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栄養サポートの現場から

栄養サポートの現場から

  • 大八木 弘明 監督
  • 藤田 敦史 ヘッドコーチ
駒澤大学陸上競技部 大八木 弘明 監督 駒澤大学陸上競技部 大八木 弘明 監督

駒澤大学陸上競技部 大八木 弘明 監督駒澤大学陸上競技部 大八木 弘明 監督

1958年福島県生まれ。福島県立会津工業高校卒業後、小森コーポレーションに就職。しかし、箱根駅伝出場という夢を諦めきれず、川崎市役所に勤めつつ24歳のときに一念発起し駒澤大学経済学部2部(夜間部)に入学。箱根駅伝には3回の出場を果たした。大学卒業後、実業団のヤクルトを経て、1995年4月、母校である駒澤大学陸上競技部のコーチに就任。2004年監督に。数多くの名ランナーを育てる。箱根駅伝においては総合優勝6回(内、往路・復路完全制覇2回)、全日本大学駅伝12回優勝、出雲駅伝3回優勝。

駒澤大学陸上競技部 大八木弘明監督&藤田敦史ヘッドコーチに聞く! 指導理念とコンディショニングの重要性駒澤大学陸上競技部 大八木弘明監督&藤田敦史ヘッドコーチに聞く! 指導理念とコンディショニングの重要性

取材協力/株式会社明治
聞き手/本誌広報スタッフ
写真/水上俊介

2018年箱根駅伝ではまさかの12位に沈んでしまった古豪・駒澤大学。9年ぶりの予選会は、悔しさをバネに地道な努力を積み重ねた結果、駒澤大学は他校を寄せ付けない圧倒的な強さで本戦へと駒を進めることになる。そして2019年本線で復活の兆しを見せての4位。4年間をかけ選手の成長を育成する、大八木弘明監督と藤田敦史ヘッドコーチに、指導理念やコンディショニングなどについてお聞きした。

指導の根幹は人間形成

大八木監督が駒澤大学陸上競技部のコーチに就任されたのが、1995(平成7)年。今年(平成30)で25年目となりました。この間、様々な実績を積み重ねてこられたわけですが、選手指導において心がけていらっしゃるのはどういったことでしょうか?

大八木大学生というのは、半分子どもで半分大人になりかけている、いわゆる心身共に成長の過渡期にあります。そういう意味では、1年生と4年生とでは、心身両面において雲泥の差があるといっても過言ではありません。そういった発展途上にある点を考慮しながら彼らをどのようにして導いていくか、ということでしょうか。だからこそ、指導者は非常に重要な役割を担っていると思います。

とはいえ大学陸上界屈指の名門チームです。やはり高い志を抱いて入部してくる選手が多いのではないですか?

大八木そうですね。選手はそれぞれ大望を抱いて大学に入ってきています。だから我々指導陣は、その願いをいかにして叶えてあげることができるか、ということはもちろんですが、それ以上に重要だと考えているのはやはり個々の人間形成。大学4年間のなかでいかにして人間的に成長させてあげることができるかだと思っています。

そのために指導者に求められることは何でしょうか?

大八木選手自身に奮起を促すこと。ただし、人には得手・不得手、あるいは関心・無関心、好き嫌いがあります。好きなことであれば、あえて奮起を促す必要などないかもしれませんが、そうでないことには消極的になりがち。でも、苦手なこと、あるいは不得手なことであっても取り組まなければ、本当の意味での強さというのはなかなか身につかないものです。

昨夏の厳しいトレーニングを経て、2019年の本戦では4位入賞を果たした

選手に気づきを与え、
さらにやる気にさせることが
我々指導者に求められる
最大の役割だと思います。

それが先ほどおっしゃった人間形成の道にも通じる部分なのでしょうね。また、たとえ選手自身が苦手と感じていることであっても、指導者から見ると、むしろ適応しているのではないかと感じる部分もある、と。その見極めが大事であるということですね。

大八木そうですね。不得手と思っていたことに取り組んでみると、結構いけるんじゃないかという本人の気づきもあったりする(笑)。 “食わず嫌い”では競技力向上はもちろん、人間的な成長もなかなか期待できないものです。そういう意味で、選手に気づきを与え、さらにやる気にさせることが我々指導者に求められる最大の役割といえるかもしれませんね。

それこそが選手個々の潜在能力を引き出す原動力になっているというわけですね。

大八木選手は自分本来の持ち味に気づいていないこともあります。なぜなら、高校時代までは指導者の指示に委ねられるところが比較的多く、どちらかといえばや他動的な側面が多いから。ところが大学に入ってくると、指示待ちではダメ。自らの持ち味を知った上で主体的に行動していく力を身につけてこそ意義がある。だからこそ、我々は、一人一人の個性を正確に見極め、正しい方向に導いてあげることが大事であるというわけです。

一人一人の個性をすべて掌握

部員の方々は全員寮生活だとお聞きしました。大学における寮生活の意義について教えていただけますか?

