取引先とともに

須藤牧場1
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須藤牧場は、冬でも暖かい千葉県の南部、館山市にあります。初代が果樹園をしながら4頭の牛を育てたところからはじまり、現在ではご家族に加え、合計15名の方が牧場とカフェの経営に関わっています。明治の「良質乳生産牧場」の認定を取得し3年目となる須藤牧場ですが、その四代目須藤健太さんに、酪農に対するこだわりをお伺いしました。

「選ばれる牛乳」をつくりたい。そのために重ねた一歩一歩が、今につながる。

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須藤健太さん

須藤牧場の朝は、4時半にはじまります。5時には搾乳を開始し、7時半頃には一通りの作業が終わります。牛をつながず、牛舎内を自由に動くことが出来る「フリーストール牛舎」を採用した須藤牧場では、搾乳の時間になると、自分の意思で搾乳場所に次々とやって来ます。暑さに弱い牛たちのために天井を高くした牛舎には、山からの爽やかな風が通り抜けていきます。

須藤牧場に訪れてまず目を引くのは、そんな素敵な牛舎と、入口すぐにあるカフェです。牧場でとれた新鮮な牛乳を加工し、カフェで出しているそう。「『選ばれる牛乳』であるために、お客さまの反応を直接見たいという思いもあって、私の姉がカフェの経営をはじめました。今、当牧場で育てている牛たちの1割をジャージー牛にしているのも、そのためです。ジャージー牛はホルスタインと比べると乳量は半分程度しかでないのですが、その生乳は脂肪率が高く、コクがあります。ですので、アイスクリームやプリンにする時、おいしいと感じるバランスをつくることができるんです」と須藤さんは説明してくれました。

この「選ばれる牛乳」としての須藤牧場のこだわりは、育てる牛の種類だけではありません。「おいしい牛乳を牛たちにつくってもらうために、できる限りストレスのない環境にしていきたいと思っています。20数年前からフリーストール牛舎にし、エサも牛たちが好きな時に食べられるようにしました」。
またエサについてのコツも伺いました。「エサには、コーン等の2種類の配合飼料とおから、飼料を発酵させたサイレージ、干し草を混ぜていますが、この時に干し草の長さが7~9センチになるよう、30分ほど混ぜながらカットしています。些細なことのように思われるかもしれませんが、実はこの『7~9センチ』という長さが重要なんです。それより短いと、よだれの量が少なく胃のpHが崩れて下痢してしまいますし、それより長いと食べにくく牛たちのストレスになってしまいます。また、おからも乳質が良くなって、すごくよいですね」と笑顔で話す須藤さん。

牛舎ジャージー牛 干し草

千葉県の南にある館山市は、南からの暖かい黒潮によって温暖な気候に恵まれ、冬でも花の咲く「海と花のまち」です。この穏やかな気候を利用して、須藤牧場でも牛用のコーンや草を育て、乳酸菌等を加えて発酵させた飼料「サイレージ」を、自分たちの手で作っています。「サイレージの品評会でも最優秀賞を頂いたことがあります。審査員の方は見た目や香りだけでなく味覚も確かめ、実際に口にふくむこともあるそうです」と須藤さんが言う通り、サイレージを貯蔵する倉庫は酸味がありつつもほんのりと甘い、良い匂いが立ち込めていました。サイレージに鼻を近づけると驚くほどフルーティーな、まるでお菓子のような香り。「適度にしっとりしていて、ぐっと握ってもホロリと崩れる…これが良いサイレージです。輸入したエサだと、食べたり食べなかったりと品質のムラがどうしても出てしまいますが、自分たちで作ったエサならその点安心してあげることができます。」と須藤さんは続けます。

また須藤牧場では、酪農体験の受け入れもしています。約20年前からはじめたこの活動ですが、年間で最大96団体も受け入れているのだとか。「具体的な様子をお伝えしますと、例えば都内の小学校から60人ほど来られて、朝9時から夕方15時まで実際の酪農体験をしてもらっています。中央酪農会議さんによる『酪農教育ファーム活動』という、酪農を通して食と仕事、命について学ぶ取り組みも、全国的に知られるようになってきました。体験の後にみんなでソフトクリームを食べると、非常に喜んでもらえますし、『つくる』と『食べる』をきちんとつなげて見せることができたと感じます」と嬉しそうに須藤さんは言います。伝えることも、また「選ばれる牛乳」であるための一歩。こうした一歩一歩を大切に歩んだからこそ、今の須藤牧場の広がりがあるのだと知ることができました。

明治の関わり

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東日本酪農事務所 関東酪農課
係長 松倉亘

須藤牧場の四代目、健太さんは現在20代前半。フレッシュな感覚で、牛舎の環境美化に対しても、もともと高い関心を持っていました。その健太さんに明治の担当者が出会ったのは、2014年頃。「当時、明治さんが非常に熱心に美化活動の重要性をお話されていたのを、今でも覚えています。大人でもこんなに熱い想いが持っていて、その想いをぶつけてきてくれるんだ、と感動しました。そして、当牧場でも絶対に美化活動をやろうとその時決心しました」と、須藤さんは当時を振り返ります。

