ミルクプロテインのチカラ!

フードバレーとかちとの取組み

ミルクプロテインによる体力向上の可能性

ミルクプロテインの継続摂取が運動部所属生徒の
筋肉・体力に与える影響を検証する取組みについて

「ミルクプロテイン」とは、牛乳に含まれるたんぱく質のことです。ミルクプロテインは、必須アミノ酸をバランスよく含有し、なかでも筋肉合成に有効なBCAA(分岐鎖アミノ酸)※がとくに豊富であることから、良質なたんぱく質のひとつといえます。そこで、成長期の運動部所属生徒が継続的にミルクプロテインを摂取することで、筋肉や体力にどのような変化が起きるかを検証しました。この取組みに協力したのは、私立白樺学園高等学校(北海道河西郡芽室町)の運動部に所属する生徒115名です。

白樺学園高等学校はスポーツが盛んで、野球部、陸上部、アイスホッケー部やスピードスケート部など、多くの部活動が道内だけでなく全国レベルで優秀な成績を収めています。
生徒は2グループに分かれ、一方はミルクプロテイン10gを含む「ミルクプロテイン強化乳飲料」、もう一方はミルクプロテインを含まず、ほぼ等エネルギーの「糖質飲料」を1日2本、3ヶ月間にわたって摂取。摂取期間前後に、身体計測や体力測定などを行いました。また、疲労感に関するアンケート調査も実施しました。

※必須アミノ酸のイソロイシン、ロイシン、バリンの総称

株式会社 明治 食機能科学研究所
スポーツニュートリション研究部 グループ長 
三本木 千秋

【対象者】
白樺学園高等学校の運動部所属生徒115名
部活動:スピードスケート部・アイスホッケー部・バスケットボール部・サッカー部・柔道部・陸上部
【スケジュール】
  1. 1.食事調査 
  2. 2.グループ分け:たんぱく質摂取量が均等になるよう、2グループに割付。
    そのほか、学年・性別・部活動・体重も均等になるよう調整した。
  3. 3.摂取前測定会:2016年6月上旬
  4. 4.摂取期間:各グループがそれぞれ指定の飲料を12週間、1日2本摂取。
  5. 5.食事調査
  6. 6.摂取後測定会:2016年9月上旬
摂取した飲料(1日2本摂取)

※エネルギーはほぼ同等ですが、ミルクプロテイン飲料にはたんぱく質10gが含まれ、
糖質飲料にはたんぱく質は含まれません。

【測定項目】
  1. 1.身長測定
  2. 2.体組成測定:体重・除脂肪体重(※)・体脂肪量を測定
  3. 3.筋厚測定:筋エコーにより、太ももの筋肉の厚さを測定
  4. 4.体力測定
【調査項目】
  • ●食事調査
  • ●疲労感に関するアンケート調査:VAS(Visual Analog Scale)により、疲れの度合いを自己評価し、数値化する。

※ 除脂肪体重:体重から体脂肪の重量を除いた重量。筋肉量の大小を間接的に知る指標として用いられる。

体力測定の結果、「握力」と「立ち幅跳び」で成績向上

飲料を12週間摂取した後の体力測定において、上肢筋力を反映する「握力」と、下肢筋力を反映する「立ち幅跳び」で、ミルクプロテイン強化乳飲料摂取群は摂取前に比べて成績が伸びました。また、糖質飲料摂取群と比較して、有意に高い数値になりました。

「握力」「立ち幅跳びの跳躍距離」は、ミルクプロテイングループで摂取前に比べて有意に増加した。ミルクプロテイングループにおける摂取後の結果はいずれも糖質グループと比較して有意に高かった。

アンケートでは「脚の疲労感」が軽減

「脚の疲労感」について、ミルクプロテイン強化乳飲料摂取グループでのみ、摂取前後を比較して、脚の疲労感が有意に軽減されました。

期間中の食事調査では、ミルクプロテイン
グループで「たんぱく質摂取量」が有意に増加

飲料摂取前と摂取期間中の2回、3日間の食事調査を実施しました。ミルクプロテイン強化乳飲料群では上乗せしたミルクプロテイン摂取により、期間中のたんぱく質の摂取量が増加しました。