大八木やはり共同生活を体験することによって、忍耐力や信頼関係、あるいは感謝や献身といった心の醸成をしていくというのでしょうか。そこにもやはり根底にあるのは人間形成。いわゆる人間力を磨いていくためには、そういった環境に身を置いてこそ、という思いがあります。それによって、駅伝競技における“チーム愛”というものも同時に育んでいくことができれば、と。ちなみに、二人一部屋ですが、基本的に上級生と下級生とが一緒に生活しており、その部屋割りはすべて私が決めています。

えっ、監督がご自身で、ですか?

大八木はい。性格や体質など総合的に判断した上で。例えば、夜中にいびきをかく子に対しては神経質な性格の選手は決して一緒にしないとか(笑)。睡眠は、アスリートにとってコンディショニングに関わる重要なテーマの一つでもありますからね。

選手一人一人の性格から体質まですべて把握されているという意味では、まるで家族のような関係を構築されていらっしゃるというわけですね。だからこそ、より緻密な指導法や采配が可能である、と。

大八木人は各々異なる個性を備えているわけですからね。したがって、たとえ大人数であっても、それを雑然とひとまとめにするなんていう指導では、そこに選手との信頼関係は生まれないもの。そういう意味でも、我々はそれぞれの個性を見極め、その個性に応じた指導を心がけなければならないと思っています。ただ、その一方で今の選手たちに感じることは、これまでに卒業していった選手に比べると、若干我慢強さに欠けているのではないかという点。さらに、体力的な面も少しずつ低下しているのかな、と感じています。断言はできないけれども、なんとなく違和感を覚えるのです。やはり、これも生活環境の変化によるものでしょうか。

これまで数多くの名選手を育てられてこられた大八木監督の指導者としての嗅覚がそう感じさせる、と。

大八木25年前、私がコーチになった頃というのは、それこそ自分のやっていることは決して間違いないと、情熱をむき出しに無我夢中で取り組んでいたものです。ところが、最近、ふと我に返るときがある。選手とはもう親子以上の年齢差になり、物事を様々な角度から俯瞰して見守ることができるようになったからでしょうか(笑)。やはり、以前と同じような指導法では、今の選手たちはなかなかついてこられないのではないかという思いもあります。だからこそ、これまで以上にしっかりとコミュニケーションをとりながら、私のほうも我慢強く取り組んでいかなければならない、と考えているところです。

選手との年齢差が親子ほどになってくると、それはそれでまた新たな悩みも増えてくるということですね。

大八木観察力や洞察力、そして判断力など、指導者に求められることはたくさんあります。しかも、それらの能力を総合的にバランスよく培っておくことが大事。いい換えれば、指導者には指導者としての感性が求められるというわけです。そのためには、監督は常に現場においてそれを磨き続ける必要がある、と。加えて、指導というのは「あとでいえばいいだろう」は絶対にダメ。気づいたときには、その場ですぐに伝えてこそ価値がある。そういう意味では、指導者も現場においては、常に緊張感をもって臨む必要があるのではないでしょうか。

まさに“常在戦場”というわけですね。

大八木冒頭で述べたように、選手はそれぞれ大望や夢を抱いてここにやってきます。果たして、卒業時にその夢はどのくらい達成できたかどうか。私はできる限り、選手たち一人一人がその夢を具現化できた、あるいはその夢に近づけたと思えるような形で卒業させてやりたい。もちろん、夢というのは大学時代だけで完結するわけではありません。実業団を目指す選手にとっては、さらに夢の続きがある。そういう意味では、大学4年間はあくまでも通過点といえるでしょう。しかし、自らの将来を見極める上においては、非常に重要な通過点であることには間違いありません。

ベストコンディションの追求

カラダづくりにおけるマネジメントで、選手に求めていらっしゃることは何ですか?

大八木身長と体重のバランスです。「この身長に対しては、このくらいの体重まで絞りなさい」と、私から指示を出します。例えば、身長170㎝であれば、54~56㎏という3㎏の幅を一つの目安とし、さらに自己ベストを出したときの体重をデータから見極め、それを維持するように、と。選手は全員トレーニング日誌をつけており、その日の体重はもちろん、走行距離や脈拍なども細かく自己管理しているので、ベスト体重というのは各人がしっかり把握しています。

体脂肪に関してはいかがでしょうか?

