監修・アドバイス

  • 独立行政法人国立病院機構 相模原病院臨床研究センター長 海老澤 元宏先生
  • 十文字学園女子大学 人間生活学部 健康栄養学科 准教授 林 典子先生 (元国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)

除去する食物があっても、栄養はしっかりと

乳幼児期から10代にかけては心身の大きな成長期です。たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン・ミネラルなどをバランスよくしっかり摂ることが大切です。食物アレルギーで除去が必要な食品の栄養素を代替できる食品を使って、食事を充実させましょう。

除去が必要な食品の栄養面で代替となる食品

鶏卵のみの除去が必要な場合
鶏卵に含まれる主な栄養素
たんぱく質
たんぱく質の供給源となる代替食品
肉、魚、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品
牛乳のみの除去が必要な場合
牛乳に含まれる主な栄養素
カルシウム、たんぱく質
カルシウムの供給源となる代替食品
大豆・大豆製品、小魚や魚、青菜、海藻、ごまなど
たんぱく質の供給源となる代替食品
肉、魚、卵、大豆・大豆製品
アレルギー用ミルク
小麦のみの除去が必要な場合
小麦に含まれる主な栄養素
炭水化物
炭水化物の供給源となる代替食品
ごはん、雑穀、米粉や雑穀製のパンやめん、いも

食事は、3つの種類の食材をいつもセットで

食事は、主食、主菜、副菜が常に揃うように心がけると、栄養のバランスが整いやすくなります。

3つの種類の食材

除去の必要な食品は除きます。

主食の食材(主食) ごはん、パン、めんなどの穀物、いも
主な栄養素
炭水化物
主な役割
体を動かすエネルギー源となる
おかずのメイン食材(主菜) 肉、魚、大豆・大豆製品、卵、牛乳・乳製品
主な栄養素
たんぱく質、カルシウムなど
主な役割
筋肉、臓器、骨などの成分となる
おかずのサブ食材(副菜) 野菜、海藻、果物
主な栄養素
ビタミン、ミネラル、食物繊維など
主な役割
体の機能を整える

*油脂や砂糖は主食と同様にエネルギー源となります。

鶏卵、牛乳、小麦を除去した献立の例

献立は、「主菜、副菜、主食」のセットを基本形にすると、3つの食材がほどよく整います。

たらの豆乳シチュー/ごはん/ほうれん草のごまあえ

牛乳によるアレルギーの場合は、
カルシウム不足に気をつけて

牛乳によるアレルギーで牛乳・乳製品を食べられない場合は、骨や歯を形成するカルシウムが不足しやすくなることに注意が必要です。カルシウムの不足が続くと骨の成長に影響が出ることもあります。牛乳・乳製品以外でカルシウムを多く含む食品を、日々の食事に努めて取り入れましょう。
牛乳によるアレルギーの赤ちゃんは、医師から指示されたアレルギー用ミルクを使うようにしましょう。アレルギー用ミルクも一般の粉ミルクと同様にカルシウムや鉄の補給に役立ち、離乳食や幼児食に使うこともできます。

大豆製品や魚介、青菜などでカルシウム補給を

カルシウムは、下に示すように大豆製品や魚介、青菜などにも多く含まれています。1日に摂りたいカルシウム推奨量は、1〜2歳児では男子450㎎、女子400㎎、3〜7歳児では男子600㎎、女子550㎎です。いろいろな食品を組み合わせて、推奨量に近づける工夫をしましょう。

*日本人の食事摂取基準2020年版による。

主な食品に含まれるカルシウム量(牛乳・乳製品以外)

日本食品標準成分表2020年版(八訂)による。

〈大豆製品〉
  • 木綿豆腐 木綿豆腐1/6丁(50g)47㎎
  • 生揚げ 生揚げ1/4丁(50g)120㎎
  • 納豆 納豆小1パック(30g)27㎎
  • おから おから(生)1/2カップ(50g)41㎎
  • きな粉 きな粉小さじ2(10g)19㎎
  • 調製豆乳 調製豆乳1/2カップ(100g)31㎎
〈魚介〉
  • しらす干し しらす干し大さじ1½(10g)28㎎
  • ちりめんじゃこ ちりめんじゃこ大さじ2(10g)52㎎
  • 素干し桜えび 素干し桜えび3g60㎎
  • ししゃも ししゃも1尾(15g)50㎎
  • さけ(からふとます) さけ(からふとます)水煮缶詰小1/2缶強(50g)55㎎
〈青菜・海藻など〉
  • 小松菜 小松菜3本(30g)51㎎
  • モロヘイヤ モロヘイヤ1/3袋弱(30g)78㎎
  • 水菜 水菜小1/2株(30g)63㎎
  • ひじき(ゆで) ひじき(ゆで)30g29㎎
  • とろろ昆布 とろろ昆布3g20㎎
  • いりごま いりごま小さじ1(3g)36㎎
〈ミルクアレルギー用ミルク〉
明治ミルフィーHP 850g明治ミルフィーHP スティックパック 14.5g x 6
「明治ミルフィーHP」

