こうしたお客様へのコミュニケーションを大切にする姿勢は現在いろんな形で展開している。その代表的なものが、グランドゴルフ大会。宅配のお客様を中心に年に2回行われるこのスポーツイベントは、地元の新聞でも取り上げられるほどの盛況ぶり。
これは、お客様と触れ合う機会を何か作れないだろうかと、いろいろと考えこのグランドゴルフが親睦と健康を目的としたものに相応しいと、自らルールを1から勉強しコートの区割りの仕方など運営面まで、まさに手探りで始められたという。
それが今や参加者が300名から400名にも及ぶ地元の一大イベントになっている。
こうしたイベントの素晴らしい点は、スポーツを行う機会や勝敗を競う楽しみを提供しているだけでないことだ。参加者は「ミルクで元気」など明治の宅配商品を毎日飲み続けている健康意識の高い方ばかり。ならば、このような健康意識の高い仲間とふれ合い自分の健康を実感できる場というのは、単なるスポーツを楽しむ以上のものを参加者は感じていることだろう。参加者はきっと来年の大会まで元気に過ごして、また頑張ろうという動機にもなるに違いない。だから毎年これだけの人数が集まるのだろう。
後社長も宅配の仕事を始めて20年以上となる。それまで奥様のお父さんがパートさんと行われていた事業も従業員が40名近くなり、売上や宅配軒数も格段に伸びてきた。
スタッフにも後社長が大切にしている人を思いやるコミュニケーションや、自発的に行動出来る人になろうという姿勢は、「明治宅配センター府中」の風土としてしっかり根付いてきている。
しかし、後社長は販売店のポリシーや風土は変わらないにしても変革は必要だという。
現在息子の彰男さんが次期経営者として業務に従事しておられ、社長の右腕として活躍されている。社長は「私らの時代のやり方はいつまでも通用しないでしょうね。これからは息子の世代の感覚を取り入れていかなければと思っています」という。
例えば新規開拓においてもエリアが限定されていることもあり、何度も訪問すれば営業に対する慣れが起きているのではと危惧する。
「今のお客さんの感覚に合う会話の仕方やタブレットを見せながらなど、これからはそんな工夫が必要でしょうね」
後社長はこれまで業績を上げてきた成功体験に依存するばかりではなく、これからの宅配店のあり方そのものにも目を向けているようだ。
インタビューを終え、ふと壁を見ると幼稚園からの手紙が飾られていた。
「あーこれね、うちは幼稚園にも牛乳を卸しているんですよ。そこのね、園児からの感謝状なんですよ」
後社長は、地区の役員を始めいろんな形で地元に貢献している関係で感謝状を頂く機会も度々あるようだが、この幼稚園からの感謝状だけを会議室に飾っていた。
確かに社長が言われるように、お客様の新しい感覚に対応していくことは今後どの宅配店にも共通した課題となってくることだろう。
しかし、幼稚園からの手紙に書かれていた「牛乳屋さんいつもありがとう」とたどたどしい文字で書かれていた園児の気持ちは、社長にとって宅配のお客様からの声を代弁しているものとして捉えておられるような気がした。「明治宅配センター府中」を後にしながら、社長の嬉しそうな顔で額の説明をしていただいた姿が印象に残る。時代が変わってもお客様の期待に応えていきたいという販売店の姿勢を強く感じる取材だった。
取材:営業コンサルタント/村山 哲治