監修・アドバイス

  • 独立行政法人国立病院機構 相模原病院臨床研究センター長 海老澤 元宏先生
  • 十文字学園女子大学 人間生活学部 健康栄養学科 准教授 林 典子先生 (元国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)

食物アレルギーは、乳児期に発症することが多く、離乳食の開始や進行に戸惑うお母さんが多くみられます。そこで、赤ちゃんに食物アレルギーがある場合の離乳食の進め方の注意ポイントをお伝えします。
離乳食は赤ちゃんがいろいろな食べ物の味を知り、咀嚼の力をつけ、栄養として取り込むための大事な最初のステップです。自己判断で開始を遅らせたりすることのないようにしましょう。

ポイント

離乳食の開始時期は
5〜6カ月頃から

食物アレルギーがあっても離乳食の開始を遅らせる必要はありません。
通常通り生後5〜6カ月頃から始めます。ただし、皮膚に湿疹などの症状が出ている場合は、医師の指示のもとで治療して皮膚をきれいな状態にしてから離乳食を始めます。皮膚をきれいにしてから始めないと、食べた食物が影響して症状が出たかどうかの判断がつきにくくなります。

初めて食べるものは
少量から

初めての食べ物を与えるときは、赤ちゃんの体調がよいときに新鮮な食材をよく加熱して、最初は少量を与えて様子をみます。万が一、症状が出た場合にすぐ受診できるように、かかりつけ医の診療している曜日の日中に与えるとよいでしょう。

月齢に合った
ひと通りの食材を

医師から除去するよう指示された食材は避ける必要がありますが、それ以外のものは、「授乳・離乳の支援ガイド」(市区町村や病院が開催する母親学級などで指導される厚生労働省作成のガイド)に沿って、様子をみながら与えていきます。
米やさつまいも、大根、にんじん、かぼちゃなどは、食物アレルギーの原因にはなりにくいため、離乳食を始める頃に利用しやすい食材です。

ベビーフードも活用して

ベビーフードは、アレルギーの原因となる食物が含まれていないものであれば利用できます。食物アレルギーに配慮したベビーフードも市販されています。

医師に除去するよう指示された食物以外の食物を、
自己判断で「念のため」に除去をするのはやめましょう。

授乳中のお母さんの食事について

母乳中の食物が赤ちゃんのアレルギー症状(主に湿疹)と関連していることは、あまりありません。
しかし、湿疹がスキンケアやステロイド外用療法でどうしても改善しないときは、医師の指導のもとで食物除去試験と経母的な負荷試験(母乳を通しての負荷試験)を行って、母乳中のアレルゲンの関与がないかの確認を行うことがあります。
その結果、お母さんも原因食物の除去が必要となる場合もありますが、短期間で解除できることが多く、完全除去となるケースはほぼありません。
くわしくは、以下をご参照ください。

離乳食で鶏卵を与える時期について

アトピー性皮膚炎がある赤ちゃんで鶏卵のアレルギーがない場合、離乳期に鶏卵を与える時期が遅くなるほど、鶏卵アレルギーを発症するリスクが高くなる傾向があることが研究でわかってきました。そのため、日本小児アレルギー学会では、鶏卵アレルギーの発症を防ぐには、鶏卵は生後6か月頃からよく加熱したものを少しずつ与えたほうがよいと提言しています。ただし、医師の管理のもとで慎重に進めることが必要です。赤ちゃんにアトピー性皮膚炎がある場合は、乳児期のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーにくわしい医師のいる医療機関で診断を受け、鶏卵アレルギーの疑いがないことを確認し、皮膚の状態をよくしたうえで、医師の指導に従って鶏卵を与えるようにしてください。

※くわしくは、日本小児アレルギー学会の「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説をごらんください。