大八木私の場合は、体脂肪よりもむしろ体重の数値のほうに重きを置いています。体脂肪が増えれば、体重も必然的に増えるわけですからね。結果的には同じこと。選手のカラダを見れば、3㎏の振り幅やコンディションの成否もだいたいわかるものです。また、その観点からいえば、ハーフやフル(マラソン)などの長い距離を走る場合には、体重をベストから1~2㎏増やして臨ませるように指導しています。ハーフ以上の距離を走る場合、ベストの状態にカラダを絞ったまま走らせると、後半にエネルギー切れを起こして突如として動きが悪くなるケースが多いので。やはり、トラックの場合とは、コンディショニングづくりにも工夫を要します。

選手に求めていることは
「身長と体重のバランス」。
自己ベストを出したときの体重を
データから見極め、
それを維持するように、と。

毎年、明治による体組成測定を実施。体脂肪、筋肉量の把握はパフォーマンスに欠かせない要素

そういったコンディショニング管理において、サプリメントはどのように活用されているのでしょうか?

大八木まず走る前にはアミノ酸のスーパーヴァームを摂取するのが長年の習慣です。そして、練習後はリカバリーのためにプロテインを摂らせています。選手の多くがアクアホエイプロテイン100とリカバリープロテインの2種類を活用していますね。普段の食事でもたんぱく質は意識していますが、なかなか必要量を摂り続けるのは難しい。そして、たんぱく質を含む食事は脂質の量も気になります。だから中長距離選手にとっては、低脂肪のプロテインを食事にプラスすることは有効な手段と考えていますね。

練習前にはスーパーヴァームを、練習後にはザバスのプロテインを摂取するのが駒澤大陸上競技部の習慣となっている

選手の方々のコンディションはいかがですか?

大八木以前は貧血になってしまう選手が多く、それが悩みの種でもあったのですが、プロテインを飲み始めて、長い距離もしっかりと走れるようになり、心配していた貧血という課題もここに来て次第にクリアできるようになってきました。

大八木監督は、選手一人一人の性格から体質まですべて把握しているという

大学時代はあくまでも通過点。されど、重要な通過点でもある

では最後に、これからの目標についてお聞かせください。

大八木当然、箱根駅伝の優勝は目指していますが、同時に、選手一人一人の成績をもう少し底上げしていきたいと思っています。2017年には、ユニバーシードのハーフマラソン競技に日本代表として出場し、金・銀を独占することができました。そういう意味でも、我々のチームから常に世界で戦える選手を輩出させたいという目標も掲げ、チーム一丸となって邁進していきたいと思っています。

駒澤大学陸上競技部 藤田 敦史 ヘッドコーチ 駒澤大学陸上競技部 藤田 敦史 ヘッドコーチ

駒澤大学陸上競技部 藤田 敦史 ヘッドコーチ駒澤大学陸上競技部 藤田 敦史 ヘッドコーチ

1976年福島県生まれ。青陵情報高校―駒澤大学経営学部卒業。駒澤大学時代は4年連続箱根駅伝出場。大学卒業後は富士通に入社。2000年12月の福岡国際マラソンで3度目のマラソンで念願の初優勝(2時間06分51秒:当時の日本男子最高記録)。2013年、現役引退。その後、富士通陸上競技部コーチを経て、2015年4月より駒澤大学陸上競技のヘッドコーチに就任。

駒澤大学陸上競技部 大八木弘明監督&藤田敦史ヘッドコーチに聞く! 指導理念とコンディショニングの重要性駒澤大学陸上競技部 大八木弘明監督&藤田敦史ヘッドコーチに聞く! 指導理念とコンディショニングの重要性

取材協力/株式会社明治
聞き手/本誌広報スタッフ
写真/水上俊介

2018年箱根駅伝ではまさかの12位に沈んでしまった古豪・駒澤大学。9年ぶりの予選会は、悔しさをバネに地道な努力を積み重ねた結果、駒澤大学は他校を寄せ付けない圧倒的な強さで本戦へと駒を進めることになる。そして2019年本線で復活の兆しを見せての4位。4年間をかけ選手の成長を育成する、大八木弘明監督と藤田敦史ヘッドコーチに、指導理念やコンディショニングなどについてお聞きした。

監督の一挙手一投足に学ぶ日々

藤田コーチが富士通陸上競技部から駒澤大学陸上競技部コーチに転身されたのは2015年4月。今年で5年目となりますが、まず、コーチとなった経緯から教えていただけますか?

