2017/06/28 アスリート

日本スピードスケート史上最年少オリンピック出場の裏側と競技との出会い。

髙木美帆選手(スピードスケート)独占インタビュー・前編

平昌2018冬季オリンピックのプレシーズンである今季を好成績で終えた、スピードスケート・髙木美帆選手。来季に向け、いいイメージを持ってシーズンを締めくくった髙木選手に、さまざまな角度からお話を伺いました。構えることなくリラックスしながら語る様子は、自然体そのもの。「時差ボケがなかなか治らなくて」と時折あくびしては屈託なく笑うお茶目な一面も、魅力的でした。

PROFILE

髙木美帆 スピードスケート選手

1994年5月22日生まれ。北海道幕別町出身。500mから5000mまでこなすオールラウンドなスピードスケート選手。5歳でスピードスケートを開始。7歳で始めたサッカーでは、北海道選抜としてU-15合宿にも参加。中3の時バンクーバー2010冬季オリンピックに出場。15歳でのオリンピック出場は日本スピードスケート史上最年少。2016年12月のワールドカップ第3戦で、女子1000mで初優勝。同月の全日本選手権では全4種目制覇の完全優勝。2017年3月のワールドカップ最終戦では女子団体追い抜きでチームとして連覇を達成。平昌2018冬季オリンピックに大きく期待がかかる。

最初は「なんとなく」から始まったスケート人生

スケートを始めたきっかけは?

まず4歳上の兄が長野1998冬季オリンピックで金メダルを取った清水宏保さんを見て、スピードスケートを始めたんです。それに付き添ううち、どうせ一緒に行くなら…という感じで、姉と始めることになりました。当時5歳。自然な流れでそうなりましたが、決して「すごくやってみたかった」というわけではありませんでした。正直、寒いし辛いし転ぶと痛いし、と3拍子揃っていたので、楽しいと感じたことはなかったです。それが次第にその競技の魅力にハマっていくことになるんですが。

一緒に競技を続けているお姉さんは、
どんな存在ですか?

私はもともと人にライバル意識を持ったり、負けず嫌いな気持ちが強かったりするタイプではないので、姉に対しても競技者としての特別な感情はありません。チームメイトという意識もなく、甘える時には甘え、頼る時には頼る。ごく普通の「姉」という感覚です。ただ、技術面のことやスケート界についてのことなど、スケートに関する話はよくします。

個人種目と団体種目の両方を行う上で、気持ち的な違いはありますか?

試合での緊張の種類が違います。個人種目の場合は、自分のやるべきことをどう出し切れるか、という緊張感。団体種目ではまわりとの関わり方や配慮が大事なので、緊張というよりも集中の仕方や焦点の当てどころがちょっと違ってくるという感覚です。自分ひとりのことなら「今日はこういう調子だから、どれくらいでいけば本番どのような滑りができるか」という水準がわかりますが、他人のこととなるとすべてを把握するのは難しい。いろんなことを気にかける必要が出てくるので、フォーカスの仕方が変わってくるんです。

表彰台に上がるときの気持ちも、個人種目と団体種目とでは違うものですか?

現状ではパシュート(団体種目)のほうがメダルを取れる確率が高いんですが、だからこそ難しいと言われている個人種目で表彰台に上がるときは、格別のうれしさがあります。一方で、パシュートで勝つ場合は、ひとりではなく3人で成し得たという達成感がある。どちらがうれしいというより、うれしさの種類が違う感じですね。

仲間がいることのよさはどんなところですか?

今の日本のレベルでいうと正直、個人種目でトップに立つのは難しく、可能性が低いのが現状。でも、パシュートならチームがうまくまとまって力を発揮することができれば、金メダルも夢ではありません。これはやっぱり、仲間がいないとやり遂げられないことだと思います。
また練習においても、ひとりではなく複数でまとまってやるほうが効率のいい練習ができると思っています。そういう意味で、速い選手たちが集まっているナショナルチームで練習できるのは幸せ。吸収したり刺激を受けたりすることがとても多いです。

自分を高めることのみに集中できるから、
この競技に惹かれる

なんとなく始めたスピードスケート。
夢を持つようになったのは
いつ頃からですか?