現在、明治の関東酪農課には、松倉を含め5名が勤務しています。松倉は関東生乳販売農業協同組合連合会との交渉などの他、酪農家や農業協同組合への訪問も積極的に行っています。「明治の『良質乳生産牧場認定』を一緒に進めてくださる千葉県みるく農業協同組合さんや千葉県三和酪農農業協同組合さんと、美化活動の取り組みを進めています」と言う松倉。そんな彼は、以前は飼料の販売や営業として牛乳販売店巡りなどもしていた異色の経歴を持っています。「消費者に近い、売る側の立場を経験したからこそ伝えられることもあると思います」と松倉は言います。

穏やかな気候の千葉県では、夏場は牛のエサとなるコーンや草を育てる酪農家も多く、特に忙しくなります。そのため松倉は、寒くなり作業が落ち着いた秋や冬に、訪問を集中させるように心がけています。また、活動を進める上で明治が主体になり過ぎない、ということも気をつけている点。「環境美化などの状態維持を考えると、私たちが手伝いをし過ぎてしまうことで、かえって良くない結果になることもあります。私たちがやりきるのではなく、話しを聞いて、話をして、その上で想いを汲んでいただく、ということが、活動を進めるためにも、信頼を築くためにも重要だと思っています」と松倉は言います。言葉を重ねて互いの考えを理解しあうこと。地道なことですが、だからこそ信頼が生まれるのだと、丁寧に、誠実に話す松倉からその姿勢を感じました。

選ばれる牧場でありたい。また、地域全体で酪農の価値を高めていきたい。

酪農家集合

左から千葉県みるく農業協同組合 三橋裕二さん
須藤牧場 須藤健太さん
東日本酪農事務所関東酪農課 係長 松倉亘

最後に、牧場の今後について、須藤さんにお話を聞きました。 「やりたいと思っていること、また学んでいきたいと思っていることは沢山あります。まず、これまで父が担当する仕事は父だけの専門となっていましたが、内容を整理・見える化し、他の誰でもが担えるよう整備を進めていきたいと思っています。既に取り組みは進めていますが、より専門的なサイレージづくりについても、今後は引き継いでいく予定です。他にも、スマートフォンのアプリを使ったデータ管理もはじめました。様々なデータを残すことができ、また従業員同士がクラウド上で共有できるので、とても便利です」と語る須藤さん。スムーズな世代交代を意識した、様々な取り組みをはじめていました。

また、こうも続けます。 「須藤牧場の牛乳を選ばれるものにしたいですし、ひいては地域の牛乳のブランドをより良く、またもっと伝えていきたいです。そして、酪農という仕事に対し、皆がもっと誇りを持てるようにしていきたいと思っています」。この想いで現在進めているのが、イオンモールへの出店です。「カフェにも賞状を飾っていますが、今度出店するイオンモールにも、明治さんから良質乳生産牧場認定をもらっている牧場だということを伝える看板を実は作りたいと思っています。一般的な場に出店することで、酪農に関心のない方や地域の方といった酪農とこれまで接点のなかった方々にも、須藤牧場の牛乳のおいしさ、ひいては酪農自体の価値を伝えていきたいと思います」と輝くまなざしで須藤さんは夢を語ります。

須藤さんに対し、千葉県みるく農業協同組合南部支所の三橋会長も期待を寄せます。「須藤牧場は、この地域の中でも5本の指に入る、優秀な牧場です。私は今43歳ですが、健太君が来るまでは、それこそ一番下の世代でした。そういった状況の中で、このように積極的に取り組んでいる健太君が、今後は地域を引っ張っていくリーダー的な存在になっていってくれれば、と願っています」。

千葉県みるく農業協同組合や三橋会長も所属する酪農研究会の力強い支援もあり、千葉県で明治が活動をはじめた2014年は5戸ほどしか参加のなかった「良質乳生産牧場認定」も、参加者が毎年増え、2016年は13戸の牧場が認定取得に向けて取り組んでいます。「牛たちも、汚いところで暮らしていれば、それこそ食欲もなくなってしまいますよね。ですので、美化活動は結果的に乳質も良くしてくれるものだと思っています。そこで、生産者の皆さんが衛生面についても考え、『自分たちは食べるものをつくっているのだ』という意識を持っていただくために、私たちメーカーにできることは何なのだろうか、といつも考えています。その一つが、当社に寄せられた消費者の声を、生産者の方々に届けることなのだと思います」と語る松倉。

地域の酪農をより良くしていきたい。同じ想いを持った三者の取り組みは、これからも続いていきます。

今回の取材で見えた「酪農あれこれ」

・フリーストール牛舎は、牛が自由に動きまわることができる
・カットした干し草の長さは、7~9センチが牛に優しい
・良いサイレージ(発酵飼料)は、しっとりホロり、
 酸っぱさの中に甘みのある香り