藤田私は、36歳まで現役選手として活動し、引退後は所属していた富士通陸上競技部にてコーチに着任しました。それが2013年。その後、大八木監督から「母校の面倒もみてくれないか」という打診があり、実は兼任という形で週に何回かは大学のほうに足を運んでいたのです。ところが、2015年に前任のコーチが地元の秋田に帰ることになり、コーチ不在となってしまう、と。そこで「専任としてこっちに戻ってきてくれないか」という話になり、現在に至るというわけです。

もともと指導者を志していらっしゃったのですか?

藤田私は高校時代まで、特に実績があったわけではありません。大学入学後、大八木監督に指導を受けるようになってから強くなることができたという経緯があります。実績もなく誇れるものが何一つなかった頃の自分と、トップアスリートとして自分自身を律しながら競技生活を送ってきた自分。全く対照的な2人の自分自身を知っているという意味では、指導者としては大きな強みになるのではないか。あるいは、現役時代の私はケガに悩まされ続けたのですが、ケガから復帰する際のアプローチであったり、ケガ予防のためのトレーニングや生活習慣などの面で学んできたところがたくさんあったので、そういう意味でも、ゆくゆくは指導者となって、そういった経験を生かしながら指導してみたいという思いはもっていました。

大八木監督の下でヘッドコーチを務められて4年、指導におけるやりがいと同時に難しさといったものも感じていらっしゃるのではないでしょうか?

藤田選手と指導者という関係から、同じ指導者という関係に変わったことで、やはり目に見える景色も違いますね。監督というのは、陸上競技部という大きな組織を預かりながら、同時に年間の試合予定を踏まえつつ練習計画を練り、組織全体の舵取りをするという役割を担っています。一方、コーチというのは、監督が舵を切った方向にスムーズにいくよう、側面や後方から支える役割を担っているといえるでしょう。また監督は、1日の中でも決断しなければならない場面というのも非常に多い。「木を見て森を見ず」であっても「森を見て木を見ず」であってもいけません。例えば、今日は30㎞の練習を実施するという場合、屋外で行う競技なので、雨が降って気温が低い、あるいは逆にカンカン照りで気温が高いなど、状況によってどういったペースで取り組ませるのか、それも決断です。しかも、状況に応じて、瞬間瞬間で決断しなければならない。その一つ一つの決断の積み重ねが最終的に試合につながっていくので、その日の決断を間違えてしまうと、日々の練習が一本の線としてつながっていかず、試合本番で結果が出ないという事態に陥ってしまいます。

指導者は一瞬一瞬も疎かにしてはならないということですね。まさに、覚悟をもって取り組む必要がある、と。

藤田決断をするためには、指導者としての経験や感性、あるいは情報収集やデータ分析など、様々な能力が求められます。果たして、監督はこういう場合にはどういう決断をするのだろうか、と。その時々の決断をよく見て学ぶよう心がけています。

ご自身の判断と一致されていますか?

藤田自分でいうのはなかなか憚られますが(笑)、次第に監督の考えていることと近くなってきているのではないかと思います。ただ、やはりその時々で、「なるほど、これは思いつかなかった…」という反省することもたびたびです。そういう意味では、何年経っても勉強だなと思いますね。身近に目標とする偉大な指導者がいるというのは、自らを高めていく過程においてとても恵まれた環境だな、と。だからこそ、その目標に追いつけるよう自分自身も日々の努力を怠ってはならないと肝に銘じています。

魅力ある人間形成を目指す

どういった選手を育てていきたいと思っていらっしゃいますか?

藤田競技力向上はもちろんですが、一人の人間として、自分の考え方をきちんともった魅力ある人間を育てていきたいと思っています。いわゆる、ただ強い、ただ速い、だからそれでいいという話ではなく、その強さや速さの裏側にある人間性をもしっかり磨いていこうと努力できるような選手を育てていきたいですね。

大八木監督の下、まだまだ勉強中という藤田コーチ。指導者として今後の活躍がますます楽しみだ

それは、藤田コーチご自身が現役時代を通して大八木監督から学んだことでもある、と。

藤田はい。社会に出ていったときに、指示待ちの人間では自分で何も生み出すことができないし、周りもそういう人物には魅力を感じないものです。そういう意味でも、自分自身の力で道を切り拓いていけるような人間づくりを目指して取り組んでいます。したがって、そのためにも日々、選手たちに細かく目を配っていなければならない。見ていなければ、適切なアドバイスなんてできるわけありませんからね。

“大八木スタイル”は確実に継承されていると感じます。

藤田社会人と違って、学生というのは競技力は元より、人間的な面においても成長の速度がものすごく速いものです。極端な話、昨日いったことが今日にはもう変わっていたりなど、吸収がとても早い。でもそれは逆にいえば、よくないことも吸収しやすい危険性もあるというわけで、そうはならないようするためにも、指導者の役割は非常に重要だといえるのではないでしょうか。

コンディショニングづくりにおいて最も注意を払っている点はどういったことでしょうか?