「オリンピックに行きたい」というような漠然とした夢は描いたことがないんです。その代わり子どもの頃から、具体的な目標は常に持ってやってきました。「これぐらいのタイムを出したい!」という目標を立て、それを超えたら次の新しい目標を設定し、それをまた超えて…とひたすら繰り返すのみ。そうやって、目の前の一つひとつをクリアしてきました。今掲げている「オリンピックでメダルを取る」というのも、夢ではなくあくまでも目標です。

ズバリ、スピードスケートの魅力とは?

難しい質問(笑)! 一般的には「氷上のF-1」と称されているように、自分の馬力で出せるスピードとしては最速の競技。やっぱりスピード感は魅力の一つだと思います。
ただ「私にとって」ということで言うと、少し違ってきます。サッカーやヒップホップダンスも本格的にやっていましたし、中学の陸上部では中距離走もやっていましたが、レベルを上げていく中で「もっとこうしたらいいんじゃないか」というアイデアが一番湧いてきたのがスケートだったんです。だからほかのどれでもなく、スケートを辞めずにずっと続けているんだと思います。
また「敵に捉われず、自分を高めることのみに集中する競技」という点も、私に合っていたのかなと思います。多少は相手との駆け引きもありますが、基本的には“相手ではなく自分ありき”の競技。自分を高めれば高めるほど純粋に速く滑れるようになる。そんなふうにシンプルに感じられるのが、私がスケートに惹かれる理由だと思います。
日ごろの練習通りのものを、いかに本番で出せるかという意味でも自分との戦い。練習中も絶えず頭を働かせて、常にいろんなことを考えているのですが、そのことも自分がスケートに感じている面白さの一つです。
また私は500m~5000mまですべて滑るので、いろんな種目ができる楽しさもあります。その中から自分に合う種目を探すことができるのも、スピードスケートの魅力だと感じています。

バンクーバー2010冬季オリンピックでは
ホットチョコレートに夢中!

バンクーバー2010冬季オリンピック
出場時の健康管理は
どうされていましたか?

あの時はまだ中学生でしたが、まん丸だったな~って思いますね。一番太っていたのは高校生の時ですが、そのプレ期間的に中学生の頃も丸かったです。好きなものを好きなだけ食べて、食事制限も何もしていませんでした。
バンクーバー2010冬季オリンピックでは、選手村の食事をうまく活用できていなかったなと思います。当時はまだあまり海外での生活を経験したことがなかったので、日本の食事との違いに戸惑ってしまいました。うれしかったのは、ホットチョコレートが飲み放題だったこと(笑)。途中でコーチから「レースが終わるまでは禁止」とストップをかけられてしまいましたが。「甘いものは我慢しなければいけない」という思考がまだなかったんですよね。

チョコレートはお好きなんですか?
現在甘いものの制限は?

チョコレートは大好きです。昔は食に対する欲が強かったんですが、年齢的にそういう時期を過ぎたのか、または痩せて体質が変わったのか、だんだん食べ方にも変化が。体が必要以上に甘いものを欲しなくなってきたので、食べたいと思った時に少し食べれば満足できるようになりました。そもそもスピードスケートは、体重管理に関してさほどシビアではない競技。自分自身今では食事の量が多くないので、栄養管理には気を遣っていますが体重管理はしないで済んでいます。だからチョコレートに関しても特に制限をかけていません。食べたくなったらガマンせず、少量だけ食べて満たされています。

後編では現在の栄養管理に関する秘話や、挫折のとらえ方、
平昌2018冬季オリンピックへの想いを語っていただきます。お楽しみに!

後編はコチラ

日本スピードスケート史上最年少オリンピック出場の裏側と競技との出会い。

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