でもあったので、おすすめされたのは『ウェイトダウン』。あと、『ソイプロテイン』のミルクティー味はメッチャ好きです。

村野

ソイプロテインでだけでなく、6月の宮崎キャンプなどハードトレーニング期は、ホエイを原料とした『ホエイプロテイン100(リッチショコラ)』も使っていたし、朝食時、練習合間の補食や夜食に用意していた『クリアプロテインホエイ100』入りのマッスルスムージーもしっかり飲んでいたよね! また、姫野選手は自炊にも取り組んでいて、食事の写真を時々送ってきてくれたりしています。写真を見ながら改善点をアドバイスさせてもらっていますが、それも以前なら考えられなかったことですね。

姫野

最近、家の近所にメッチャおいしい定食屋を見つけて、魚が好きになりました。ブリの照り焼きとか、サワラ焼とか、すごくおいしいんです。小鉢もたくさんついていて。今度、その写真も送ります。

これからが一番伸びる期間。
さらに高い意識で取り組む

国際大会では、極めて強度の高い試合が一週おきに続きます。カラダが受けるダメージは相当大きかったのではないですか。

姫野

本当に想像以上で、特に南アフリカ戦は5試合目だったので満身創痍でした。疲れていたし、痛くないところがないくらい痛かった。もっともっと強くならなければ、と痛感しました。決勝まで戦うと考えたら7試合あるわけで、今後はカラダづくりの面でも、そこまで戦い抜けるタフネスを身につけなければならない。ただ、この2年間の準備がなければ、ここまで戦えなかったのも間違いありません。以前は60分くらいでけっこうバテていたのが、80分間最後まで走りきれるようになったり、タックルした後のドライブができるようになったり、カラダづくりのおかげだと感じることがたくさんありました。

この経験をふまえた上で、今後さらに改善できる部分、向上させていきたい部分は。

村野

細かいところを言えば、改善点はまだまだあります。その時々の状況や課題を見ながら、さらによくなるようアドバイスできればと考えています。逆に考えれば、まだ伸びしろがたくさんある。

姫野

4年後は29歳で、選手として一番脂が乗る時期です。これからの4年間はラグビー選手として一番伸びる期間だと思うので、そこをどう過ごすかがすごく大事になってくる。今年も高い意識でカラダづくりに取り組みましたが、また4年後に向けて、村野さんにサポートしてもらいながら、しっかりカラダづくりをしていきたいと思っています。

最後に、今回の日本代表はラグビー界だけでなく、日本のスポーツ界全体に大きなインパクトを与えました。姫野選手は、ご自身の変化をどう感じていますか。

姫野

自信、ですね。今までは、海外の選手と試合をすることで「自信がついた」と言っていた自分がいて、それに何の疑問も持っていませんでした。でも今あらためて考えると、「海外の選手とやって自信がついた」と言っている時点で、メンタル的に負けている。今回、世界最高峰の大会を経験して、海外のトップ選手たちとも同じ土俵にいるんだということを肌で感じられたし、「次はあの選手たちをどうやって倒すか」と考えられるようになったのは、大きな変化だと思います。僕たちの試合を見て、高校や大学でプレーしている日本の未来を支えていく選手たちもそう思ってもらえればすごくうれしいですし、僕だけじゃなく日本代表の全員がそう思っています。「俺たちは強いんだ」という自信を持てたことは、自分にとっても日本代表にとってもすごく大きいことでした。そして、だからこそ、次は優勝という目標を掲げて、それに向かってさらに努力していかなければならないと思っています。