藤田やはり一番大事なことは食事だと考えています。いつも部員たちにいっているのは、「どんなに腕がいい大工さんでも、いい材料がなければ立派な家を建てることはできない。それと同じで、いくら『今日はいい練習ができた』と満足しても、その後の食事を疎かにしていたら、みんなのカラダはいつまで経ってもでき上がってこないもの。カラダができていないということは、試合では当然結果は出ないし、ケガも多くなる」と。つまり、強くなるためには、“練習”と“食事”、そして“睡眠”とをセットで考えられる頭を持たなければならないんだ、と。

アスリートの基本ですね。

藤田高校駅伝の場合は最長が10㎞(男子)ですが、大学になると、箱根で走る距離に代表されるように20㎞が主となります。つまり倍です。ということは、大学生になると、極端な話、練習量も高校生の倍近くに増やさなければならないということになります。そうなったときに、ただ練習だけやればいいんだという感覚で臨んでいると、アッという間に故障して走れなくなってしまう。つまり、“練習”と“食事”と“睡眠”とをセットで考えなければ、土台を積み上げ、次の練習につなげていくことはできないというわけです。

強い駒澤の復活のために

カラダづくりのマネジメントはまず、食事から。「栄養フルコース型」の食事でカラダに必要な5大栄養素をバランスよく摂ってコンディションを整えていく

食事面で部員の方々に、特に注意を喚起している点はどういったことでしょうか?

藤田長距離選手は、当然のことながら、日々長時間走るトレーニングを求められるので、筋肉に対するダメージはもちろんですが、貧血に陥りやすいことも承知していなければなりません。いわゆるスポーツ貧血といわれるもので、激しい運動によって血中の赤血球の数またはヘモグロビン濃度が低下した状態をいいます。なかでも、赤血球を合成する鉄を中心とした材料不足によって起こる鉄欠乏性貧血は、長距離選手にとって大敵といっても過言ではありません。したがって、鉄分の摂取に関しては日頃から口うるさくいっています。と同時に、たんぱく質は筋肉を修復するための主たる役割を務めるほか、血液中の赤血球やヘモグロビンの材料となる大切な栄養素でもあるので、鉄とたんぱく質の摂取はセットで考えなければならないという指導をしています。

そういったスポーツ栄養学の知識はご自身で学ばれたのですか?

藤田現役時代、自分自身が貧血とケガで随分と苦しみましたからね。何とかしたいという気持ちからスポーツドクターに相談したり、それに関するいろんな本を読んだりしたものです。

その経験が指導者となって生きているというわけですね。

藤田食事の大切さというのを改めて痛感しているところです。もちろんそれだけで強くなるわけではないし、ケガを防げるわけではありません。しかし、食事を大切にしている部員というのは、自分が取り組んでいる競技に対してしっかりと意識が向いている証拠だと思います。

大八木監督もおっしゃっていましたが、体脂肪率よりもむしろ体重管理のほうに重きを置いていらっしゃるようですね。

藤田私が現役の頃というのは、自分のカラダを数値化することはほとんどしていませんでした。だから体脂肪率も測ったことはあまりありません。定期的に実施していたのは血液検査くらいでしょうか。実は私自身、数字はあまり好きではなかった(笑)。自分自身は大丈夫なのに、数値ではこうだからと、それに左右されるのが嫌だったからです。そういう意味では、自分自身の感覚というのを何よりも大事にしていました。でも、こうして明治さんのサポートを受けるようになって、栄養指導のほかにも、毎年同じ時期に体組成を測り、筋肉量や体脂肪率などで自分のカラダを数値化していただくようになると、やっぱり僕も現役時代にもう少しやっておけばよかったかな、と(笑)。そうすれば、自分自身を客観的に見ることができ、かつ1年前あるいは2年前、さらには3年前の自分と比較もできるので、成長の足跡に対して自信が湧いてくるのと同時に、もう少しケガの予防にもつながったのではないかと思います。

では、最後に今後の目標についてお聞かせください。

藤田たくましく、強い駒澤の復活を目標としています。そのためにも、選手たちにはやらされているのではなく、自分たちでやるんだという気持ちになれるような指導を、僕自身もより心がけたいと思っています。そういった意識改革ができれば、厳しいトレーニングが我慢ではなく手段に変わってきます。そして、それが主体的に継続できるところにまでつながってきたときこそ、“常勝駒澤”の完全復活ということになるのではないでしょうか。

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