第1回『牛乳・乳製品の栄養素って、すごい!』

牛乳・乳製品のたんぱく質、脂質、炭水化物

牛乳のたんぱく質は“良質” その理由は必須アミノ酸に

たんぱく質は、私たちの体(骨、筋肉、内臓、血液、皮ふなど)や、酵素、ホルモン、免疫抗体などをつくる重要な栄養素です。

たんぱく質は、20種類のアミノ酸から構成されています。そのうちの9種類は体内で合成できず、食品から摂取する必要がある「必須アミノ酸」です。

一般的に、9種類の必須アミノ酸の必要量(アミノ酸価)をすべて満たしているものが、“良質のたんぱく質”とされます。牛乳は卵と並んで、その代表となる優れた食品で、必須アミノ酸の含有バランスがとても良いのです。

牛乳のたんぱく質の成分のうち、一番多く含まれているのがカゼイン(80%)です。カゼインには、健康に役立つさまざまな機能(小腸でのカルシウムの吸収を助ける、神経の興奮を鎮める、免疫力を高めて病原菌の増殖を抑えるなど)があることが知られています。次に多く含まれるのはホエイプロテイン(20%)です。ホエイプロテインは、体内への吸収が速く、トレーニング後に摂取すると筋肉合成を高める作用があり、運動後のたんぱく質補給に適しています。また免疫力を高めたり、骨を丈夫にする働きがあるラクトフェリンというたんぱく質も含まれており注目されています。

腸を元気にする牛乳の炭水化物の多彩な働き

牛乳の炭水化物の99.8%は乳糖という糖質です。乳糖は、乳糖分解酵素(ラクターゼ)によってグルコース(ぶどう糖)とガラクトースに分解され、グルコースは血液中にとりこまれて体の隅々まで運ばれ、エネルギー源として利用されます。一方のガラクトースは、乳児期の脳の発達に重要な働きをすると考えられています。

乳糖のもう1つの重要な働きは、腸内環境を整えること。善玉菌の栄養となり、それらが作り出す乳酸や酢酸が悪玉菌の繁殖を抑えることで、体全体の免疫力も高まります。さらに乳糖には、カルシウムやマグネシウムの吸収を助ける働きもあります。日本人の成人の70%以上は乳糖分解酵素の働きが弱く、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしたり、下痢をする人がいます。これは、乳糖不耐症の症状ですが、牛乳を毎日飲み続けていると、腸内細菌の乳糖分解酵素の働きが活性化してきます。また、ヨーグルトなら乳糖がすでに20〜40%分解されているので、不快症状が出にくくなります。

牛乳は脂肪分が多く太りそう?

脂質(脂肪)は、私たちが活動するときのエネルギー源となる栄養素で、ホルモンや細胞膜の材料ともなり、肌の潤いを保つ働きもあります。エネルギーが余った時には皮下脂肪や内臓脂肪として体内に蓄えられるので、慢性的に脂肪分の多い食品をとり過ぎると肥満につながります。

牛乳の場合、200mlのカロリーは約138kcal。そのうち、乳脂肪は70kcal程度にすぎません。その人の体重にもよりますが、勉強や読書を1時間ほどすると消費されてしまう程度のカロリーなので、牛乳が肥満につながることはありません。

また、牛乳一杯(200ml)のコレステロールの量はわずか25mg程度。日本人が1日3回の食事から摂取するコレステロール(300〜500mg)の約5〜8%です。牛乳を毎日400〜600ml飲み続けても、コレステロール値の上昇はみられません。

乳脂肪は、牛乳の製造過程で微細な脂肪球に分散され、消化吸収が良いのも特長です。また乳脂肪中には、脂溶性ビタミンのA、D、E、Kなどが含まれています。そのため牛乳は、幼児はもちろん、脂質が不足しがちな高齢者などにも、効率よくエネルギーやビタミン類を補給するのに適しています。