これらの結果から、ミルクプロテインの継続摂取は、運動部所属生徒の体力向上に貢献する可能性が見出されました

陸上部顧問からもコメントをいただきました
部活のメニューは変えずに体力や成績が向上したのがうれしい

「ミルクプロテインプロジェクト」の取り組みのひとつとして、生徒たちが長期間にわたってミルクプロテインを摂取できたことは、栄養素、とりわけたんぱく質摂取の重要性を経験させられる貴重な機会となりました。
今回の取組みで、握力と立ち幅跳びの成績が向上したことは、陸上競技指導者として、大きな意味があるととらえています。
立ち幅跳びの能力に関しては、トレーニングを重ねても一定以上に伸ばすのはかなり難しいものです。しかし、立ち幅跳びに必要な脚力や瞬発力が向上すれば、陸上競技はもちろん、スピードスケートやサッカー、バスケットボールなど多くの競技への好影響が期待できます。こうした意味でも、ミルクプロテインの摂取は、運動部所属の生徒のパフォーマンスによい結果をもたらしたと言えるのではないでしょうか。

白樺学園高等学校
保健体育科 教諭 陸上部 顧問

小西 康道 先生

専門家からもコメントをいただきました
貴重で興味深いミルクプロテイン摂取の検証結果

日本の高校生が100名以上参加した今回の大規模な取組みは、大変貴重な事例だと思われます。
なぜなら、たんぱく質摂取と筋肉の関係については、欧米人を対象とした研究や報告が中心となっており、日本人を対象とした事例、とくに成長期の高校生を対象とした事例はまだまだ多くないのが現状だからです。
今回の取組みでは、上肢筋力の指標の一つである「握力」と、下肢筋力の指標の一つである「立ち幅跳び」が、ミルクプロテイン強化乳飲料摂取群では糖質飲料摂取群に比べて、介入後の数値が有意に高い値となりました。過去に世界中で行われたたんぱく質摂取と筋肉に関する研究のうち、質の高い22の研究報告を集め、統計解析(メタアナリシス)した論文(※)でも、「トレーニング時にたんぱく質を摂取すると、より筋力が高まる」ことが明らかになっています。つまり今回の成果は、この解析結果と大きく矛盾しない結果だと思われます。このことからも、ミルクプロテインの摂取が筋力向上に貢献する可能性が示されたと考えてよいでしょう。
ただし、今回の結果だけをもって、ミルクプロテインが筋力アップのために有効だと結論づけるのは早計だと思われます。今回の研究を足掛かりとして、今後、栄養摂取状況やトレーニング量がコントロールされた試験など、複数の研究が重ねられ、ミルクプロテインの有用性や科学的根拠がさらに明らかになることに期待しています。

※ Cermak NM et al. Am J Clin Nutr 2012;96;1454-1464

東京大学
大学院総合文化研究科 広域科学専攻
生命環境科学系

寺田 新 准教授

ミルクプロテインの摂取は生徒の栄養状態改善に効果を発揮

今回の取組みでは、飲料摂取前の生徒の食事調査結果からたんぱく質の平均摂取量は目安となる体重1kgあたり2gには達していませんでした。体重1kgあたり1gにも達していない生徒もいました。ミルクプロテイン強化乳飲料を取り入れ、平均で一日約20gのたんぱく質を増やす事ができたことは、価値があると考えます。

栄養に対する意識が変わったことも今回の取組みの大きな収穫

今回の取組みでは、「ミルクプロテイン強化乳飲料」という条件が加わっただけで、食事や運動量は通常通りでしたが、握力や立ち幅跳びの成績が向上しました。生徒自身も、「食事と体力・運動能力には関連がある」と認識したと思います。
ミルクプロテインを摂り続けた期間で、生徒の食事に対する意識が高くなったのは意義深いことです。

立命館大学
スポーツ健康科学部 副学部長

海老 久美子 教授