14.5%標準調乳液100mlあたり 54㎎

ビタミンDやビタミンKも骨作りに必要

丈夫な骨や歯の形成には、カルシウムのほかにビタミンDやビタミンKも大切です。

ビタミンD

カルシウムの吸収を高め、カルシウムが骨に沈着するのを助けて骨の形成を促します。乳幼児期に著しく不足すると骨の成長障害をおこすおそれもあります。ビタミンDは魚(さけ、さんま、いわし、かれい、かじきなど)に多いほか、乾燥きのこ(しいたけやきくらげ)にも含まれています。また、日光に当たると体内でもビタミンDが合成されるので、適度な日光浴も大事です。

ビタミンK

骨にカルシウムを取り込むのを助ける働きがあります。納豆や青菜に多く含まれています。

生後6か月以降は、もしっかり補給を

鉄は酸素を全身の細胞に届け、また、筋肉中に酸素を取り込む役割があり、成長期には特に大事なミネラルです。
新生児は母体から受けた鉄を体に蓄えていますが、蓄えられた鉄は生後6か月頃から減り始め、9か月頃にはなくなります。母乳は鉄の含有量が少ないため、生後6か月以降になっても母乳中心で離乳食が進まない赤ちゃんは、鉄が不足しやすくなります。離乳期には授乳回数を徐々に減らして離乳食を段階的に進めましょう。
鉄を多く含む食品は下に示すようにいろいろありますが、離乳食を始める生後5〜6か月頃は青菜や大豆製品を主にして、徐々に魚や肉を加えていき、生後9か月頃からは赤身の肉や魚なども取り入れるとよいでしょう*1。鶏卵によるアレルギーがなければ、鶏卵(特に卵黄)も鉄のよい供給源です。
粉ミルクやミルクアレルギー用ミルクは母乳より鉄含有量が多いので、場合によって母乳と並行して利用したり、離乳食に使うとよいでしょう。

*1: (参考)「授乳・離乳の支援ガイド/離乳編」厚生労働省

動物性食品と植物性食品を組み合わせて摂ろう

鉄は赤身の牛肉や魚、大豆製品、青菜などに多く含まれています。大豆製品や青菜などの植物性食品に含まれる鉄はビタミンCとともに摂ると吸収率が高まるので、ビタミンCが豊富な緑黄色野菜や果物も食事に組み入れると効果的です。
1日に摂りたい鉄の推奨量は、生後6〜11か月児では男子5.0㎎、女子4.5㎎、1〜2歳児では男女とも4.5㎎で、その後10代半ばまで年齢とともに増えていきます*2

*2: 日本人の食事摂取基準2020年版による。

主な食品に含まれる鉄量

日本食品標準成分表2020年版(八訂)による。

〈肉類〉
  • 牛ヒレ肉 牛ヒレ肉30g0.7㎎
  • 豚ヒレ肉 豚ヒレ肉30g0.3㎎
〈魚介〉
  • かつお かつお30g0.6㎎
  • きはだまぐろ きはだまぐろ30g0.6㎎
  • ツナ油漬けフレークホワイト ツナ油漬けフレーク
    ホワイト小1/2缶弱(30g)0.5㎎
  • かつお節 かつお節小1パック(3g)0.3㎎
〈豆・大豆製品〉
  • 木綿豆腐 木綿豆腐1/6丁(50g)0.8㎎
  • 生揚げ 生揚げ1/4丁(50g)1.3㎎
  • ゆで枝豆 ゆで枝豆12さや(正味20g)0.5㎎
  • 納豆 納豆小1パック(30g)1.0㎎
  • きな粉 きな粉小さじ2(10g)0.8㎎
  • 調製豆乳 調製豆乳1/2カップ(100g)1.2㎎
〈青菜・海藻など〉
  • 小松菜 小松菜3本(30g)0.8㎎
  • ほうれん草 ほうれん草大1株(30g)0.6㎎
  • 菜花(和種) 菜花(和種)30g0.9㎎
  • 青のり 青のり小さじ1/2(0.2g)0.2㎎
〈ミルクアレルギー用ミルク〉
明治ミルフィーHP 850g明治ミルフィーHP スティックパック 14.5g x 6
「明治ミルフィーHP」

14.5%標準調乳液100mlあたり 0.93mg